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基盤研究機関の組織

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物質構造科学専攻 担当教官

 

 

所長、専攻長

  木 村 嘉 孝 教 授

副所長

  松 下   正 教 授

物質科学第一研究系

主幹 柳 下   明 教 授

  那 須 奎一郎 教 授

  柿 崎 明 人 教 授

  伊 藤 健 二 助教授

  野 村 昌 治 助教授

  東   善 郎 助教授

  小 出 常 晴 助教授

物質科学第二研究系

主幹 飯 田 厚 夫 教 授

  大 隅 一 政 教 授

  小 林 克 己 助教授

  河 田   洋 助教授

  村 上 洋 一 助教授

 

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放射光源研究系

  前 澤 秀 樹 教 授

 

物質科学第三研究系

主幹 池 田   進 教 授

  門 野 良 典 教 授

  古 坂 道 弘 教 授

 

中性子線源研究系

主幹 永 嶺 謙 忠 教 授

  新 井 正 敏 教 授

 


放射光生物照射効果研究グループ

(専任スタッフ:小林 克己 助教授、宇佐美 徳子 助手)

 可視光、紫外線、ガンマ線などの光は生命の発生およびそれ以降の進化の過程において非常に大きなかかわりを持ってきた。また現代社会においても、オゾン層の破壊による太陽紫外線の増加にともなう発がんリスクの増大、原子力発電所あるいは各種産業における放射線の利用による環境放射線の問題、一方で加速器によるガンの放射線治療成績の改善など、人間と広い意味の「光」とのかかわりは増え続けている。「光」の生物に対する各種の効果が発現する機構を正しく理解することは、完全に取り除くことの出来ない光あるいは放射線と適切に付き合う方法を示してくれると共に、ガン治療などの積極的な利用法の効率を上げることにつながる。可視からX線領域までの連続光源である放射光を用いて、私達のブループは、光による生物効果の機構を研究している。連続光源であるということは適切な分光器を用いて単色化して細胞内の特定の分子、たとえばDNA分子、に選択的に光エネルギーを吸収させることが出来る。細胞内の特定の原子あるいは分子に制御されたエネルギーを与えて生物効果をしらべるという手法で放射線の生物効果の発現機構を分析しようというものである。このために放射光によって初めて利用可能になった軟X線から真空紫外領域の照射実験を行うための装置を開発し、生物分子に対する照射効果(分子変化)の研究をしている。また、放射光研究施設には、開発した照射実験装置に隣接してトレーナーが使える生物試料準備室があるので、各種細胞の無菌培養をはじめとして、多くの種類の生化学的な実験を行うことが出来る。

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DNAの電気泳動パターンの画像解析、マウスを操作する宇佐美助手

 

 


分子の内殻分光学研究グループ

(専任スタッフ:柳下 明 教授)

<研究目的>

 何故内殻分子分光か?

  1. 未開拓分野である。
  2. 内殻軌道は特定の原子サイトに局在している。〔分子結合の選択的切断の可能性〕
  3. 内殻励起状態の寿命は、分子振動周期と同程度である。〔分子振動(或いは解難)と電子的脱励起の競争〕
 内殻励起分子の解離のダイナミックスは、簡単な分子でさえも非常に複雑である。しかし、近年の測定技術と分光性能の向上により、これらの研究は新たな局面を迎えている。

<研究の概要>

 シンクロトロン放射光を利用して、気相分子の内殻分光及び内殻励起に伴う動力学的性質に関する研究を行い、軟X線基礎過程の解明を目的としている。“独自の発想”をモットーに、私達が世界に先駆けて開発した実験手法を駆使して、以下の研究テーマを進めている。

1.

1)

2)

 

分光学的研究

励起状態を対称性で分離した軟X線分子分光

紫外レーザーと放射光の二重共鳴による励起分子の軟X線分光

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2.

