回折格子と球面鏡の選定(エネルギー領域による選択)


実験者は、利用したいエネルギー領域、光強度、分解能などを考慮して、3種類の回折格子(300 l/mm, 800 l/mm, 1200 l/mm)のいずれを利用するか、また、2種類の球面鏡(M1,M2)のどちらを利用するか判断しなければならない。各回折格子で利用可能なエネルギー範囲は、おおよそ以下の通り。

刻線密度(球面鏡)エネルギー領域
300 l/mm (M2)70 - 500 eV
800 l/mm (M2)190 - 1200 eV
800 l/mm (M1) (500-) 620 - 1900 eV[610eV付近を除く]
1200 l/mm (M1) (800-) 970 - 1900 eV[950eV付近を除く]


Spectra at BL-11A
図. BL−11Aで得られるスペクトル分布(この測定ではスリット幅を一定にしているので、エネルギー領域によって分解能が異なることに注意)。


[回折格子の切り替え]
3枚の回折格子は並行に設置されており、直線導入器で切り替えることができる。また、回折格子の切り替えに伴って、出口スリット(S2)の位置を調整する必要がある。3枚の回折格子に対する、直線導入器の目盛りの読みとS2の位置は、以下の通り。

刻線密度(球面鏡)直線導入器目盛りS2位置
300 l/mm (M2)99627.074.2mm
800 l/mm (M2)99454.744.7mm
800 l/mm (M1)
1200 l/mm (M1)99540.944mm

S2の位置は、ノギスで計測する(下図参照)。並進は、留めネジを緩めて、手動ハンドルで行う。留めネジを緩めた時に不用意にチャンバーが並進しないよう注意する。
S2 Position
図. “S2位置”。

回折格子を切り替える時には、制御プログラム中で用いるパラメータが変わるので、その設定を行う必要がある。制御PCのデスクトップにある[G&M1/M2 Select]をダブルクリックして、回折格子と球面鏡の組み合わせを選択する。

[球面鏡の切り替え]
M1の抜き差しとM1/M2チャンバーの並進を行う必要がある。
M1/M2の切り替えは、M1を上下に抜き挿しして行う(M2はそのままで、M1を挿入すればビームはM1で反射される)。同時に、チェンバー全体を前後に並進移動させる。
駆動は、いずれもパルスモータによる(パルスモータコントローラは、ステーションコントローラのラック内のPM4C-05-1である)が、全てPC上の制御プログラム[G&M1/M2 Select]から行えるようになっている。
M1利用の際に、回折格子の回転が特定のところ(800 l/mmの場合610 eV付近)で、S1からの反射光がM2に当たって反射する0次光が抜けるので注意が必要である。

<参考>PM4C-05-1のCHANNEL BがM1の上下(抜き=CCW、挿し=CW)で、移動量は0.5μ/pulseである。M1挿入時の位置は、目盛りの読みで22.3mm、ノギスで測って40.9mmである(M1を抜いた時の位置を目盛りの読みで5.3mmとすると移動量17.0mmに対するpulse数は34000である)。なお、リミットスイッチが不調なので注意を要する。
チェンバーの並進は、PM4C-05-1のCHANNEL Cで行い、マグネスケールで読みとる。CWで上流に、CCWで下流に移動する。移動量は、0.5μ/pulseである。M1利用の時は、上流(CW)側limitまでチャンバーを移動させる。M2利用の場合は、そこから+28.705mm下流側である。

Last modified: October 13, 2011