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構造科学グループ

構造科学グループでは、中性子の波としての性質を用いて、物質中の原子配列を精密に調べ、物性や材料特性、それらの変化を物理的・化学的に理解するための研究を行っています。そのために、世界最大級の出力を持つJ-PARCに、世界で最も高い分解能(原子位置をどこまで精度よく識別できるかを示す指標)を持つ実験装置や、蓄電池の構造変化を原子レベルで解明する実験装置を開発しました。

メンバー

構造科学研究のおもしろさ・大切さ

物質の状態として気体・液体・固体がある中で固体状態に注目すると、構造的には、規則性の高い結晶と、規則性の低い非晶質やガラスに分類できます。原子やイオンの配列の違いが様々な機能を生みだします。例えば、反応を促進する触媒、高容量記録媒体(ハードディスク)などの磁性体、ガスセンサーや蓄電池に応用されるイオン導電体、熱電材料や超伝導体などがありますが、世界中の材料研究者は、その求める特性に合わせて、原子・イオンを組み合わせて求める材料を日々探し、なぜその特性を示すかを理論的に突き詰めようとしています。
我々のグループは、材料研究、構造物性研究で問題になる原子・イオン配列を精密に解析するために2台のそれぞれ性格の異なる中性子回折装置を使って、構造と物性、機能との関係を解明していきます。そして中性子というプローブを使いつつ、必要に応じて、X線や放射光、NMR、RAMANも駆使して、材料の機能発現機構を見つけ出していきます。

試料合成もします。 X線も使います。
図1 試料合成もします。X線も使います。

精密構造解析

原子配列を精密に解析するためには、原子間距離程度の波長を持つ中性子の散乱・干渉を用いる方法がもっとも高い精度が得られます。世界最高の分解能を持つ中性子回折装置SuperHRPDは従来の装置では捉えることができなかった僅かな構造変化を計測することができます。

精密構造解析
図2 2008年6月21日、シリコンを用いた回折実験で世界最高の分解能を達成しました。高エネ機構にあった世界有数の回折装置Sirius(2006年3月まで稼働)のデータとの比較。ピークの形がシャープなほど分解能が高い。Siriusに比べて、SuperHRPDは分解能1/3以下を達成し、ブラック回折線に大きな裾がなく対称に近く、1/10線幅では10倍以上改善されました。
SuperHRPDの外観 SuperHRPD の外観図
図3 SuperHRPD の外観図

蓄電池研究

電子によって散乱されるX線に対し、中性子は原子核によって散乱されます。その結果、軽元素であるリチウム等の僅かな量の変化も捉えることができます。又、同位体の散乱能の違いを利用して特定部分の構造情報を取り出すことができます。NEDOの「革新型蓄電池先端科学基礎研究事業(RISING)」により、中性子回折装置SPICAを開発し、充放電反応中のリチウムや他の原子の原子配列の変化を原子レベルで解析しています。

SPICAの外観図 SPICAの外観図
図4 SPICAの外観図
充電や放電に伴うリチウムイオン二次電池の電極材料の構造変化 充電や放電に伴うリチウムイオン二次電池の電極材料の構造変化
図5 充電や放電に伴うリチウムイオン二次電池の電極材料の構造変化。
正極・負極の材料が充電・放電に伴い構造変化している様子を時分割で測定することにより捕らえることができました。

構造解析法開発とZ-Code開発

J-PARCの中性子回折装置群を用いた構造科学のフロンティア研究を行う目的で、構造解析法の研究を推進しています。それらをソフトウェアスーツにしたZ-Codeを開発中です。

Z-Rietveld配布ページ
Conograph 配布ページ

Z-Rietveld のGUI
図6 Z-Rietveld のGUI(グラフィカル・ユーザ・インターフェイス)

総研大進学を検討されている皆さんへ

世界最先端の4つのプローブ(中性子、ミュオン、放射光、陽電子)を手厚い指導を受けながら最大限利用できるのが、総研大・高エネルギー加速器研究科物質構造科学専攻の大学院生の利点のひとつです。すべての大学院生には国内外での学会発表や海外武者修行等の多数の機会が与えられており、多様な経験を積んで頂くことになります。さらに、国内外からの研究者や学生との交流も促進されます。リサーチアシスタント制度、奨学金制度、授業料免除等様々な支援があります。当グループは物理、化学、工学、数学の学位を持つ者から構成され、新しい研究に意欲的に取り組む学生を求めています。当グループの卒業生は全員大学か研究所に就職しております。

メンバー

神山 崇          教授
米村雅雄          特任准教授(SPICA責任者)
鳥居周輝          技師(研究員、SuperHRPD責任者)
富安亮子          特任助教(ソフトウェア開発)
石川喜久          研究員(構造解析)
Sanghyun Lee 研究員(構造解析)
浅野 肇          研究員(筑波大名誉教授)
ミャオ ピン   総研大生
安間睦子          秘書
堀江満里          秘書
協力研究員      Dyah S. Adipranoto
室屋幸司          エンジニア(業務委託、NAT)
清水 勝美        エンジニア(業務委託、NAT)
塩家正広          エンジニア(業務委託、BBT)
間中 祐介        エンジニア(業務委託、BBT)
南波 薫          研究員(派遣、WDB)
石垣 徹          客員教授(茨城大学、iMATERIA責任者)

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