*****初心者のためのシリコン単結晶清浄表面作製技術*****

 本稿は[分子科学研究所 技術課活動報告 Kanae 4、7-12 (1995).]に掲載した記事を若干書き直したものです。図はpdf版をご覧ください。まだ更新していない点がありますので、詳しく知りたい方は間瀬までお問い合わせください。

1.はじめに

 通電加熱方式によるシリコン単結晶清浄表面作製技術を紹介します。読者としては、やる気と時間は十分あるけれども、経験と研究費は乏しい若手研究者を対象としています。また、ここに述べるシリコン清浄表面とは超高真空(〜1×10^-10^Torr)中で作製する不純物濃度1%以下程度の表面です。微量の不純物は影響しない研究なら十分通用します。より詳しくシリコン清浄表面作製技術を学びたい方は文献[1−3]を参照ください。また、超高真空技術そのものに関心のある方は文献[3−6]をお読みください。通電加熱方式によるシリコン単結晶清浄法そのものをさらに詳しく学びたい方は論文[7]をお読みください。超高真空関連業者の連絡先を知りたいときは真空関連学会誌(放射光、応用物理、真空、日本物理学会誌など)の広告ページや文献[8]が便利です。

2.材料

A.シリコン単結晶

 シリコン単結晶ウエハーはニラコ(1枚6400円)などで入手できます。抵抗値が高すぎると通電加熱が難しくなるので、数Ω/cm以下の比抵抗値を持つものを選びます。入手したウエハーは専用のトレー(アズワンカタログ70000、p1515、ウェハートレーSCC)に保管しておきます。

B.金属材料

 通電加熱では、試料温度が高温(約1200℃)になります。高温でのシリコンは非常に反応性が高いので、試料ホルダー材料としてSUS304、銅、アルミは使えません<注1>。特に微量のニッケルシリサイドが悪影響を及ぼすような実験をする場合には、試料ホルダー部品をステンレス製工具で扱うことも避けた方が無難です。そこで、タンタルおよび、モリブデンなどの高融点金属を使います。タンタルは高価ですが、高温での放出ガス量が少ない、柔らかい、加工しやすい、スポット熔接しやすいなどの点で通電加熱用電極材料として適しています。モリブデンは、脆くて加工しにくいですが、硬く安価なのでボルトなどに適しています。タンタル、モリブデンはともに高融点加工専門業者から購入するようにします<注2>(例えば、日本バックスメタル、TEL:03-3756-1171、代理店:アイリン真空、TEL:052-401-2061、タンタル板50×50×0.5で約3千円)。高融点金属の特性に関する文献としては、日本バックスメタルやニラコのカタログが便利です。

C.絶縁材料

通電加熱では絶縁部も高温(約800℃)になるので絶縁部品としては高純度アルミナなどのセラミックを使います<注3>。代表的なメーカーと代理店、取扱品のリストを以下に示します。

1)信光社、TEL:045-894-4215、合成サファイア板、TiO2板など。
2)アース製薬無機材事業部、TEL078-222-4592、合成サファイア板、TiO2板など。
3)モリテックス、TEL:03-3476-1450、サファイア球など。超高真空内ベアリング材料として有用。
4)ニッカトー、代理店:オザワ科学、TEL:0565-27-2341、アルミナ管など。
5)Frialit Degussit社、代理店:パスカル、TEL:06-765-1321、アルミナ管など。
6)友玉園セラミックス、代理店:アイリン真空、真空内絶縁部品各種。

取扱品の規格の詳細や定価については各社のカタログを参照ください。

D.配線材料

 通電加熱では15A近い電流を流すので、配線材料としては1.25mm2以上の無酸銅線を用います。AC100V用ビニール平行線(ストックルームにあります)の被覆をはがし、洗浄したものでも十分使えます。無酸素銅はスポット熔接できないので、コネクターかネジを用いて配線します。φ2の無酸素銅棒を加工して、φ2×φ1.4×7の無酸素銅管を製作すると、最も単純な真空内圧着端子になります。参考までに真空内配線部品のメーカーのリストを以下に示します。また、文献[5]のp1261−1263も参照ください。

1)ISI社、代理店:リッチモアインターナショナル、TEL:03-3440-0027、真空内配線部品各種。
2)日本バックスメタル、代理店:アイリン真空、真空内配線部品各種。

