黄砂粒子と硫酸の化学反応を解明
〜BL-9Aを用いたイオウK吸収端XANES測定〜




2006年10月3日


 広島大学大学院理学研究科の高橋嘉夫(たかはし・よしお)助教授のグループは,BL-9AにおけるイオウK吸収端XANES測定により,エアロゾル中の硫酸塩の化学種を特定し,黄砂粒子と硫酸の化学反応に関する新たな知見を得ることに成功しました。

硫酸エアロゾルは,地球温暖化や酸性雨問題とも関連した重要な環境汚染物質であり,人為起源の二酸化硫黄が大気中で酸化を受けた場合などに生成します。この硫 酸エアロゾルは,主にアンモニウム塩や石膏として大気中に存在すると予想されており,どのような化学種で存在するかは硫酸エアロゾルの起源や物性とも関連して重要ですが,これまでは硫酸イオンの対陽イオンを同定する手段がほとんどありませんでした。

高橋助教授らは,イオウK吸収端XANESの吸収ピーク後に現れる微細構造が硫酸塩 の対陽イオンの違いを反映することに着目して,粒径別に採取されたエアロゾル中の硫酸塩の化学種を決定しました。その結果,中国西部の乾燥地域を起源とする黄砂が飛来する時期(黄砂期)には,硫酸を中和できる炭酸カルシウムがエアロゾル中に多量に含まれているのに対し,非黄砂期には硫酸と反応した結果,炭酸カルシウムが石膏化していることが分かりました。これは,黄砂が酸性雨の原因となる硫酸を中和する能力を持つことを明確に示しています。

この成果は2006年8月15日発行のEnvironmental Science and Technology誌に発表されました。

Yoshio Takahashi, Yutaka Kanai, Hikari Kamioka, Atsuyuki Ohta, Hiroshi Maruyama, Zhiguang Song and Hiroshi Shimizu: Speciation of sulfate in size-fractionated aerosol particles using sulfur K-edge X-ray absorption near-edge structure. Environmental Science and Technology, 40, 5052-5057 (2006).







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