2010S2-003
ポジトロニウム負イオンのレーザー分光とその応用

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●基本情報
 ●実験責任者:長嶋 泰之(東京理科大学)
 ●課題有効期間:2010/10〜2013/9
 ●実験ステーション:低速陽電子
 ●関連課題:2013S2-005(ポジトロニウム負イオン光脱離実験の新展開とエネルギー可変ポジトロニウムビームの応用)

●課題の概要
 申請者らは2009年度前期からの共同利用として、低速陽電子実験施設でポジトロニウム負イオン(Ps-)の光脱離実験を行っている(課題番号2009G066、課題名「ポジトロニウム負イオンのレーザー分光」)。この1年間で、低速陽電子実験施設でPs-を大量生成し(満汐孝治 修士論文(東京理科大学)、T. Tachibana et al., Nucl. Instr. and Meth. in Phys. Res. A, 621 (2010) 670)、主な目的であった光脱離の観測に成功した。次のステップとして、本格的なPs-の分光を開始する。さらにその技術を応用して、エネルギー可変ポジトロニウムビームを生成して利用することも計画している。ただし実験の規模が大きくなるため、S2型課題として再申請したい。
 申請者らは2008年に、Cs金属を蒸着したタングステン表面に低速陽電子ビームを入射すると、Ps-が大量に生成されることを発見した。その後、東京理科大学やKEK低速陽電子実験施設において、Naを蒸着すればCsを蒸着した場合よりも高い生成率が長時間持続することを明らかにした。本研究課題では、この手法を用いてPF低速陽電子施設でPs-を生成し、Nd:YAGレーザー光を照射して光脱離させる。さらに、光脱離によって生成されるポジトロニウムを引き出して、keV領域のエネルギーを持つエネルギー可変ポジトロニウムを生成する。
 以上の実験を行うためには、光子密度の大きなパルスレーザーが必要であり、低速陽電子ビームにも、レーザーと同期したパルス状ビームが必要である。PFの低速陽電子ビームはレーザーと同期して使用することができる、世界で数少ない実験施設のひとつである。
 本研究課題によってポジトロニウム負イオンの本格的な分光実験に成功すれば、レプトンのみからなる3体の束縛状態であるポジトロニウム負イオンについて、エネルギー状態など様々な情報が得られ、基礎物理学として貴重な情報が得られる。また、エネルギー可変ポジトロニウムビームの生成に成功すれば、全く新しい研究が展開できると考えられる。たとえば、絶縁体表面表面近傍の物性研究に利用することができるはずである。また、ポジトロニウムビームを周期的なポテンシャル中を透過させれば、ポジトロニウムのコヒーレント共鳴励起現象を観測することも可能となると考えられる。

●成果発表
 ●論文


 ●PF Activity Report

 ●PFシンポジウム

 ●その他