ショウジョウバエのペプチドグリカン認識タンパク質の構造をBL-5で解析
〜自然免疫系における異物認識に新しいメカニズムを提案〜


2005年7月13日


 テキサス大学の張崇毅(Chung-I Chang)博士と、1988年に膜タンパク質のX線構造解析の研究でノーベル化学賞を受賞したJohann Deisenhofer(ダイゼンホーファー)教授、KEK構造生物学研究センターの若槻壮市(わかつき・そういち)教授と伊原健太郎(いはら・けんたろう)博士らは、ショウジョウバエの自然免疫系に関わるタンパク質PGRP-LCaの結晶構造をPF, BL-5のタンパク質結晶構造解析装置を使って明らかにしました。

PGRPとはPeptidoGlycan Recognition Protein(ペプチドグリカン認識タンパク質)の略で、細菌の細胞壁の構成成分であるペプチドグリカンを異物として認識するという、自然免疫系に関わる重要なタンパク質です。PGRP-LCには、選択的スプライシングによって生じる3つのアイソフォームLCa, LCx, LCyが存在します。今回構造が明らかになったPGRP-LCaでは、ペプチドグリカン結合部位が、3つの残基により塞がれていることがわかりました。

また、生化学的な実験により、LCaはペプチドグリカン単量体と結合することができないが、単量体ペプチドグリカンの結合したLCxには結合できることが明らかになりました。これらの実験事実から、複数の受容体によって認識することにより、感染源に対してより的確な応答ができるような、自然免疫系における新しい認識のメカニズムが示唆されました。

この成果は,2005年7月19日発行のProceedings of National Academy of Sciences(米国科学アカデミー紀要)に掲載される予定です(オンライン版は7月8日に発行)。

Chung-I Chang, Kentaro Ihara, Yogarany Chelliah, Dominique Mengin-Lecreulx, Soichi Wakatsuki and Johann Deisenhofer : Structure of the ectodomain of Drosophila peptidoglycan-recognition protein LCa suggests a molecular mechanism for pattern recognition. Proc. Natl. Acad. Sci., 102, 10279-10284 (2005).



ヒト由来PGRP-IαC(PGRP-LCxと近い構造を持つ)とペプチドグリカン単量体の複合体結晶構造(a)と,今回得られたPGRP-LCa単独の結晶構造(b)。ペプチドグリカン結合サイトが、茶色で示した3つの残基によりふさがれている。

詳しい解説記事が今週木曜日のNews@KEKに掲載される予定です。



by pfw3-admin@pfiqst.kek.jp