1)

動力学的研究

光イオン・光電子同時計測法による配向した分子の光電離ダイナミックス

2) 分子からの光電子放出における円二色性
3) 光イオン・光イオン同時計測法による内殻励起分子の解離ダイナミックス
4) オージェ電子・光イオン同時計測法による電子状態を選別した解離ダイナミックス
 

<最近の研究成果から>

・配向した分子の光電離ダイナミックス

(連続状態の分子軌道の角度分布の直接観測)

 解離イオンの放出方向には、光吸収時の分子軸の配向が反映されるという内殻電離後の解離過程の性質を利用すると、配向した分子からの光電子の角度分布が観測できる。下図は、配向したCO分子のC1s電子を形状共鳴状態に励起した時に観測された光電子の角度分布である。これを解析することにより、光電離ダイナミックスに関する詳細な情報を得ることが出来る

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物質構造科学研究グループ

(専任スタッフ:大隅 一政 教授、亀卦川 卓美 助手)

 物質構造を基礎とする物質科学の分野においてはX線回析法が主要な手段としての役割を果たしてきており、将来も同様であろう。特に放射光X線を線源とする場合は得られる強度及び白色性の故に通常の実験室では不可能な実験が可能となることによって特色ある物質科学的研究が行われている。

 放射光X線の大強度を利用すればミクロン程度のマイクロ・ビームを生成し、微小な領域を研究対象とすることができる。また、ミクロンにも満たない微小な結晶を測定対象とすることもできる。これらによって半導体基盤上の微細な配線材、或いは気相成長法によって生成されたダイアモンド薄膜の結晶学的評価が行われている。また光学顕微鏡観察用に作製された隕石の薄片試料中の微小試料、或いは微小領域を対象として組織分析だけでは不可能な相の同定、更に、構造精密化の結果から対象鉱物の微細構造を指標とした隕石の生成・履歴を解明しようとする研究が行われている。同様に太陽系生成初期の情報を持つといわれるミクロン・サイズの惑星間塵を対象として太陽系物質の進化を明らかにするための研究も行われている。

 一方、透過能の高い放射光の短波長X線を利用することで、高温・低温高圧発生装置中の試料からの回析情報を測定し、極端条件下の圧力や温度によって誘起される全く新しい物理現象を、ミクロな原子配列を調べることによって明らかにする研究が行われている。更に地球深部での温度圧力条件を実験的に再現することによって得られる地球のマクロな物性研究や、新材料開発に不可欠な高温高圧合成のメカニズムを解明する研究なども進められている。

 ここで行われている研究は、通常の方法では不可能な実験を放射光X線を用いて行うことに大きな特色があるが、他の手法による実験研究も同時に進めることが必要なため、国内外の大学・研究所との共同研究として幅広く行われているところにも特色がある。

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大 隅

亀卦川

 

 


円偏光・ナノ構造磁性研究グループ

(専任スタッフ:小出 常晴 助教授、岩住 俊明 助手)

 

 我々のグループは、ヘリカル・ウィグラー/アンジュレーターと呼ばれる高輝度挿入光源から放出される真空紫外線(VUV)〜軟X線〜X線域の高エネルギー円偏光放射光を利用して、ナノ構造磁性体の磁気状態・電子状態の研究を行っている。

 実験手段は内殻励起における光吸収、光電子放出およびX線発光の磁気円二色性(MCD)である。内殻励起MCDでは、光励起の始状態が十分良く解っており(ほぼ完全に原子的)、しかも光のエネルギーを変えることにより元素の内殻吸収端を選択できるので、磁性体を構成する個々の元素を特定した磁気的情報すなわちフェルミ準位近傍のスピン依存電子状態の情報が明快に得られる。さらに多電子効果の知見も得られる。これは、可視〜赤外域の低エネルギー光を用いる従来の磁気光学にはない著しい長所である。

 VUV〜軟X線域の研究では、超伝導磁石、常伝導交流磁石または永久磁石を主体とする超高真空磁気光学装置を用いて内殻吸収MCDの実験を行っている。(左下写真)。また、光電子分光装置とパルス磁化装置を用いて光電子放出MCDの実験も行っている。我々のグループは、20年以上前から理論的に予言されていた強磁性ニッケルのM2, 3(3p1/2, 3/2→3d)内殻吸収MCDを初めて観測することに成功した。最近の主な研究対象は、巨大磁気抵抗効果、垂直磁気異方性、層間振動交換相互作用、量子井戸状態などの新現象を示す磁性金属人工格子・多層膜(ナノ構造磁性体)や、高温超伝導体と密接な関係があり超巨大磁気伝導で注目されるペロブスカイト型磁性酸化物などである。磁性研究と平行して、反射型ポラリメーターを利用することによりVUV〜軟X線円偏光(厳密には楕円偏光)放射光の完全楕円偏光解析実験を行っており、この研究でも世界をリードしている。

