放射光源研究系助手の宮島司(みやじま・つかさ)さんが,
第11回日本放射光学会奨励賞を受賞

2007年1月19日


 

放射光源研究系助手の宮島司(みやじま・つかさ)さんが,第11回日本放射光学会奨励賞を受賞されました。この賞は,日本放射光学会員である35歳未満の若手研究者を対象に,放射光科学に関するすぐれた研究成果に対して授与されるものです。受賞対象となった研究は「非線形共鳴近傍における位相空間中でのベータトロン振動の研究」です。宮島さんは,2005年にも日本加速器学会奨励賞を受賞されており,今回の受賞はそれに続く快挙となりました。
 
最近多くの放射光源で採用されているトップアップ入射法は,光学素子の熱負荷が一定になることや,輝度の時間平均値が大きくなるという利点があり,PFでも実現のための準備が進んでいます。この方法では,ビームラインシャッターを開け,かつ挿入光源のギャップを閉じた状態で電子ビームを入射することから,実験ホールでの放射線安全,あるいは挿入光源の永久磁石の減磁を避ける点からも,入射時のビーム損失を極力少なくすることが重要です。今回の賞はビーム損失の原因となりうる非線形磁場により引き起こされる共鳴現象の研究に対して与えられたものです。

放射光源用の電子貯蔵リングでは,高輝度の放射光を安定に発生させること,いいかえると,低エミッタンスビームを安定に周回させることが重要です。このためには,力学口径の問題やビーム損失,ビーム不安定性に関わる現象を十分に理解することが必要です。これらの現象に共通して深く関わっているのが,周回ビームのベータトロン振動です。特に,力学口径の減少やビーム損失といった好ましくない現象において,ベータトロン振動の共鳴現象が本質的です。補正用の6極電磁石や高機能の挿入光源により持ち込まれる非線形磁場が,ベータトロン振動の高次の共鳴(非線形共鳴)現象を引き起こすことがあります。

宮島さんは,ビームに初期振動を与えビームの位置と傾きを同時に測定するという方法で,非線形共鳴を誘起する微小な非線形磁場を推定する方法を開発しました。この方法によって,非線形共鳴の起原を明らかにすることができ,それらの補正方法を確立させることができます。これは,放射光源のさらなる高性能化,安定化技術の確立に大きく貢献する,画期的な方法であることが高く評価されました。

授賞式および受賞講演は2007年1月12〜14日に広島市で開催された第20回日本放射光学会年会で行なわれました。



雨宮慶幸放射光学会会長(左)から賞状を受け取る宮島氏

 


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