誘電体の熱ゆらぎの直接観測に成功

2009年12月21日


 東京学芸大学の並河一道教授,日本原子力研究開発機構の岸本牧副主任研究員,KEK放射光科学研究施設の那須奎一郎教授らは,誘電体の分極状態の微妙な変化のゆらぎを調べる新しい手法を開発し,分極の過剰な状態が平衡状態になるまでの緩和時間を直接観測することに成功しました。

 この研究で開発した「スペックル強度時間相関分光装置」は,極めて輝度の高いプラズマ軟X線レーザーの軟X線レーザーを利用し,単ショットX線レーザーを用いて時間相関実験を行う新しい手法を実現する装置です。研究グループは,この手法を用いて,誘電体であるチタン酸バリウムの相転移温度付近において出没する分極クラスターのゆらぎの振る舞いを明らかにし,クラスターの分極の熱ゆらぎは臨界温度の数度高温側で臨界緩和を起こすことを見出しました。物性の実験研究者と理論研究者の共同研究が実現できたことも本研究の成功の鍵となっており,PFの那須教授は理論研究者として本研究グループに参加しています。

K. Namikawa, M. Kishimoto, K. Nasu, E. Matsushita, R.Z. Tai, K. Sukegawa, H. Yamatani, H. Hasegawa, M. Nishikino, M. Tanaka and K. Nagashima : Direct Observation of the Critical Relaxation of Polarization Clusters in BaTiO3 Using a Pulsed X-ray Laser Technique., Phys. Rev. Lett., 103, 197401 (2009).

詳しくはJSTのプレスリリースをご覧ください。

 


 


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