PF研究会「軟X線分光・散乱測定を用いた物性研究の現状と展望」

参加ポスター

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No. 発表者 所属 タイトル
1 横堀 匠 東京理科大学大学院理学研究科 デラフォサイト型酸化物CuCr1-xMgxO2の光電子分光

デラフォサイト型酸化物CuCr1-xMgxO2は特徴的な積層構造や三角格子を内包し、 それに起因する様々な性質を示すが特に電気的、磁気的性質の特異性については未解明な部分が多い。
そこで我々は本物質において光電子分光法を試み、主に価電子帯電子構造から得られた知見を報告する。

2 岡本淳 KEK-PF 室温強磁性Sr3YCo4O10.5の軟X線散乱・分光研究
Sr3YCo4O10.5(SYCO)は、室温で強磁性を示す唯一のペロブスカイトCo酸化物で、Co K端共鳴X線散乱から、eg軌道にホールの空いたCo3+中間スピン状態が存在し、eg軌道が秩序構造をとることが知られている。SYCOの強磁性に関連する秩序構造とCo 3d電子構造を、共鳴軟X線散乱と軟X線吸収分光を用いて観測した。その結果を報告する。
3 脇坂祐輝 東京大学大学院新領域創成科学研究科溝川研究室 Ta 2(Ni1-xCox)Se5の光電子分光・X線吸収および発光分光
Ta2NiSe5は半導体的電気抵抗を示す層状物質であり、330 Kにおいて長周期構造を伴わない構造相転移が観測されている。
これまでわれわれは光電子分光やX線吸収および発光分光を用いてこの物質における励起子絶縁体の可能性やそのCo置換効果を研究してきたため、そ の内容を報告する。
4 佐藤聖峰 東京大学新領域創成科学研究科複雑理工学専攻溝川研究室 RuPの光電子分光
Ruのリン化合物であるRuPはMnP型の結晶構造を持ち、RuP6の八面体がy軸方向は面共有で強く結合し、x軸方向、z軸方向は辺共有で結合して、zx面内でRuが三角格子を形成している。またRuPはT = 265Kと330K において構造相転移を示す。今回我々はRuPの電子状態をX線、紫外線光電子分光法によって測定した。
その結果、構造相転移に伴うフェルミレベル上の状態密度の変化は非常に小さいことが分かった。当日は、本実験により得られた結果の詳細を説明する。
5 芝田悟朗 東京大学大学院理学系研究科藤森研究室 La0.6Sr0.4MnO3薄膜の軟X線磁気円二色性の膜厚依存性
マンガン酸化物La0.6Sr0.4MnO3(LSMO)はハーフメタル性を示す強性金属であるが、薄膜化により6原子層以下でハーフメタル性が失われることが知られている。 この原因を電子構造の観点から明らかにするため、我々は軟X線磁気円二色性により LSMO薄膜の磁性の膜厚依存性を調べた。その結果を報告する。
6 大槻太毅 東京大学理学系研究科物理学専攻溝川研究室 IrTe2の光電子分光
IrTe2は三角格子を持つ層状物質であり、250Kで構造相転移を伴った異常が抵抗率や帯磁率で観測されている。この相転移は軌道秩序に関係していると考えられているが解明されていない。 また、Ptをドープすることで超伝導性を示す。そこで我々はX線、紫外線光電子分光法によって本物質の電子状態を測定した。
7 出田真一郎 東京大学大学院理学系研究科藤森研究室 角度分解光電子部光による電子ドープ型鉄系超伝導体 Ba(Fe1-xTMx)2As2(TM = Ni, Cu)の電子構造観測
電子ドープ型鉄系高温超伝導体Ba(Fe1-xTMx)2As2(TM = Ni, Cu、TM-Ba122)の電子構造を、角度分解光電子分光(ARPES)をもちいて行い、フェルミ面の励起光エネルギー依存性、 及びネスティングについて調べた。電子面、及びホール面のキャリア数を見積もると、Ni、Cuとドープするに伴い、リジッドバンド的な振る舞いからのずれが大きくなることが分かった。 Ni-、Cu-Ba122のバンド構造のエネルギーシフト、及び超伝導とフェルミ面のネスティングの関連について議論する。