 X線領域でも、常伝導磁石を用いた内殻吸収MCD実験を行ってきており、定在波励起条件下でのMCD測定という新しい実験手法の開発なども積極的に推進してきた。また最近では内殻吸収MCDと散乱実験とを組み合わせた共鳴磁気散乱による磁性金属人工格子・多層膜の磁気構造の研究や、新たに設計、開発したX線発光分光器(右下写真)を用いたX線発光MCD実験も始めており、研究対象や研究内容が一気に拡がろうとしているところである。

 円偏光放射光内殻MCDによる磁性研究は、始まってからまだ10年しか経っていない新しい分野であり世界中の研究者から大きな注目を集めている。意欲溢れる若い大学院生の参入を大いに歓迎します

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左から、岩住、小出

 

 

 

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構造・電子物性研究グループ

(専任スタッフ:河田 洋 助教授、村上 洋一 助教授、安達 弘通 助手)

 

1.研究分野の概要

 本研究グループは放射光X線回析法、非弾性散乱法をベースにして、主に固体中電子の秩序状態、電子状態、そして磁性体に対してはスピン角運動量と軌道角運動量から寄与する磁気モーメントの成分分離等の物理量を実験的に測定することによって、種々の物質の物性研究を展開しています。

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河田(中央)、安達(右)

 

 

2.各研究分野の紹介

強相関電子系の研究

 放射光X線回析法を用い、強相関電子系の研究を行っています。最近では、巨大磁気抵抗効果により注目を集めているマンガン酸化物を対象として、その電荷・軌道の秩序状態についての研究を進めています。特に、我々は、マンガンK吸収端での共鳴散乱を利用することによって、軌道の秩序状態を直接観察できることを初めて示しました(右図参照)。これまで、軌道(Orbital)という自由度は、物性物理の表舞台に現れることはありませんでした。しかし、本系をはじめとする多くの遷移金属酸化物や、四重極秩序を示すf電子系においては、軌道という自由度が、それらの物性において非常に重要な役割を果たしている事が、認識されるようになってきました。本研究は、今まさに始まろうとしているOrbital Physicsの第一歩です。

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スピンと軌道磁気モーメントとの成分分離

 磁性体の磁気モーメントはスピンと軌道磁気モーメントとの両方の寄与からなる事は良く知られていますが、実験的にそれらを分離して測定することは放射光の出現まで困難な事でした。我々は、磁気X線回析法とX線非弾性散乱の磁気コンプトン散乱法を用いて希土類化合物、アクチナイド化合物のそれらの寄与を分離測定すると同時に、電子状態(4f、5f,伝導電子等)を分離したスピン磁気モーメントを測定し、それらの物質の複雑な磁気的性質を解明しています。

運動量密度分布測定によるフェルミオロジーの研究

 コンプトン散乱はX線光子と物質中電子との間のビリヤード・ゲームのような衝突現象と理解することが出来、この計測法から物質中電子の運動量分布を測定することが出来ます。一方金属物質が作るフェルミ面は電気伝導をはじめ多くの物性を支配しますが、その位置で運動量密度分布に特異点を与えます。我々は実験結果と一電子近似のもとで計算されているバンド計算の結果とを比較検討することから、その理論計算で取り込むことの困難な電子・電子相関の影響に関して議論するとともに、相転移に伴って生じると予想されるフェルミ面の変化の直接観察を目指しています。

 


放射光原子分光学研究グループ

(専任スタッフ:東 善郎 助教授、黄 明殿 COE研究員)

 本研究グループにおいては、真空紫外領域の放射光を利用して原子の分光学的研究を行っている。研究の主目的は、原子の構造、および光励起/電離過程における多電子効果の様相と仕組を明らかにすることにある。そのために、希ガス、および種々の金属蒸気を対象として、多電子光励起/電離スペクトルの系統的な測定をすすめている。測定方法は、主として、光イオン飛行時間差法および光電子飛行時間差法を用いている。また、新しい手法として、レーザーによって外殻電子を色々な準位に励起したターゲット原子を使って、光励起/電離過程における電子相関のメカニズムを微細にコントロールする実験法の開発を積極的にすすめている。さらには、負イオン・ターゲットの生成が試みられている。

