屈折コントラストX線CT法により信号ケーブルの内部立体構造を可視化

2009年3月27日


 株式会社日立製作所,KEK,九州シンクロトロン光研究センター,筑波大学,日立電線株式会社は,高エネルギーの放射光X線を用いた「屈折コントラストX線CT法」により信号ケーブル内部の立体構造を可視化することに成功しました。

 従来の吸収コントラスト法を用いた物質の内部観察法では,高エネルギーのX線では密度の低い有機被覆部材のような材料に対して感度が低く,低エネルギーのX線では密度の高い金属芯線のような材料に対して透過力が弱いため,大きく異なる密度の材料で構成される製品の内部構造を可視化することは困難でした。

 研究グループは,低密度の有機材料を高感度で可視化するために用いられている「屈折コントラストX線CT法」を,高エネルギーX線に対応させることで,密度が異なる材料から構成される直径6mmの信号ケーブルの内部構造を可視化することに成功しました。高エネルギーX線を用いた際に安定して信号を測定できるイメージングシステムを開発したことがこの成果の鍵となっています。これにより,密度の大きく異なる材料から構成される工業製品の非破壊観察が可能になり,製品の信頼性向上に大きく貢献することが期待されます。

 本成果におけるフォトンファクトリーを利用した実験は,文部科学省の「先端研究施設共用イノベーション創出事業(産業戦略利用)」のもとで実施されたものです。また,本研究は3月24, 25日につくば国際会議場で行われた第26回PFシンポジウムで発表されました。

 詳しくは株式会社日立製作所のサイトのニュースリリースをご覧ください。このニュースリリースは日立製作所の他,高エネルギー加速器研究機構を含む5機関の共同で行われました。この成果は,3月27日付の化学工業日報,電気新聞で取り上げられています。

 この共同研究を中心となって進めてきた株式会社日立製作所・基礎研究所の米山明男(よねやま・あきお)氏は,放射光科学研究系の兵藤一行氏,平野馨一氏らと共同で,干渉や屈折などのX線光学原理に基づいた新しいX線イメージング法の開発と装置の改良,そしてそれを用いた応用研究で多くの成果を挙げてこられています。2008年8月,日本医用画像工学会第26回大会で「高速位相コントラストX線イメージングの試み」という発表に対して奨励賞を受賞されています。

 

米山明男氏(分離型干渉計の前で)


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