BL-28A/B 可変偏光VUV・SX不等間隔回折格子分光器

BL-28A   高分解能角度分解光電子分光実験ステーション
BL-28B   高分解能可変偏光真空紫外・軟X線ビームライン

担当者: 小野寛太
5659(PHS:4205)
kanta.ono@kek.jp



1. 概要

BL-28は可変偏光アンジュレータからの放射光を利用したビームラインで、真 空紫外・軟X線領域の 30〜300 eVのエネルギー範囲をカバーしています。
主として高分解能角度分解光電子分光実験を高スループットで行うことを目指 して、2004年の夏期シャットダウンに建設を行いました。高分解能角度分解光 電子分光実験を行うにあたっては、分光器は高分解能であるばかりでなく高フ ラックスであることが重要です。そこで、可変偏角不等間隔平面回折格子分光 器を採用しました。この分光器の特徴は、入射スリットレスであるため高い光 子フラックスが得られること、可変偏角メカにより広いエネルギー範囲にわ たって高分解能での分光を実現できることです。また、将来のアンジュレータ 更新後にもそのまま使うことが出来る仕様になっています。

 

2. 性能

分光器は、不等間隔平面回折格子を用いた可変偏角Monk-Gillieson型分光器で ある[1]。BL-28の分光器では、高いエネルギー分解能と高い光子フラックスと を両立するために入射スリットの無いレイアウトになっている(図1)。ま た、超高真空中に設置した高精度ロータリーエンコーダにより、ミラーおよび グレーティングの角度を直読する機構を備えている。ビームライン制御は、 ロータリーエンコーダの角度を読むためのVMEシステム、および偏角・グレー ティング角を制御するためのサーバで行っている。エンドステーションからは ネットワーク経由で制御サーバに接続して制御を行う。エンドステーション側 での制御はLabVIEWを用いて行っている。

図2にビームラインの写真を示す。ビーム高さは1,217mmとなっている。図3 および図4はKr および Ar の光イオン化スペクトルをそれぞれ示す。Kr の光 イオン化スペクトルから、エネルギー分解能 ΔE < 10 meV であることが分かる。図5、6にそれぞれHe, Arの光イオン化スペクトルを示す。65 eV付近で3 meV、30 eV付近で<1 meVと高い分解能を実現できていることが分かる。また、最高分解能で使用する場合の光子束は 1011〜1012 photons/secであ り、高いエネルギー分解能と高い光子フラックスが両立出来ていることが分かる(図7)。



                           図 1

 

図2にビームラインの写真を示す。ビーム高さは1,217mmとなっている。図3および図4はKr および Ar の光イオン化スペクトルをそれぞれ示す。Kr の光イオン化スペクトルから、エネルギー分解能 ΔE < 10 meV であることが分かる。また、このときの光子フラックスは 1×1012 以上であり、高いエネルギー分解能と高い光子フラックスが両立出来ていることが分かる。

                        図 2

 

図 3

 

図 4

 

図 5

 

 

                                図 6

 

                   図 7 


3.高分解能角度分解光電子分光実験ステーション

高分解能角度分解光電子分光実験ステーションは、Gammadata Scienta製電子 分析器SES-2002を中心としたシステム(CCDカメラはデジタル取り込みにアッ プグレード済)(図8)であり、現在では40 eVの光子エネルギーで光電子の 全エネルギー分解能6meVを達成している。通常の角度分解光電子分光実験で は、主に15 meV 〜25 meVのエネルギー分解能で実験が行われている。また、 産業技術総合研究所で開発された低温多自由度マニピュレータ(iGonio-LT)を 導入しており、試料温度5K〜300Kでの角度分解光電子分光実験が可能である。また、実験ステーションは測定槽、準備槽、試料導入槽からなっており、 試料槽を超高真空に保ったままでの試料交換が可能になっている。

 

                   図 8

 

4.BL-28Bブランチ

一方、光電子顕微鏡、原子・分子分光実験などのユーザ持ち込み装置での実験 に対応するため、2006年夏期シャットダウン期間にBL-28Bブランチの建設を 行った。BL-28Bブランチでは、BL-28分光器の下流に設置した平面ミラーで BL-28Bに光を導入している。このため、BL-28AとBL-28Bは排他的な利用となる。


5.文献

[1] K. Amemiya and T. Ohta, J. Synchrotron Rad. 11, 171 (2004).




Last modified: 2006-12-18