 主要な成果としては、3電子光励起“中空リチウム”光イオン・スペクトルの初の測定と解析に続いて、K殻L殻ともに完全に空な中空リチウム共鳴の測定、リュードベリー列の測定、レーザー励起ターゲットからの中空リチウム光励起、などがある。

 更に、ごく最近、リチウムの3電子同時光電離の測定にも成功した。

 研究の大半は、テネシー大学、オークリッジ国立研究所、北里大学、明星大学、およびフランクルト大学等の外部グループと共同ですすめられている。

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左から、黄、東、スターンバーグ(テネシー大学・大学院生)

 


物性理論グループ

(専任スタッフ:那須 奎一郎 教授、岩野 薫 助手、富田 憲一 助手)
溝内 秀男 COE研究員

 

 物性理論グループは、7年前、旧高エネルギー物理学研究所の時に、物質科学の理論的研究をする目的で開設され、機構改革後の現在は、上記3名の専任スタッフとCOE研究員1名とで、物質構造科学研究所の物性理論部門を担当している。

 研究内容は、包括的に言えば、量子統計力学を用いて、電子と原子からなる巨視的多体系の様々な性質を理論的に解明することである。特にX線や可視光等の“量子輻射場と物質系との相互作用”に関する理論的研究に重点を置いており、物質内に、光で生成した励起状態が、その後、如何なる動力学的緩和経過を辿るかを解明する。

 しかし、これにとどまらず、物質系での様々な相転移(構造相転移、磁気相転移、超伝導転移や金属・絶縁体転移、等々)をも対象にしており、量子揺らぎも含めて相転移と光学的素励起を極めて正確に記述出来る径路績分理論の開発が進んでいる。

 更に、極く最近、物質中に光で誘起される「光誘起相移」の研究をスタートした。

(http://www.nttl-net.ne.jp/knasu)

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後列左から、富田、溝内、前列左から、岩野、那須

 

 


中性子散乱研究グループ

(専任スタッフ:池田 進 教授、新井 正敏 教授、川合 將義 教授、古坂 道弘 教授)

 本研究グループが運営する物質構造科学研究所パルス中性子源KENSは、世界に先駆けて陽子加速器を利用した先進的中性子源を実現しました。中性子散乱は、物質の構造とダイナミックスの研究を行う上で最も適した研究手段ですが、それにより、物質の機能の本質を理解することを進めています。研究分野は物性物理学、高分子化学、物理化学、材料科学、生物物理学等の多岐に及んでいます。また、世界最強のパルス中性子源である英国のラザフォード・アップルトン研究所とも協力研究を行っています。

1)酸化物超伝導体の超伝導機構の研究

 次世代エレクトロニクス材料でもあり、またエネルギー戦略物質でもある酸化物高温超伝導体の超伝導機構の解明を中性子散乱により行っています。従来から知られていた超伝導機構とはまったく異なり、スピンのダイナミックスが機構の裏に隠れています。また、電荷が物質中に局所的に集中することも重要な問題とされ、これまで物性物理学では取り扱いが困難であった新たな現象の解明を目指しています。研究は主にチョッパー型分光器と言われる新型の分光技術を利用し進めています。

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2)非晶質の構造とダイナミックスの研究

p9_2.jpg (34645 バイト)  光通信等の中心的物質でもあり、また高機能材料として知られている非晶質の基礎的研究は、実験的困難さや理論構築の困難さ故にこれまで発展途上の研究分野でした。しかし、この困難さは、近年の実験技術の革新的進展や計算機能力の格段の進歩により克服されつつあり、21世紀に向かって大きく発展しつつある研究分野です。本研究グループでは、非晶質の普遍的現象(ガラス転移や緩和現象)の研究を中性子散乱により行っています。1990年代になって開発された新型分光器(チョッパー型分光器、広角散乱装置)を 駆使し、これまで、観測が難しかった中距離構造やダイナミックスの研究を進め、機能を原子レベルで理解します。

