角度分解能光電子分光実験装置 ARPES-II
担当者:小野 寛太
5659(PHS:4205)
kanta.ono@kek.jp
1.概要
本実験装置は、回転機構付電子エネルギー分析器を内蔵し、主に単結晶試料を対象とした角度分解紫外光電子分光を行う装置であるが、なかでも熟練者を対象とした難易度の高い実験向きに新規製作された上級機である。時間的制約を受ける共同利用実験を効率良く遂行できるように、市販品の組み合わせながら、高速真空立ち上げ、高速測定できるように性能アップが図られている。その他の機器としては一般的な表面試料調製/規定手段を備えているほか、他装置と共有しているオプションパーツを取り付けて使用することができる。
2.性能
- 主分析器
二軸回転機構及び収束レンズ付半球型分析器
(VSW社製 HA45,中心軌道半径:50mm)
可動範囲:−5〜85°(垂直方向)/−15〜300°(水平方向)
但し、分析器による立体障害のため、実際の測定では水平振りのみの場合、30°以上、垂直振りのみでは10°以上に制限される。
分解能:エネルギー E/ΔE=100(EPASS ≧2eV)
角度 Δθ=1°(1φスリット時)
- 分析槽
μ−メタル製(VG社製 ADES-500同等品)
到達真空度 1.5×10-11Torr以下(エクストラクターゲージで実測)
- 試料準備槽
到達真空度 1×10-10 Torr以下
2つの試料位置に対して各種サイズ(ICF070/114/152)のポートを配置した構成で、下記に示すRHEED、Kセル等を用いた試料作製が可能(現在,整備中)
- 排気系
ピボット軸受式ターボ分子ポンプ及びロータリーポンプのみによる排気系で、1500 1/s(分析槽)及び500 1/s(試料準備槽)の各ターボ分子ポンプの背圧を、150 1/s ターボ分子ポンプで排気するタンデム構成となっている。なお、背圧側ターボ分子ポンプは一時的に各部の排気に利用することができる。
- 真空インターロック
各部は圧空及び電磁動作の自動バルブにより隔離され、大気から動作するワイドレンジ真空計(バルザース社製 TPC300)及び極高真空計(ライボルト社製 IM520)で常時監視し、シーケンサーによるインターロックがかけられている。
- 気体導入系
本体のバリアブルリークバルブに、小容量ガスシリンダーを取り付けて導入。
- 試料導入系
現在,整備中(当面は磁気結合型直線回転導入機を用意している。) 試料に依存する受け渡し部分については事前の打合せが必要と思われる。
付属装置
- 各種試料マニピュレーター(VG社製及び一部自作)(他装置と共用)
- Auger分析装置(VG社製半球型電子エネルギー分析器 VG100AX)場合によっては、取付位置を変えて光電子測定も可能(但し角度分解との同時使用は不可)
- LEED/RHEED分析装置(Φ社製(出し入れ機構付)、日本ビーテック社製)
- 残留ガス分析用四重極質量分析計(スペクトラマス社製)及びデジタルサンプリングスコープ
- 5KVイオン銃(ANELVA製)
- 蒸着用2KW電子銃ほかKセル等の各種試料調製装置(他装置と共用)
- 制御用パソコン(DOS/V系)一式、パルス計数系、各種電源ほか計測系制御には、VSW社/VG社の専用制御ソフト(各機器対応品)を使用している。
3.その他
本装置は、操作に習熟が必要な複合解析装置であるほか、真空の質の維持のため、いくつかのかなりの厳しい制約が設けられている。従って,試料、付加装置を含む実験計画立案の際には、予め担当者との充分な打合せをお願いする。
また、位置敏感検出器による多チャンネル取り込み化を計画中であり、改造後はより短時間に多くのスペクトルがとれるようになる予定である。