TMR素子の内部界面の電子構造を共鳴光電子分光法で解明 2004年7月7日 東京大学工学部の尾嶋正治(おしま まさはる)教授,組頭広志(くみがしら ひろし)助手らは,PFのBL-2Cにおいて,レーザー分子線エピタキシャル装置(MBE)
で作成したTMR(トンネル磁気抵抗)素子La0.6Sr0.4FeO3(LSFO)/ La0.6Sr0.4MnO3(LSMO)の超格子積層構造の内部界面の電子構造を,高分解能光電子分光装置を用いた共鳴光電子分光法(RPES)により捉え,界面でLSMOのマンガンの電子がLSFOの鉄の電子軌道に移動する現象が生じていることを初めて明らかにしました。この電荷移動により強磁性体であるLSMOが界面で数分子層のレベルで常磁性体に変化しており,これはTMR素子において理論的な巨大磁気抵抗(MR)比が得られない主要な原因であると考えられます。この知見は,TMR素子のMR比を大きくするデバイス設計の重要な指針となり得るので,今後,磁気記録装置の大容量化や低消費電力化等に大きく役立つことが期待されます。 H. Kumigashira, D. Kobayashi, R. Hashimoto, A. Chikamatsu, M. Oshima,
N. Nakagawa, T. Ohnishi, M. Lippmaa, H. Wadati, A. Fujimori, K. Ono, M.
Kawasaki and H. Koinuma : Inherent charge transfer layer formation at
La0.6Sr0.4FeO3/La0.6Sr0.4MnO3
heterointerface. Appl. Phys. Lett., 84, 5353-5355 (2004).
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