ほ乳類の神経系ではたらくタンパク質リーリンの構造解析に成功

2007年8月27日


 大阪大学蛋白質研究所・プロテオミクス総合研究センターの高木淳一(たかぎ・じゅんいち)教授のグループは,ほ乳類の神経系のシグナル伝達機構に重要な役割を果たしているタンパク質,リーリンの構造解析に成功しました。

 哺乳類の脳の形づくりは,無数の神経細胞が誕生後に,正しい位置に移動し,層構造を形成することで達成されます。巨大な細胞外タンパク質であるリーリンは,この神経細胞の移動と層構造形成に必須であり,実際,リーリン機能の不全によって,ヒトやマウスで,脳の形成に異常が生じることが知られています。リーリンは,細胞膜上の受容体に結合することで,神経細胞に作用します。高木教授のグループでは,PFのBL-5AおよびSPring-8, BL41-XUを用いて,リーリンの受容体結合断片のX線結晶構造解析を行うことによって,リーリンの活性発現に重要なアミノ酸残基の同定に成功するとともに,リーリンには亜鉛イオンが結合していることを見いだしました。

 この研究成果は2007年6月12日発行のProceedings of the National Academy of Sciences(米国科学アカデミー紀要)に掲載されました。

Norihisa Yasui, Terukazu Nogi, Tomoe Kitao, Yoshimi Nakano, Mitsuharu Hattori and Junichi Takagi : Structure of a receptor-binding fragment of reelin and mutational analysis reveal a recognition mechanism similar to endocytic receptors. Proc. Natl. Acad. Sci., 104, 9988-9993 (2007).


リーリンの受容体結合断片(R5-6)の全体構造



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