1.概要
BL-10Cは、汎用のX線小角散乱実験を行う為のビームラインである。2014年3-4月に旧来の光学系・測定系の全てを更新し、5月の調整後、6月より利用運転を再開している。これまでは「酵素回折計」の名称通り、主に溶液試料を中心とする小角散乱測定に特化した整備が行なわれていた。高度化後は、小角散乱(SAXS)/高角回折(WAXD)同時測定、斜入射小角散乱(GISAXS)測定などの汎用的な測定手法にも対応し、より多様な試料の測定解析が可能となっている。
高度化に伴い、これまで測定波長は固定だったが波長可変となっている。集光ミラーを更新すると同時に設置位置を変えて集光比を上げているが、各種スリットの位置と開口度を最適化することでビームの分散度をこれまで同様に抑えながら高輝度化を達成している。カメラ長に関しては、これまで最長2mであったが、実験ハッチを増改築して新しい定盤を設置し、3mまで拡大している。新定盤は半自動のカメラ長変更システムを備えており、一定の単位でカメラ長を簡便に変更することが可能である。BL-10Cでは、これまで高速読出し可能な1次元PSPCと2次元大面積のイメージングプレート検出器R-AXIS VII(ともにRigaku)で運用されていたが、2次元の高速大面積検出器としてPILATUS3 2M(Dectris社)を導入し、検出器を1台に統合した。また、高角回折測定用にPILATUS3 200K(Dectris社)とフラットパネル検出器C9728DK-10(浜松ホトニクス)を導入している。
2.ビームライン光学系
分光器 | 間接水冷式定位置出射型二結晶分光器(Si(111)) |
エネルギー | 6.5 - 14.0keV(0.86 - 1.91Å) |
エネルギー分解能 | ΔE/E = 10-4 |
2次元集光ミラー | 疑似トロイダル(母材:シリコン、Rhコート) |
フォトンフラックス@1.5Å | 1.5 x 1011photons/sec(スリット全開) 5.1 x 1010photons/sec(試料位置でのビームサイズ:0.27 x 0.56 mm2、カメラ長2m) |
3.実験設備
実験定盤は、カメラ長半自動変更システムを装備し、0.25〜3.0mの範囲でカメラ長を変更する事が可能である。測定のための検出器制御等に必要なシステムは全て整備されており、全てPFで開発されたソフトウェアを利用して実験を行う事ができる。また、生体試料の試料調整・測定に必要なオンサイト設備も整備されている。
・検出器
SAXS:PILATUS3 2M(Dectris)
WAXD:PILATUS3 200K(Dectris)
C9728DK-10(Hamamatsu)
・カメラ長
0.25, 0.5, 1.0, 2.0, 3.0m
(WAXDチャンバ使用時):0.9, 1.15, 1.65, 2.65m
試料恒温装置(-5〜90℃)、デジタルロガー、ディジタルストレージオシロスコープ、インキュベータ(3〜45℃)、
冷却機能付き微量遠心機(1.5ml、0.5mlチューブ用ローター有り、−20〜40℃)、ピペットマンネオ(2, 20, 200, 1000μL)、
ペリスタポンプ、極微量分光光度計(≥2μL、AstraGene)、タンパク質溶液自動分注機、汎用GISAXSステージ、
GISAXS用ビームストッパー(H5, H6 mm)、PD埋め込み型ビームストッパー(V3xH5, V4xH5, V4xH6, V5xH6 mm)、
溶液フロー装置(放射線損傷回避用)、SEC-SAXS用HPLCシステム(Acquity UPLC(Waters), Nexera-i(SHIMADZU))
・小角BL共通装置
冷却加熱ステージ:10002L(Linkam社製)、HSC302-ON190(Instec社製)、FP84(Mettler社製、>室温)
※BL-10Cの詳細情報は、以下のHPをご覧ください。
PF小角散乱ビームラインのホームページ
4. その他
2019-1-24 更新