8 大橋一隆 電気通信大学大学教育センター 放射光と大学1年次化学実験授業
大学1年生に、わかりやすく放射光の魅力を約5分位の時間で伝えるにはどうしたら良いのか、を中心テーマとしている。大学1年生の必修科目の化学実験における講義でのトピックスとしての放射光について考察し、化学実験授業の助けとすることを目的とする。
9 門野利治 東京大学大学院理学系研究科藤森研究室 Co2MnSi薄膜におけるCoとMnの磁性と組成比の関係
Co2MnSi/MgO接合系においてMnの組成を変化させた時(0.67<α<1.8)のCoとMn の磁気モーメントの変化をXMCDを用いて観測した。その結果、Mnのスピン磁気モーメントはMn組成比が増えるに伴って減少するのに対し、Coは組成比にはほとんど依存しない事が明らかになりLDA計算の結果と一致する結果を得た。今回はその結果について報告する。
10 田久保耕 早稲田大学物理学科勝藤研究室 多量体を形成するV酸化物のX線吸収分光
AlV2O4、BaV10O15、Ba2V13O22などのV酸化物はV七量体、V三量体など、遷移金属酸化物としては奇妙な多量体を形成する。これらの物質の軟X線吸収分光測定を行った。その結果、BaV10O15の三量体転移に伴うV L-edgeのスペクトル変化を観測することに成功した。
11 石上啓介 東京大学新領域創生科学研究科 La1-xSrxTiO3薄膜の軟X線光電子分光
La1-xSrxTiO3薄膜の軟X線光電子分光 PLD法で作製したLa1-xSrxTiO3薄膜のin-situ放射光光電子分光測定を行った。フェルミ準位近傍にコヒーレント部分と非コヒーレント部分を観測した。これまでのバルクの光電子分光結果と比べてインコヒーレント部分強度の減少とシャープなコヒーレント部分が観測された。また、La組成の増加に伴い、Ti3d状態数の増加、フェルミエネルギーでの状態密度の増加、Ti3+組成の増加が観測された。
12 加藤航矢 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 複雑理工学専攻 Bi3Mn4O12(NO3)の軟X線吸収分光とMn-O-O-Mn超交換相互作用の評価
軟X線吸収分光を用いてBi3Mn4O12(NO3)の電子構造を解析し、さらに非制限ハートリー・フォック法によるMn-O-O-Mn超交換相互作用の計算を行った。これらの結果に基づいてフラストレーションの起源等を議論する。
13 大川万里生 東京理科大学理学部 Co 3d Spin Configuration in Double-Perovskite-Type Cobaltates Studied by X-Ray Absorption Spectroscopy
ペロブスカイト型Co酸化物におけるCo 3dスピン配置は,通常室温では低スピン(low spin: LS)となる.しかしながら,一部の二重ペロブスカイト型構造を持つCo酸化物(A2CoMO6 :A= Sr and Ba; M = Sb, Nb, and Ta)では,その磁化測定から室温で中間スピン(intermediate spin: IH)〜高スピン(high spin: HL)配置が実現している可能性が示唆されている.これら二重ペロブスカイト型Co酸化物に対して行ったCo L3吸収端およびO K吸収端の測定(SGM beamline, Canadian Light Source)の結果から,その3dスピン配置について議論を行う.
14 吉田鉄平 東京大学大学院理学系研究科 BaFe2(As1-xPx)2のフェルミ面と超伝導ギャップ
BaFe2(As1-xPx)2は熱伝導率や磁場侵入長の測定から、超伝導ギャップにline nodeの存在が示唆されている。 BaFe2(As1-xPx)2の角度分解光電子分光を行いフェルミ面形状および超伝導ギャップについて調べた結果を報告する。