3.加工、組立

A.はじめに

 本稿で述べるレベルのシリコン清浄表面製作法ではクリーンルームは必要ありません。しかし、実験室はこまめに清掃する、作業前に手を洗う、機械油や埃で汚れた部品や装置は実験室に持ち込まない、ロータリーポンプの排気口はダクトに接続する、ポンプ油の缶などの汚れものはチャック付きポリ袋(井内カタログp857)に入れて保管する、などの習慣は身につけた方が良いでしょう。実験室をほかの研究者と共有しているなどの理由で、清浄な環境を用意できない場合は、部品を洗浄したらすぐにチャック付きポリ袋に保管する、シリコン単結晶は洗浄後ただちに超高真空槽内に組み込むなどの注意が必要になります。

B.工具

 シリコン単結晶および洗浄後の部品はプラスチックあるいはセラミック製の専用工具で扱います。そうすれば工具や手袋が誤って試料表面に触れても、表面を汚染しません。また、作業の際は新しい使い捨て手袋を使い、終わったら捨てることにします。工具と保管箱の内側はエタノールでよく洗っておきます。必要工具の1例を以下に示します。使い捨て手袋(100枚)、ダイヤペン(1本)、アクリル製定規(4本)、テフロンシート(1枚)、シリコン保管箱(50箱)、プラスチックピンセット(1本)、セラミック製ドライバー(1本)、セラミック製はさみ(1丁)、専用工具箱(1箱)(井内カタログp1217,840,628,1278,952,978,631,877参照、合計約1万円)。

C.シリコン単結晶準備

 シリコンウェハーは劈開により5mm×20mmの長方形に加工します。長辺を<100>あるいは<111>方向にとるとあとで方位の確認が容易です。劈開の手順は以下の通りです。

(1)テフロンシート上にシリコンウェハーを置き、ダイヤモンドペンとアクリル製定規を用いて直線状の傷を入れる。
(2)傷の両端をアクリル製定規2対(4枚)で押さえ、やや両側に引っ張るように曲げて劈開する。

 製造直後のシリコンウェハーは通常清浄な自然酸化膜で覆われており、超高真空内で通電加熱すれば、清浄表面を得ることができます。しかし、うっかり素手で触ってしまったり、ステンレス製ピンセットではさんだりすると、油やニッケルなどで汚染されてしまいます。この場合は以下の手順で湿式処理を行なって、汚染されたシリコン酸化膜を除去し、清浄なシリコン酸化膜を形成して表面を保護します。もちろん使用するビーカーなどはあらかじめ洗浄しておきます。詳しくは論文[2]をお読みください。

(1)純水、特級アンモニア、特級塩酸、特級過酸化水素(30%、添加物の無いもの)を用意する。新品を使い、以後シリコン洗浄専用とする。
(2)水、過酸化水素水、アンモニアを5:1:1の割合で混ぜる(酸化層除去溶液)。
(3)水、過酸化水素水、塩酸を6:1:1の割合で混ぜる(酸化層形成溶液)。
(4)75−80℃の酸化層除去溶液に試料を10分間浸したのち、純水で2回すすぐ。
(5)75−80℃の酸化層形成溶液に試料を10分間浸したのち、純水で2回すすぐ。

D.設計の心得

 部品設計の際の心得を以下にまとめました。

1)機械的強度、加工性、熔接性、高温特性、磁性、価格など、材料の特性を十分把握する。

超高真空実験でよく使われる材料は、<注1><注3>に記しました。これらの材料については一通りの知識を身につけておく必要があります。ニラコのカタログや文献[4]第2章、文献[6]第3章を参照ください。

2)素人でも加工、組立ができるように単純な構造にする。

設計において加工、組立の知識は必須です。旋盤、フライス盤、ボール盤による加工は経験しておいた方が良いでしょう。また、放電加工、TIG熔接、銀蝋づけ、電子ビーム熔接は機会があれば見学しておいた方が良いでしょう。実験上の必要性が乏しいのに加工困難な工作を依頼することは研究者の基本的マナーに反します。また、単純な構造ほど故障しにくいという利点もあります。

