XMCD (X-ray Magnetic Circular Dichroism; X線磁気円二色性)
担当者:雨宮健太
2010年10月18日更新
keyword: XMCD, magnetic structure, magnetic moments
Back to XMCD top
実験概要
- XMCDとは
磁性体に対して円偏光X線を照射すると,試料の磁化方向と円偏光の向きとの相対的な関係によって,X線の吸収強度に違いが生じます。これをXMCD (X-ray Magnetic Circular Dichroism; X線磁気円二色性)と呼びます。
- PFにおけるXMCDの特徴
2.5 GeVのPFリングは,軟X線領域に適した放射光施設といえます。磁性体の研究において重要な,Fe, Co, Niといった3d遷移金属は,L吸収端が700-900 eV領域にあるため,2p→3dの軟X線吸収を用いることで,これらの元素において磁性を担っている3d軌道の情報を直接得ることができます。
- XMCDで何がわかるのか
得られたXMCDスペクトルを解析することによって,元素ごとのスピン磁気モーメントおよび軌道磁気モーメントを定量的に決定することができます。また,スペクトルの形状から,磁性元素の価数など,化学状態についての情報を得ることもできます。
- 測定対象、測定可能な試料
基本的に,X線吸収スペクトルが測定できる試料であればXMCDの測定が可能です。ただし,軟X線領域の場合には電子収量法が用いられることが多いのですが,絶縁体の場合には薄膜や粉末でないと測定が難しいことがあります。一方で蛍光収量法を用いた場合,特に対象元素の濃度が高い場合には,試料による吸収の補正が難しくなります。
また,電子収量法は表面に敏感なので(通常,検出深度は数nm程度),表面が酸化されている場合など,試料全体の磁気的性質とXMCDの結果が直接比較できない場合があることに注意が必要です。
Back to XMCD top
問い合わせ:フォトンファクトリー利用相談窓口