BL-11D 軟X線光学素子評価装置用ステーション

担当者: 間瀬一彦
4440
masepost.kek.jp

 


1. 概要

 BL-11Dは真空紫外から軟X線領域の光を用いて固体及び固体表面の光電子分光を行うために設計されたビームラインでしたが、光電子分光実験装置がアンジュレータ光源のビームラインBL-13Aに移設されたことに伴い、2010年からは光学素子評価用ステーションとして利用されております。また、小型の持ち込み装置であれば、光学素子評価用装置の下流に設置してBL-11Dを利用いただくことも可能です。BL-11Dに設置されている斜入射回折格子分光器は広いエネルギー領域をカバーできるような設計として、等間隔直線刻線の球面回折格子を用いた可変偏角型分光器(負固定入射長―正固定出射長)を採用しています。回折格子は4つまで搭載可能ですが、現在は高エネルギー用の G1(R=55.21m)と低エネルギー用のG3(R=22.945m)の2つが搭載されています(いずれも刻線密度は2400 l/mm)。図1はBL-11Dの光学系の概略図です。入射スリット(S1)を通過した光は集光鏡(Mf)、平面鏡(Mp)、回折格子(G)を経て出射ス リット(S2)に至ります。このとき、エネルギースキャンがMp, G双方を回転させることで行なわれることがBL-11Dの特長です。この部分のより詳しい概念図を図2に示します。


図 1:BL-11Dの光学系の概略図。数値は光源からの距離。

 





図 2:BL-11DのMp-G部分の概念図。

2. 性能

光学系入射スリット+集光鏡+平面鏡+球面回折格子+出射スリット
エネルギー領域 200〜900eV (G1), 60〜245eV (G3)
分解能 E/ΔE ~ 2000(G3, Slits 200μm×100μm時)
ビームサイズ 1 mm (H)×0.1 mm (V)
ビーム強度 ビーム強度 1.2×1010 光子/秒(G3、Slits 200μm×100μm at 130eV, 450 mA時、図3参照)


 

図3

 

3. 反射率計

図4には、回折格子や多層膜の反射率などを測定できる光学素子評価装置の概念図を示します。

  1. 入射角は5度から89度までの反射率測定が可能です。
  2. 検出器の回転アームは200mmと比較的長いので、入射ビームを絞ること、細い検出器スリットを用いることにより、角度分解能は0.1度以下での測定が可能です。
  3. サンプルステージには最大200mmφの試料が載せられます。小さな試料を複数個載せることも可能で、PC制御により一度の仕込みで一気に測定することができます。
  4. 真空槽の到達真空度は1x10‐5Pa以下です。2台の800L/sのTMPが設置されており、排気開始後数時間で測定を開始することができます。
  5. 詳しいことは担当者までお問い合わせ下さい。



図4.回折格子や多層膜の反射率などを測定できる光学素子評価装置の概念図。


4. 持ち込み装置例


小型の持ち込み装置であれば、反射率計をBL-10側にスライドしてビームダクトを設置し、反射率計架台の下流に装置を設置してBL-11Dを利用いただくことも可能です(図5)。詳しいことは担当者までお問い合わせ下さい。

 


図5.持ち込み装置例(左)と接続部(右)。

 

5. 参考文献

 [1] Photon Factory activity Report 1997 #15 (1997) A101.



Last modified : 2013-04-8