3)市販品をできるだけ使う。

装置開発室の渡辺先生が強調されているように、市販品を使うと手間を大幅に軽減できます。また、自作品にくらべ、完成度が高いので故障が少なくなります。

4)個々の部品の果たす役割を明確にする。

実験上の必要性が乏しい部品を削減し、構造を単純化するのに役立ちます。

5)部品図と組立図を描いて比較する。

部品図と組立図を描いて比較すると設計上のミスを削減できます。

6)設計図面は加工する人の立場に立って描く。

正しいけれどもわかりにくい設計図面を出すと、ときどき図面と異なる部品が届きます。この場合、失敗の責任は工作者ばかりでなく、図面を描いた人にもあります。断面図や鳥瞰図を添える、図面を色分けするなどして加工する人にとってわかりやすい図面を描くことが納期の短縮と加工賃の削減、設計ミスの削減に結びつきます。

E.ホルダー部品の準備

電極部品例を図1に示します。加工は文献[9−11]を参照すれば素人でもできます。どうしても手に負えない場合は、外注するか、装置開発室に依頼します。

 洗浄の手順を以下に示します。

(1)無リン中性洗剤(井内カタログp1016)で超音波洗浄し、純水で2回すすぐ。
(2)特級アセトンで超音波洗浄し、純水で2回すすぐ。
(3)特級エタノールで超音波洗浄し、乾燥させる。トリクロロエチレンは有毒なので使わない方が良いでしょう。また、洗浄器と乾燥器は眼鏡用超音波洗浄器(約9千円)、家電製品の食器乾燥機(約9千円)で十分役立ちます。図1のホルダー部品から、スポット熔接によって、上部電極、下部電極、試料固定板(図2(a)−(c))を製作します。

F.マニピュレーター先端部への取り付けと配線中継板の取り付け

 回転マニピュレーターとXYZステージは国内外の各社、例えば、
1)MDC、代理店:リッチモアインターナショナル、カタログが充実している、価格は最も安い。ミリネジ仕様で註文すること<注4>。
2)真空光学、TEL:03-3756-7082、東京の中堅超高真空装置メーカー。
3)バキュームプロダクツ、代理店:SEIKO EG&G、TEL:052-733-2535、製品の完成度が高い。
4)誠南工業、TEL:06-672-6788、大阪を代表する超高真空装置メーカー。
5)北野精機、TEL:03-3773-3956、東京の中堅超高真空装置メーカー。

などで扱っています。ここでは、φ10のマニピュレーター先端部に電極固定部品(図3(a))を介して上部電極(図2(a))を取り付けるものとします。電極固定部品はやや高温になる(約400℃)ので、インコネル600で製作します<注5>。上部電極は電極固定部品に絶縁ワッシャー(図3(b))と絶縁管(図3(c))、配線中継板(1)(図3(d))、モリブデンワッシャーを介して取り付けます(図4)。ワッシャーは振動によるネジのゆるみを防ぐために使います。モリブデン製ボルト、ワッシャーは市販品を購入します(例えば、日本バックスメタル、M2×6ボルトで約千円。ニラコカタログNo25、p234−236参照)。超高真空内では高真空内にくらべると放電しにくいので、このような単純な絶縁構造でも約1kVの耐電圧があります。絶縁管はφ3×φ2×100の高純度アルミナ管(ニッカトー、単価290円)をダイヤモンドカッター(装置開発室にあります)で切断して作ります。絶縁ワッシャーは高純度アルミナ管を切断し、両面研磨して作ります(例えばFrialit Degussit社製、アルミナ99.7%、加工料を含めて単価約700円、代理店:パスカル)。配線中継板(2)(図3(e))は電極固定部品に絶縁ワッシャーと絶縁管、モリブデンワッシャーを介して取り付けます。下部電極(図2(b))は配線中継板(2)(図3(e))にスポット熔接します(図4)。スポット熔接機としてはミニミニウェルダー(アズワンカタログ70000、UH-1001、p1158、130,000円)がもっとも使いやすく経済的です。

G.配線と試料の取り付け

 配線中継板(1)、(2)は1.25mm2の無酸素銅より線とコネクターを介して電流導入端子(無酸素銅φ1.27mm、1対)につなぎます(ISI社カタログp133、183参照、合計約2万円)。配線の絶縁にはφ3×φ2×100のアルミナ管か、φ5×φ2×5のアルミナ製数珠玉ガイシ(友玉園セラミックス、代理店:アイリン真空、1000個で2万3千円)を使います。試料を回転したりZ軸方向に移動した場合にも無理な力がかからないように、余裕を持って配線します。シリコン単結晶試料はマニピュレーターを超高真空槽に取り付ける直前にホルダーに固定します(図6(a)、構成部品は本稿で図示したものと若干異なります)。モリブデンワッシャーを介してM3×4のモリブデンボルトによって固定するので、試料は均一に固定されますし、試料の交換も容易です。また、通電加熱時に試料が膨張しても、下部電極と配線中継板の間のアコーディオン状の箔(熱膨張歪み吸収箔、E)が歪みを吸収するので試料に無理な力がかかりません。

