BL−10A 垂直型四軸X線回折装置

ビームライン担当者: 山崎裕一
6027(PHS:4941)
yuichi.yamasaki@kek.jp



1.概  要

BL−10Aでは、水平分散型モノクロメータからの単色X線を用いて無機単結晶構造解析用回折強度データの収集を中心に無機構造解析を目的としたX線回折・散乱実験が行われている。ビームライン光学系と一体化した四軸回折計が設置されている。ビームラインは,モノクロメータ部,回折計調整架台部,垂直型四軸回折計,X線計数系,計算機制御系から構成される。モノクロメータはSR発光点から12.5m、回折計の中心(試料位置)は,SR発光点から15mである。モノクロメータ部には2種の分光結晶が設置されていて,目的・用途に応じて1個を任意に選んで使用することができる。通常,平板Si(111)及びQz(100)が同時に設置されていて,使用する分光結晶の回折角に応じた任意の波長で実験が可能である。


2.光学系性能

光学系

水平横振り一結晶分光器[Si(111),Si(311),Qz(100)等]

エネルギー領域 5keV〜25keV(2.34A〜0.50A)
   5keV -  6keV Qz(100)
   6keV - 20keV Si(111)(水平方向集光機能も有り)
  20keV - 25keV Si(311)
エネルギー分解能 10-3〜5×10-4
ビームサイズ 0.05mmφ〜1mmφ(スリットによる)
ビーム強度 Al150μmφ単結晶の最強ブラッグ反射S.C.の測定で〜10cps

 

Fig.1 BL-10A optics and diffractometer

 







3.単結晶構造解析用垂直型四軸回折計

BL−10Aハッチ内に設置された回折計は,入射X線の波長に対応して可搬移動する調整架台上に置かれ,その光軸は調整架台制御ソフトにより,入射ビームの光軸と半自動的に一致させることが可能である。四軸回折計は,χサークル内径28mmのユーレリアンクレードルを持ち、回折赤道面が垂直で2θ及びω軸が垂直に回転する垂直型である。回折計の幾何学的配置は W.R.Busing and H.A.Levy(1967),(参考文献1)によっている。ゴニオメータヘッド支持部はIUCr規格であり、ゴニオメータヘッドに載せたときの試料高さが約64mmになるとき最適になるように調整されている。
ビームライン光学系を含む回折計は,GPIBインターフェイスを通じて接続されたMS−DOSをOSとする計算機上の、C言語によって作成された光学系調整−構造解析用回折強度データ自動収集プログラムにより統一的に制御されている。このプログラムでは構造解析用回折強度データ自動収集の他に、散漫散乱強度測定などを目的とした特殊なスキャン方法を実現するためにユーザーが独自のバッチプログラムを組むことも可能となっている。データ収集速度は垂直型のため比較的遅く、最大でも25反射/時間程度である。データはMS−DOSのASCIIファイルで出力される。
試料環境設定装置として、窒素吹き付け型の低温装置(Oxford社 Cryostream Cooler、温度範囲80K〜375K)窒素吹き付け型の高・低温装置(理学電機AFC用高・低温装置改造型,温度範囲100K〜800K)を備えている。


回折計性能

架台調整部 上下移動のための独立な三軸、
回転、並進(モノクロメータ回転角4.5〜16.5度に対応)
四軸回折計 角度範囲
2θ    :−115〜150度
 ω    : −50〜 65度
 χ、φ  :自由回転

角度設定精度
2θ、ω  :0.005度
1:10ギヤリデューサー取り付け可能
 χ、φ  :0.01度

最高回転速度
2θ、χ、φ:約900度/分
ω     :約500度/分

付属品等

4.その他

取り扱い説明書有り(参考文献 3)

5.参考文献

  1. W.R.Busing and H.A.Levy(1967),Acta. Cryst. 22, p457
  2. Photon Factory Activity Report 1982/83 V-7(1984)
  3. M.Tanaka and S.Sasaki, (1993) KEK Internal 93-4