ディスク状ナノ磁石の磁化をPEEMで観察・磁化の回転の制御に成功

2005年5月20日


 

東京大学大学院工学系研究科尾嶋正治教授のグループは、高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所の小野寛太助教授、独立行政法人産業技術総合研究所【理事長吉川 弘之】ナノテクノロジー研究部門【部門長 横山 浩】秋永広幸主任研究員と共同で、放射光を使った光電子顕微鏡(PEEM)技術を開発し、次世代の超高密度磁気記録デバイスとして期待されるディスク状ナノ磁石の磁化の様子を明らかにし、磁化の回転方向(カイラリティ)を制御することに成功しました。

放射光を使った光電子顕微鏡は、試料の磁気モーメントをナノメートルオーダーの空間分解能で測定することにより、主に強磁性体ナノ構造の磁気的特性を可視化する装置です。近年になって、半導体技術を応用することにより、ナノメートルオーダーで磁性体を加工する技術が進んできたために、いままでには観測できなかったナノスケールでの磁性を明らかにする基礎的な研究が盛んになってきており、このような基礎研究の分野においても欠かせないツールとなることが期待されています。

また、磁化の回転方向(カイラリティ)の制御により、次世代の超高密度磁気記録デバイスの中でも注目を浴びている磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)について、記録ビット間の干渉を低減することにより高密度化が可能になり、新しいデバイスとして期待されています。

本研究開発成果は、独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構【理事長牧野力】(以下「NEDO技術開発機構」という)の平成13年から5ヶ年計画で実施されている委託事業、ナノテクノロジープログラム・ナノ機能合成技術プロジェクト【プロジェクトリーダー 産総研 ナノテクノロジー研究部門長 横山 浩】の成果です。

この研究開発成果は米国応用物理学会のJ. Appl. Phys.誌2005年5月15日号に掲載されました。また、2005年5月11日付の日刊工業新聞に掲載されました。

T.Taniuchi, M.Oshima, H.Akinaga and K.Ono : Vortex-chirality control in mesoscopic disk magnets observed by photoelectron emission microscopy. J.Appl.Phys., 97, 10J904 (2005).

磁化の回転方向が制御されたディスク状ナノ磁石のPEEMによる観察



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