4.試料の通電加熱

 通電加熱の手順を以下に示します。詳しくは論文[7]をお読みください。
(1)シリコンダミー試料をつけたマニピュレーターを真空槽に取り付け、排気とベーキングにより超高真空(10^-10^Torr台の良いところで、炭化水素系残留ガスが少ないこと)を達成する。
(2)通電加熱によりシリコンダミー試料を1250℃程度まで加熱し、真空度が10^-9^Torr台に回復するまで試料ホルダーを脱ガスする。10^-9^Torr台より悪い真空下で通電加熱を行うと試料表面が荒れるので注意が必要です。
(3)いったん真空槽をリークし、実験用のシリコン試料を取り付け、再び超高真空をつくる。試料を600℃程度に加熱して、数時間放置し試料と試料ホルダーを脱ガスする。清浄な酸化膜は600℃程度では蒸発しないので表面を保護したままで脱ガスできます。
(4)10-9Torr台の真空下で1250℃に1〜2分保持し、950℃に冷却してから、<2℃/秒の速度で室温までゆっくり冷却する。冷却速度を緩やかにすることで欠陥の少ない平坦な表面を得ることができます。清浄な酸化膜で保護された試料では、800℃程度に加熱して酸化膜を蒸発させれば、清浄表面を得ることができます。炭素で汚染されている場合には、上記のように1250℃まで加熱し、シリコン炭化物を除去する必要があります。この場合は試料が融けないよう注意が必要です。シリコンは半導体なので室温では高い抵抗値を示しますが、加熱すると抵抗値は小さくなります。このため、通電加熱用電源としてはズーム機能付きの定電圧定電流直流電源(例えば高砂製作所、EX−375L、0〜60V、0〜20A、375W、定価17万8千円)が便利です。試料温度測定装置としてはシリコンウェハー用放射温度計(例えばチノー、IR−APOCSC、測定波長:0.6〜0.96μm、測定可能温度:600〜1200℃、シリコンの放射係数は0.6)が便利ですが非常に高価です(約90万円)。おおよそですが、試料が暗闇の中でかすかに赤く見えたら約600℃、室内の明るさのもとで赤く見えたら約800℃、明るく見えたら約1000℃、眩しいくらい白熱していたら約1200℃です。通電加熱中のシリコン試料の写真を図6(b)に示します(試料温度:1130℃)。以上の手段により得られたシリコン(111)単結晶清浄表面の低速電子回折パターン(入射電子エネルギー:70eV)を図6(c)に示します。清浄表面のDAS構造(文献[1]図1参照)に対応する(7×7)パターンが見えています。

5.おわりに

 先端的な実験に取り組む場合でも、最初に基本的な技術を学ぶことが重要です。専門研究グループにいれば基本的な技術が自然に身に付きますが、異分野出身の研究者には、通常なにが基本かさえわかりません。シリコン表面科学にも関心を寄せる研究者が増えている現状を鑑み、シリコン清浄表面作製に関する基本的な技術をまとめてみました。本稿の内容は主に東大物性研村田研究室で長年以上にわたり培われてきた心得と技術に基づいています。この場を借りて関係者各位に感謝いたします。

<注1>超高真空ではベーキング温度(150〜200℃)における蒸気圧が高い金属は使えません。なかでも注意しなくてはならないのはスズ、鉛、亜鉛を含んだ合金です。したがって、真鍮とはんだは使えません。また、リン青銅、ジュラルミン、SUS303Aもメーカーによっては亜鉛などを含んでいる可能性があるので使用しない方が無難です。よく使われる金属は、SUS304、SUS316L、SUS310、無酸素銅、ベリリウム銅、ニッケル、純アルミニウム、素性の明確なアルミニウム合金、インコネル600、チタン、タンタル、モリブデン、タングステン、貴金属、パーマロイ、コバールです。

<注2>緊急の際はニラコでも買えますが、価格は3〜4倍となります。ニラコも、モリブデン製ボルトは日本バックスメタルから仕入れているようです。また、同じ高純度モリブデンでも、製造元によって加工しやすさがまったく異なるので注意が必要です。組成が同じ金属材料でも加工性が異なる原因は、結晶粒の大きさや形状などが製造工程によって異なるためと思われます。似たような例として、真空熔解したSUS304は通常のSUS304と比較して、はるかに硬く、加工しにくいことが知られています。また、超高真空槽製作においては板材、丸棒、パイプを使い分けます(文献[4]p3−6)。

