多目的2軸X線回折装置(AXS-1)

担当者: 野村 昌治
5659(PHS:4360)
masaharu.nomura@kek.jp


1.概  要

多目的2軸X線回折装置(AXS-1)は、ビームライン上流にモノクロメーターが付設されているBL7Cなどのステーションを利用することを前提としている。本装置の基本構成は、各元素に固有な吸収端近傍で生ずる異常散乱現象を利用する実験を容易にするため、ハンディタイプの半導体検出器が搭載可能なアームを備えた2軸ゴニオメーターで、目的とするエネルギーの散乱強度を取り出して検出するための測定機器も付加されている。詳細は目的とする実験により異なるが、主な物品は以下の通 りであり、本装置の概観を第1図に、稼働させるのに必要なレイアウトの代表例を第2図に示す。


図1. 多目的2軸X線回折装置の概観



図2. 多目的2軸X線回折装置の稼働に必要なレイアウト例




2.構  成

  1. ゴニオメーター部
    2軸精密ゴニオメーター(神津精機 RST6K)
    X−Zゴニオステージ(神津精機 KHI-4)
    ゴニオメータアーム(4象限スリット,SSD搭載用アーム)
    試料ホルダー(ホルダー取り付け金具付)
    入射スリット一式(4象限,DC駆動式スリット(シグマ光機))※
    イオンチャンバー本体(応用光研 S-1194B 18cm)※
    ポータブル半導体検出器(SSD,ORTEC GLP-16195/10-P)
    2軸ゴニオメーターおよびX−Zゴニオメータは、2台のモータードライバー(メレック D-551A)をつなぎ、各ステーションに付設のパルスモーターコントローラー(ツジ電子 PM3C-01)、パーソナルコンピュータ(NEC PC-9801VX41)を介して駆動する。

  2. エレクトロニクス
    散乱強度測定用エレクトロニクスは、通常のシンチレーション検出器を利用する場合と、半導体検出器を利用する場合で異なるが、第2図の例のように半導体検出器を利用する場合、以下の物品が準備されている。
    ビン電源(ORTEC 4001)
    バイアス電源(5keV Detector Bias Supply,ORTEC 459)
    波高分析器(SCA,ORTEC550)3台
    レートメータ(Ratemeter,ORTEC 541)
    4連カウンター・タイマー(Quad Counter/Timer,ORTEC 974)※
    SSD用増幅器(ORTEC 572)2台
※印の物品は各ステーションに付設の機器で、データ取り込みなど測定・制御関係あるいはイオンチャンバー関係はゴニオメータと同様に各ステーションに設置されている機器を流用する。


3.その他

固体試料に対しては本装置のみで測定が可能であるが、液体試料を対象とする場合、シンクロトロン放射光の方向を曲げ、試料の自由液面に一定の角度をもって入射する入射角制御用ゴニオメータを付設することにより測定可能となる(第3図参照)。


図3. 多目的2軸X線回折装置の特殊な使用例(高温液体試料測定)


ハードならびにソフトウエアの使い方を含む本装置の利用法の詳細は、「多目的2軸X線回折装置(AXS-1)利用の手引」として、具体的な測定例を含め40頁の冊子としてまとめられている。


4.参考文献

  1. 早稲田嘉夫:PFニュース,7, No2 (1989),p.13.