3)ナノスコピック構造の研究

 自己組織化し、階層構造を作るような複雑なシステムを人類がどのように理解できるのか、それは21世紀の科学の大きな問題の一つです。そのような問題意識を基に、原子レベルからナノスコピック・スケールまでを測定できる中性子回折装置群を手段として、様々な物質系を対象に研究を進めています。非線形・非平衡系の典型としての合金の相分離過程に始まり、ミセル・エマルジョン、人工生体膜、あるいは蛋白質溶液系の構造研究等を行っています。また、拘束条件のある中での構造形成という観点で表面・界面の構造研究も行っています。

4)物質中水素、イオンの挙動の研究

 宇宙空間に最も多く存在し、生体物質にも大きく関係している水素の挙動を中性子散乱により研究を行っています。具体的には、将来の燃料電池として考えられる水素吸蔵合金、誘電体、プロトン導電体等の機能物質を中心に進めています。また、リチウム電池等の電池材料についても将来のエネルギー問題、環境問題を視野に入れ、原子レベルの知見を得るための基礎研究を進めています。

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5)核破砕中性子源に関する放射線工学研究

 

 核破砕中性子源は、21世紀の物質構造科学の研究をリードする中性子散乱施設の核ともいうべきものです。それを生み出すターゲットおよびターゲットステーション開発のため、高エネルギー陽子加速器を用いて、中性子収量の高い長寿命ターゲットシステムの開発とともに中性子物理・核データから放射線遮蔽の最適化研究、さらに宇宙開発にもつながる材料の放射線損傷の機構を含む先端的中性子工学研究を進めています。

(http://neutron-www.kek.jp/)

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中性子将来計画(高エネ機構−原研統合案)

 


ミュオン物性グループ

(専任スタッフ:門野 良典 教授、髭本 亘 助手、幸田 章宏 COE研究員:永嶺 謙忠 教授)

      

<研究概要>

 

 ミュオンスピン回転/緩和/共鳴(μSR)とはスピン偏極したミュオンを物質中に注入し、ミュオンスピンの感じる内部磁場の大きさや揺らぎを実時間で捕らえることにより物質の様々な性質を明らかにする手法であり、核磁気共鳴(NMR)、電子スピン共鳴(ESR)と並ぶ有力な物性研究手段である。我々のグループではμSRが非常に敏感な磁気プローブであることを利用して、物質の磁気的性質、第二種超伝導体の磁束状態等の研究を 展開している。

 更に、ミュオン自身が陽子あるいは水素原子の軽い同位体であることに注目し、不純物としての水素同位体が重要な役割を担っている系においてミュオンあるいはミュオニウム(水素原子の陽子をミュオンで 置き換えた原子)の電子構造や動的性質(拡散等)を明らかにする研究を行っている。

 当中間子科学研究施設はμSR実験を行う事ができる国内唯一の施設であり、上記の研究も主に当施設にて行われているが、更に英国にある理研RALミュオン施設やTRIUMF(カナダ、バンクーバー)においてもそれらのビームの特徴を活かした研究が進められている。

<最近の研究成果から>

 高温超伝導が反強磁性相関の強い二次元CuO2面に起因することから、その機構を解明する手がかりとして低次元磁性体・超伝導体の磁気的性質に関する研究が重要さを増している。我々のグループは他大学のグループと共同でスピン梯子物質と呼ばれる一群の低次元物質についてμSRによりその磁気的性質を明らかにした。更に、超伝導を示す重い電子系についても超伝導の発現機構と密接に関ると思われる磁気的な性質の解明を進めている。

 一方、KClといった単純な結晶中でミュオニウムの量子拡散を超低温まで調べることにより、ミュオニウムがいわゆるブロッホ状態として結晶全体に広がっていることを見いだし、原子といえども結晶中でついには電子と同じように波として振る舞うことを検証した。 (http://msl-kadono.kek.jp)

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μ1ポートでの実験準備風景

左上は門野、左下は髭本、右は大平(院生)

スピン梯子物質(La, Sr)CuO2.5中のゼロ磁場μSRスペクトル

反強磁性秩序に伴うスピン回転が明瞭に観察される

 

 


 

高エネルギー加速器研究機構

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総合研究大学院大学物質構造科学専攻

お問い合せ先

 文部省 高エネルギー加速器研究機構

(http://www.kek.jp/)

研究協力課共同利用第三係 0298-64-5128

放射光事務室       0298-64-5635

中性子中間子事務室    0298-64-5602

〒305-0801 茨城県つくば市大穂1−1