BL20A 3m直入射型分光器

担当者: 足立純一
5594(PHS:4348)
jun-ichi.adachi@kek.jp


1.概  要

本分光ラインは真空紫外領域でも比較的低いエネルギー領域をカバーする。偏向電磁石からの放射光を用いるが、取込み角が大きいため大強度であること、単色性の高いビームを供給できることが、このビームラインの特徴である。図1には光学系を示す。放射光は2枚の前置鏡によって入口スリット(S1)に導かれ、曲率3mの球面回折格子によって分散され、出口スリット(S2)から出射される。2枚の後置鏡によってFPに集光される。


             図1.BL−20A 3m直入射型分光器光学系の概略図


2.性  能

光学系添付図参照
エネルギー領域5−40 eV(注1)
分解能3万(注2)
ビームサイズ3mm(H)×1mm(V)
ビーム強度1012photons/sec(注3)


注1)エネルギー範囲:回折格子の刻線密度によって、カバーする波長範囲が異なる。
 回折格子(刻線密度:1200本/mm):30−250 nm
 回折格子(刻線密度:2400本/mm):30−120 nm

注2)到達最高分解能(E/ΔE):約3×104 (@100 nm)、線分散:0.14 nm/mm(2400本の回折格子)、0.28 nm/mm(1200本の回折格子)

注3)光強度:図2に1200本/mmの回折格子について示す。

図2.1200本/mmの回折格子で得られる光強度。スリット幅は入口および
   出口ともに1mm。この条件での分解能は2.5A程度である。


3.実験ステーションの研究成果

主として、原子分子の孤立系を対象とした研究が行われている。以下に、その例を挙げる。

1)イオンの運動エネルギー測定を対象とするもの
Dissociative photoionization of H2 and D2 in the energy region of 25 - 45 eV, K. Ito, R. I. Hall and M. Ukai, J. Chem. Phys., 104, 8449 (1996):Photoionization of argon, krypton and xenon clusters in the inner valence shell region, R. Thissen, P. Labalnquie, R. Hall, M. Ukai and K. Ito, Eur. Phys. J., D4, 335 (1998).

2)しきい電子分光およびPFIZEKE分光に関するもの
Ground and excited states of Xe2+ observed by high resolution threshold photoelectron spectroscopy of Xe2,Y. Lu, Y. Morioka, T. Matsui, T. Tanaka, H. Yoshii, R. I. Hall, T. Hayaishi and K. Ito, J. Chem. Phys., 102, 1553 (1995):Rotationally resolved ZEKE spectra of the X2Sg+ (v+=0 to 3), B2Su+ (v+=0) and C2Su+ (v+=0) states of N2+, T. Aoto, H. Yoshii, T. Hayaishi and Y. Morioka, Phys. Scr., 65, 139 (2002).

3)イオン−電子のコインシデンス測定
Inner-valence states of O2+ and dissociation dynamics studied by threshold photoelectron spectroscopy and configuration interaction calculation, Y. Hikosaka, T. Aoto, R.I. Hall, K. Ito, R. Hirayama, N. Yamamoto and E. Miyoshi, J. Chem. Phys., 119, 7693 (2003).

4)発光測定
State-to-state behavior in the neutral dissociation of O2 far beyond the ionization threshold. M. Ukai, S. Machida, K. Kameta, M. Kitajima, N. Kouchi, Y. Hatano and K. Ito, Phys. Rev. Letters, 74, 239 (1995).



4.そのほか

1)PF98計測システムによる(文献2)。分光器波長駆動、基本的なマルチチャンネル・スケーリング、波高分析等の測定が可能である。

2)本実験ステーションは中二階デッキ上に設置されており、実験装置はクレーンにより吊り上げることができる。

3)実験装置等が設置できるスペースとしては、ビームに向かって左側約1m、右側2m、長手方向に3m程度、高さは2.5m程度が望ましい。詳細については担当者に相談されたい。


5.参考文献


1. K. Ito et al., Rev. Sci. Instr., 66, 2119 (1995).
2. 早石 達司、「PF98計測システム」



Last modified : 2013-04-18