<注3>超高真空ではベーキング温度(150〜200℃)で分解したり、ガスを多量に放出する絶縁物は使えません。したがって、ビニール、液体潤滑剤、粘着テープ、接着剤、木材、紙は使えません。よく使われる絶縁物は、サファイア板、アルミナ、ムライト、ステアタイト、切削性セラミックス、ガラス、テフロン、バイトン、ポリイミド、カルレッツです。また、超高真空内での潤滑にはWS2、MoS2などの固体潤滑剤が使われます。超高真空槽の暫定的なリーク防止用シーラント、接着剤、充填材も市販されています(文献[4]p74)。

<注4>アメリカのメーカーの製品の規格は、国内製品の規格と異なります。例えばネジはインチ規格なので、タップ穴付き製品を購入する場合は、専用のボルト、工具も同時に注文する必要があります。また、φ34コンフラットフランジとφ70コンフラットフランジの接続するパイプの内径が細いので、国内製の電流導入や、真空ゲージが取り付かない場合があります。コンフラットフランジの材料、寸法は国内メーカーによっても微妙に異なるので十分な注意が必要です。

<注5>SUS304同士のネジ接合部は200℃程度に加熱すると噛んでしまいます。雌ネジ部をインコネル600で作り、雄ネジをSUS304とすると、400℃まで温度が上昇してもネジは噛みません。雌ネジ部をタンタルで作り、雄ネジをモリブデンとすると、800℃まで温度が上昇してもネジは噛みません。また、雌ネジの下穴を大きくしてネジを甘めにします。電極固定部品はタンタルで製作してもかまいませんが、機械的強度が落ちる、高価になるなどの欠点が生じます。

参考文献

[1]田中慎一郎、「Si表面の研究 −その技術的側面−」、KanaeNo.3、p14。最新のシリコン表面研究関連技術が述べられています。

[2]W.Kern, J.Electrochem.Soc.137, 1887(1990).シリコンウェハー洗浄法に関する詳細なレビューです。

[3]青野、塚田、八木、小間編、「表面物性工学ハンドブック」p504、丸善、19,570円。高価ですがそれに見合うだけの内容を備えています。

[4]日本真空協会編、「超高真空実験マニュアル」、4000円。超高真空実験を行う際の必読書です。現場で技術開発に携わる人が執筆しています。

[5]後藤、桜井、寺田、岡野、「技術ノート(超高真空装置の基本技術)」、応用物理60,1257−1263。超高真空システムの設計、超高真空装 置の溶接と洗浄法、試料の移動、加熱、冷却機構、超高真空よう配線材料について、それぞれの専門家が詳しく、具体的に述べています。

[6]真空ハンドブック第3版、アルバック・コーポレート・センター。様々なデータが載っています。

[7]B.S.Swartzentruber et al., J.Vac.Sci.Technol.A7, 2901(1989).様々な条件下での通電加熱によるシリコン表面清浄法を走査型トンネル電子顕微鏡(STM)により比較検討した上で最良の通電加熱法の手順を詳述しています。

[8]日本真空工業界 広報委員会、国際真空産業展 GUIDE BOOK、2000円。毎年秋に開かれる真空産業展のガイドブックです。大手、中堅真空業者の一覧が載っています。

[9]堀米利夫、「はじめての機械工作入門(その1)」、Kanae No.3、p24。機械工作技術が詳しく述べられています。

[10]技能ブックス(2)「切削工具のカンドコロ」、大河出版、1700円。
    技能ブックス(3)「旋盤のテクニシャン」、大河出版、1700円。
    技能ブックス(4)「フライス盤のダンドリ」、大河出版、1700円。
    技能ブックス(5)「ネジ切りのメイジン」、大河出版、1700円。
    技能ブックス(7)「手仕上げのベテラン」、大河出版、1700円。

技能ブックスシリーズ全20冊はいずれも、写真とイラストが豊富で分かりやすい工作の入門書です。なかでも機械工作で役立つのは上記の5冊です。

[11]兵藤申一、「物理実験者のための13章」、東京大学出版会、2000円。実験者にとって最も基本的な心得が述べられています。