PF-AR高度化作業と運転立ち上げ

放射光源研究系主幹 小林正典 


工事並びに検査
PF-ARリングの高度化改造計画の加速器に関するリングトンネル内の現場作業は、予定より遅れ気味で終了した。北西棟新築のため土砂を取り除いた結果、これに対応するリングの一部(NW部)が外側に最大で6.5mm押し出され垂直にも浮き上がった。北西棟の工事の進み具合と関連して土砂の埋め戻し工事が行われ、その後,再度電磁石の測量を行い正しい軌道となるよう設置位置を修正した。冷却水配管作業、各種配線作業、北西棟入退出の安全に関するインターロック配線作業などが12月25日まで行われた。
12月26日には安全に関する自主検査を行った。2002年1月4日9時30分から放射線管理センターによる機構内安全検査を受け,無事合格となり,晴れて立ち上げ運転を行うことができるようになった。

加速器立ち上げ作業
土木工事の遅れの結果、各機器にパワーを投入して制御プログラムを総合的にチェックする作業がずれ込み、スタッフは文字通り正月休み返上で運転プログラムの整備を進めることになった。入射器は1月4日朝から立ち上げを開始し、8日(火)朝からのPF-ARへのビーム入射にそなえた。

8日(火)9時からPF-ARの立ち上げ調整運転を開始した。昼にはリングの入射点パルス電磁石までビームを通すことができ、18時過ぎにはビームを周回させることができた。直ちにRF加速を行い,各種パラメータのチェックを続け,深夜には約1mAでビームによる焼きだし運転とすることができた。
9日(水)には、エレクトロニクス調整、チューン測定系の整備、リングのエネルギーを調整することで10mAを超えることができ、10mAでのビーム焼きだしを行った。
10日(木)にはフィードバックやRF加速の調整、8極電磁石の励磁などを含むビームパラメータの調整を進めた。深夜には17mAのビーム焼きだしを行った。
11日(金)にははじめて2.5GeVから6.5GeVまで各種パラメータを調整し加速を行うことができた。夜間は18〜16mA、6.5GeVの焼きだしを行うことができるようになった。
12日(土)には6.5GeVまでの加速も1分で行えるようになった。次いで入射初期電流値を増やすことを狙って調整を行い、34〜35mAまで高めることが出来るようになった。
13日(日)にはこれまでの調整を総合的にチェックすることを行い、17時からは6.5GeV,25mAで15分周期でビームを入射するビーム焼きだしを行うことが出来るようになり、当初の立ち上げ調整運転は一段落となった。

リング真空ダクトの全面的な交換(アルミ合金製から無酸素銅製へ)による新ダクトのためガス放出は多いが、ビーム焼き出しによる清浄化の進行を下図に示す。 1月15日からPFリングの立ち上げ16日からKEK-Bの立ち上げと予定が込んでいる中で、ハード並びにプログラム言語の全面的な変更・更新を行いながら、わずか一週間という期間内での立ち上げ運転としては、順調にことを進めることができた。PFと加速器研究施設スタッフの連携がその原動力であった。しかし、いくつか課題も残っており、今後とも焼きだし運転とマシンスタディをとることが必要である。


Last modified 2006-07-21 by