BL-14A 単結晶構造解析・検出器開発ステーション
担当者: 岸本 俊二
6108(PHS: 4439)
syunji.kishimoto@kek.jp


1.概 要


本ステーションは垂直ウィグラーを光源とし、垂直に偏光した5keVから80keVという広いエネルギー領域のX線を取り出すことができる。18keV以下のエネルギー領域では、シリコン111結晶による二結晶分光装置と収束全反射ミラー装置によってX線を試料位置に集め、実験ハッチ内に設置された水平型四軸回折計を使って精密構造解析などのX線回折実験が行われる。また、回折計アライメント架台上の下流側に設置される電離箱により、EXAFS測定を行うことができる。集光はできないが、シリコン311または553結晶で分光した20keV以上の高エネルギーX線を使えることが本ステーションの特徴であり、広いエネルギー領域を利用して新しいX線検出器の開発研究も行われている。

 

2.性 能

光学系1) 二結晶分光器(Si111,311,553), 疑似トロイダルミラー(Si111領域のみ)
エネルギー領域 Si111 : 5.1-18.5 keVSi311 : 9.9-35.4 keVSi553 : 23.0-82.7 keV
分解能 2 x 10-4(Si111)
ビームサイズ (H)2 x(V)1 mm以下(ミラー使用時)、(H)5 x(V)35 mm(max.)
ビーム強度 1 x 1011 photons/s・mm2 (Si111+ミラー, max.)

 

 

3.水平型四軸X線回折装置

(W)2.4x(L)2.4x(H)2.5mのハッチ内には、水平型四軸回折計が設置されており、アライメント架台によりミラー挿入および分光器のみの配置のいずれにも光軸調整が可能となっている。四軸回折計は、χサークル内径280mmの φ軸オンセンタータイプで、その試料位置は発光点から約30mである。

・角度範囲 : 2θ=-140°〜 +160°, ω=-60°〜 +70°
       χ= -168°〜 +168°, φ= -180°〜 +180°

・駆動速度 : 2θ 1000°/min., ω 500°/min., χおよびφ 2000°/min.

・角度制御精度 : 2θ 0.005°, ω 0.0025°, χおよびφ 0.01°

・検出器系 :
  1.NaI(Tl)シンチレーション検出器(φ25mm,1.5&5mmt)

  2.YAP:Ceシンチレーション検出器(φ25mm, 5mmt)

  3.シリコン・アバランシェフォトダイオード検出器参考文献2
    (右写真。8チャンネル積層型。精密構造解析測定用)

  4.気体電離箱(入射側および受光側各1台、
    18.5および32.5cm長。
    フローガス:N2, N2/25%Ar, Ar, Kr, Xe)

  5.HP-Ge検出器(CANBERRA GL0110P、10mmt)

8チャンネル積層型APD検出器


・制御 :回折計の制御はパーソナルコンピュータ(Windows)から
GP-IBを介してVisualFORTRAN/C言語プログラムによる(新規準備中)。データ収集はCAMACシステムにより行われる。検出器開発実験の際は別途、LabVIEW(GP-IB)による光学系(分光結晶切り替え、ミラー調整を含む)、架台、および自動ステージ等の制御プログラムが用意されており、5-80keV領域でのエネルギー変更・ビーム調整が比較的短時間で可能である。

・回折計cサークルの下流架台上には小型光学ベンチ(50mm角)が設置できる。光学ベンチ上で小型検出器の評価やEXAFS測定が可能である。比較的大きな2次元検出器等の実験の場合は回折計下流側のスペース(約1m)に小型定盤を設置して実験を行う。検出器への入射ビームサイズ、強度は精密四象限スリット、金属フィルタを使って調整できる。

・EXAFS測定のためのヘリウムガス循環型冷凍機(温度範囲15−300K)が光学ベンチに合わせて設置できる。

 

4.実験例

・水平型四軸X線回折計と高計数率APD検出器による微小単結晶の精密構造解析(参考文献3)

・高エネルギーX線用検出器の開発および評価実験(参考文献4)

・垂直偏光や高エネルギーX線を利用した触媒材料などのEXAFS測定(参考文献5)

(参考文献)
1. Y.Satow and Y. Iitaka, Rev. Sci Instrum. 60 (1989) 2390.
2. S.Kishimoto, N.Ishizawa and T.P.Vaalsta, Rev. Sci. Instrum. 68 (1998) 384.
3. 石沢伸夫、日本結晶学会誌42 (2000) 155.
4. S.Kishimoto and T. Yamamoto, Nucl. Instr. and Meth. A508 (2003) 425.
5. K. Asakura, W.-J. Chun and Y. Iwasawa, Topics in Catal. 10 (2000) 209.


Last modified: 2005-04-08