BL16A2 六軸X線回折計用実験ステーション
1.概 要
本ビームラインは、53極ウィグラーからの大強度の光を上流ミラーでX線と
VUV・SXビームラインに分岐して、タイムシェアリングしている。
X線ラインはさらに、BL16A1とBL16A2がタンデムになっており、
本ステーションはそのエンドステーションである。
本ステーションは、精密X線回折・散乱実験を行う専用ステーションである。
HUBER社製5020型の6軸X線回折計が常時設置されている。本回折計の仕様から、
結晶の逆格子空間を広く走査する結晶構造解析的な実験よりは、温度・圧力などの外場条件を変えながら、逆格子空間の一部を高分解能・
高精度で測定する構造物性的な実験に適している。現在の本ステーションを
利用した研究の一部は以下のようなものである:
1.遷移金属酸化物の電荷・軌道の秩序状態の研究、
2.スピンパイエルス相転移の外場依存性の研究、
3.人工格子又は薄膜の構造的研究、
4.X線磁気散乱によるスピン構造の研究
2.ビームラインの性能
BL16A1ステーションの項を参照。
3.実験装置
- 回折計(HUBER社製5020型):本回折計は通常のものより一回り大きく、
角度設定精度が高い。通常の四軸に加え、散乱X線をアナライザー結晶によって
回折させるための二軸を2θアーム上に備えている。高分解能実験のために、
ω-2θ円は放射光の偏光面に対して垂直な面内に配置されている。
χ円はω-2θの中心軸より63mm離れた、off-centerの位置にあり、
クライオスタットなど試料位置周りに種々の装置を容易に装着できるように
なっている。
- 偏光解析装置:散乱X線を、入射X線と散乱X線の張る散乱面から
垂直方向に回折させることによって、散乱X線の偏光状態を知ることができる。
本装置はそのために必要なすべての機能を備えている。磁気秩序や軌道秩序からの
回折線の偏光特性を調べることに利用されている。ステーションで用意している
分光結晶は、Ge(111), Graphite(002), Cu(110), Mo(100), Pt(100) である。
その他必要な結晶はユーザーが各自用意する
- 検出器系:通常は、入射X線のモニターにはイオンチェンバーを、
散乱X線の検出にはシンチレーションカウンターを用いている。
また、簡便にイメージングプレートを2θアーム上に装備することができる。
- 制御系:コンピューター:DELL、
OS:Linux (Vine)、インターフェース:VME、制御ソフト:SPEC(CSS社製)
によって、モノクロメーター・回折計・架台・検出器系・スリット・
アテニュエーター・温度コントローラーを制御している。試料設置後は、
簡単なマクロを書くことにより、エネルギーや温度などを変化させて、
すべて自動測定を行うことができる。測定中の状態は、
ネットワークを通じてモニターすることもできる。
- データ解析・転送:実験中に、制御ソフトSPECに組み込まれた
C-PLOTにより簡単な解析は行える。データはネットワークを通じて
各ユーザーのPCに転送できる。
- 附属装置類:低温実験のためには、通常、JT型クライオスタット
(温度領域:7K<T<300K)が使用される。さらに低温に下げたい時は、
Heフロー型クライオスタット(温度領域:2.5K<T<300K)が使用される。
高温での回折実験は、
高温用電気炉(温度領域:300K<T<1300K)が利用できる。
さらに、ダイヤモンドアンビルをJT型クライオスタットに装着できる
低温・高圧用装置が利用できる。これにより、低温・高圧を組み合わせた
極限条件下での放射光X線回折実験が可能になる。
4.その他
制御ソフトSPECと解析ソフトC-PLOTのマニュアルはステーションに備えてある。
本ステーションの回折計は、BL4Cにある
回折計や附属装置と互換性があり、ほぼ同じ条件下で実験を行うことができる。
その違いは、本ステーションの光源は53極ウィグラーの挿入光源であるのに対し、
BL4Cの光源はベンディングマグネットである。ユーザーには両ビームラインの
適切な利用のために、担当者と密接にコンタクトを取ることが望まれる。
高エネルギー加速器研究機構
放射光実験施設
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Last modified : 4 Jan, 2003