抗リウマチ薬開発を目指したインターロイキン-15と
受容体の立体構造の解析に成功
〜池水信二准教授(熊本大学大学院医学薬学研究部)が
財団法人・病態代謝研究会,最優秀理事長賞を受賞〜


2007年12月4日


 熊本大学大学院医学薬学研究部の池水信二(いけみず・しんじ)准教授らのグループは,PFAR-NW12Aを用いて,インターロイキン-15(IL-15)と受容体(IL-15Rα)の複合体の構造解析に成功しました。

 インターロイキンは免疫系細胞から分泌されるタンパク質で,多くの免疫系の反応に重要な役割を果たしています。今回の研究で用いられたインターロイキン-15は,リンパ球の一種であるT細胞やNK細胞の維持・分化・活性化・誘導などに関わっていることが知られています。今回の構造解析の結果,インターロイキン-15と受容体との結合様式が明らかになり(図1),抗原提示細胞上に発現している受容体IL-15Rαがインターロイキン-15とまず結合し,β鎖,γ鎖を発現するT細胞にインターロイキン-15を提示する,という免疫系シグナル伝達複合体形成に適した構造をしていることが明らかになりました(図2)。

 関節リウマチ患者の患部ではインターロイキン-15が異常発現していることが知られており,インターロイキン-15と受容体IL-15Rαの結合を阻害すると関節リウマチ患者の炎症が抑制されることから,本研究により解明されたインターロイキン-15と受容体との認識機構が抗リウマチ薬開発の手がかりとなることが期待されます。

Mami Chirifu, Chiharu Hayashi, Teruya Nakamura, Sachiko Toma, Tsuyoshi Shuto, Hirofumi Kai, Yuriko Yamagata, Simon J Davis and Shinji Ikemizu : Crystal structure of the IL-15-IL-15 Rα complex, a cytokine-receptor unit presented in trans. Nature Immunology, 8, 1001-1007 (2007).

    

図1 インターロイキン-15と受容体IL-15Rα複合体の構造
図2 インターロイキン-15のシグナル伝達複合体モデル

   


池水准教授は,総合研究大学院大学・放射光科学専攻(現・物質構造科学専攻)の第3期生として,坂部知平教授(現・名誉教授)のもとで,大学院博士課程時代をフォトンファクトリーで過ごされました。現在は熊本大学大学院医学薬学研究部の准教授として,創薬を目指した構造生物学研究の分野で活躍されています。今回の研究の成果により,池水准教授(写真左)は,「構造生物学的手法を用いた関節リウマチの抗炎症薬の開発」という研究テーマで,財団法人・病態代謝研究会の最優秀理事長賞を受賞されました。



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