2010年4月22日
大阪大学蛋白質研究所の栗栖源嗣教授の研究グループ,および名古屋大学大学院生命農学研究科の藤田祐一准教授の研究グループは,立命館大学と共同で,世界で初めて植物や藻類の中で葉緑素が緑色になる反応の仕組みを解明することに成功しました。 ダイズを暗いところで芽生えさせると緑にならないで黄色い"もやし"になってしまいます。これに対して,クロマツやドイツトウヒなどの裸子植物の芽生えは暗いところでも葉緑素を作り緑色になることができます。また,多くの藻類やラン藻,光合成細菌も暗所でも緑になる能力をもっています。 このように,植物の種類によって芽生えが緑化する能力には違いがありますが,これがどのような仕組みの違いによるのか長い間分かりませんでした。90年代に,「光非依存型(暗所作動型)プロトクロロフィリド還元酵素(DPORと略します)」のはたらきがその仕組みのもとになっていることがようやくわかりました。 研究グループは,暗いところでも緑化する光合成細菌のDPORの立体構造を,PFのBL-5A, NW12Aを使って,世界で初めて明らかにしました。DPORは,窒素固定酵素ニトロゲナーゼと非常によく似た構造であることがわかりました。窒素固定は,ある種の細菌などにより行われる反応で,空気中の窒素分子をアンモニアなどの窒素化合物に変換し,土壌を肥やすはたらきをします。このことは,窒素分子の三重結合の開裂(窒素固定反応)と,ポルフィリン環の二重結合の還元(葉緑素の合成)という大きく異なる反応が,同じような仕組みによってなされているということを意味しています。 この成果は,Natureオンライン版に2010年4月18日に掲載されました。 Norifumi Muraki, Jiro Nomata, Kozue Ebata, Tadashi Mizoguchi, Tomoo Shiba, Hitoshi Tamiaki, Genji Kurisu and Yuichi Fujita: X-ray crystal structure of the light-independent protochlorophyllide reductase. Nature, published online 18 April 2010. より詳しい説明は,大阪大学蛋白質研究所のウェブサイトをご覧ください。
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