文部科学省「先端研究施設共用イノベーション創出事業」

【産業戦略利用】

 

 

 

 

 

フォトンファクトリーの戦略的産業利用

 

利用課題募集要項

 

PFPhoto

 

大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構

物質構造科学研究所

放射光科学研究施設

2008年1月

 

 

「フォトンファクトリーの戦略的産業利用」

平成20年度利用課題募集要項

 

1.事業の概要

フォトンファクトリー(高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所 放射光科学研究施設)では、文部科学省の委託事業「先端研究施設共用イノベーション創出事業」【産業戦略利用】の一環として、「フォトンファクトリーの戦略的産業利用」事業(http://pfwww.kek.jp/innovationPF/index.html)を行っています。これは、フォトンファクトリーの先端研究施設を産業界の研究開発に活用していただき、戦略的技術課題にブレークスルーをもたらすことを目指すものです。

特に、これまで放射光利用の経験がない企業の方にも容易に利用いただけるよう、専任のスタッフが研究計画の策定、実験操作、データ解析等の支援を行います。また、これらの支援、および研究施設の利用に関し、費用の負担はありません。

以下の要項に沿って、産業界からの利用課題の提案を募集します。

 

「先端研究施設共用イノベーション創出事業」【産業戦略利用】は、平成19年度から文部科学省が開始した事業で、大学、独立行政法人等の先端的な研究施設・機器の共用を通じて、産学官の研究者による戦略的かつ効率的な研究開発や、研究機関や研究分野を越えた横断的な研究開発活動を促進することにより、イノベーションにつながる成果を創出することを目指しています。詳しくは以下のWebページをご参照ください(http://kyoyonavi.mext.go.jp/info/about02)。

 

2.フォトンファクトリーの概要

                                    

 

 

PF平面図
PF-AR平面図

 

*画像をクリックすると平面図が拡大します。

 

フォトンファクトリーはその名の通り光の工場で、10eV程度の真空紫外光から数十keVの硬X線までの広いエネルギー領域の放射光を利用出来る放射光研究施設です。1982年から大学共同利用を開始し、PF(蓄積電子エネルギー2.5GeV)とPF-AR(蓄積電子エネルギー6.5GeV)の二つの放射光源を利用して、年間約700件の共同利用課題が実施されています。産業利用に関しては、1980年代前半より4本の企業専用ビームラインを設置する等して産業利用制度を整備してきました。現在では約50件の産業利用がなされており、大学等の共同利用と合わせて3000人を越える国内外の研究者に利用され、世界的にも優れた研究成果を上げています。

フォトンファクトリーには66の実験ステーションがあり、蛍光X線分析、X線吸収微細構造(XAFS)、イメージング(トポグラフィー、ラジオグラフィー等)、単結晶構造解析、粉末X線回折、タンパク質構造解析、高圧下でのX線回折、X線小角散乱、光電子分光、光電子顕微鏡等、バラエティに富んだ実験を行うことが可能です。

 

3.本事業で使用する主な実験手法

本事業では蛍光X線分析、XAFS、イメージング(トポグラフィー、ラジオグラフィー等)を主なツールとして使用することを想定していますが、これら以外の手法の利用についてもご相談に応じます。

本事業で主に使用する実験手法の概要は以下の通りです。

【蛍光X線分析】 BL-4A

内殻電子の励起に伴う蛍光X線を測定することにより、元素分析や化学状態分析を行う手法です。X線管を線源とする実験室系の装置に比べ、分析感度が数10~10,000倍程度高いため、fgオーダーの微量試料やppbオーダーの微量元素の分析、あるいは約5ミクロン角の微小領域分析や元素マッピングが可能です。

 

【XAFS】 BL-7C、9A、9C、12C、NW2A、NW10A

原子の吸収端近傍のX線吸収スペクトルの微細構造を解析することにより、特定の原子の電子状態やその周りの構造を調べる手法です。試料の状態(気体、液体、固体、結晶、非晶質等)によらず、イオウ以上の重元素なら大気中もしくはヘリウムガス中で測定できます。条件が良ければリンも同様に測定可能ですが、それより軽い元素は、真空中の測定となります。また、触媒等の反応進行中の状態を実時間追跡することも可能です。

吸収スペクトルの代わりに蛍光X線でXAFS測定すると、ppmから10ppmオーダーの微量成分の解析が可能になります。また、放出電子で測定すると、比較的表面の情報を得ることができます。

 

【トポグラフィー】BL-15B1、15C

ブラッグ反射を用いて、結晶内部の2次的構造(転移、欠陥、格子歪み等)の分布を画像化して観察する手法です。空間分解能はX線CCDカメラでは15ミクロン程度、原子核乾板では数ミクロン程度です。大強度の放射光を線源として利用することにより、動的な変化を実時間で観測することも可能になっています。

 

【ラジオグラフィー】BL-14B、14C1、NE5A

試料によるX線の吸収や位相シフトを利用して、試料内部の構造を画像化して観察する手法です。トモグラフィ(CT)と組み合わせることにより、試料の断層像や三次元像を得ることができます。工業材料や生体軟組織などの非破壊観察に役に立ちます。

 

各実験ステーション(ビームライン)で行える研究内容や、その機能・性能についてはhttp://pfwww.kek.jp/users_info/station_spec/index.htmlをご参照ください。

 

4.募集研究分野の概要

この事業は戦略分野利用推進と新規利用拡大の二通りの利用メニューからなっています。

戦略分野利用推進は、国家的・社会的課題にかかわる技術分野を戦略分野として設定し、その分野において研究開発のリスクが高く、社会的・経済的インパクトが大きな技術課題を解決してイノベーションをもたらすことを目指す産業界のフォトンファクトリー利用を支援するものです。

新規利用拡大は、これまでフォトンファクトリーの利用実績がない企業や研究分野に対して、フォトンファクトリーの新規利用を支援するもので、新たな産業利用に発展する可能性を期待しています。

 

戦略分野としては、以下の四つの領域を設定しています。

 

1)放射光によるエネルギーイノベーション

・環境特性に優れ、エネルギー資源の消費を抑える燃料電池、二次電池等の開発

・石油資源有効活用のための精製・転換・クリーン化技術

・石炭をクリーンに利用するための技術

等のエネルギー問題に関係する材料、触媒反応、電気化学反応等を、XAFS等の手法を用いて実反応条件下で解析することにより、これらの課題にイノベーションをもたらそうとするものです。触媒金属そのもののほか化石燃料中のイオウ等の解析も可能です。

 

2)放射光による材料創成イノベーション

・環境負荷低減のための排ガス浄化触媒材料など

・希少・不足資源の枯渇に対処するための電極や触媒などの新規材料

・情報通信技術の高度化を支えるディプレイ、ストレージ、光スイッチなどの基幹部品材料

等、新材料の分析・評価や反応機構の解析等を蛍光X線分析、XAFS等の手法を用いて行い、新規材料開発にイノベーションをもたらそうとするものです。

 

3)放射光による環境イノベーション

・廃棄物の無害化や土壌修復などの未来型廃棄物処理技術

・廃棄物処理や3R(Reduce, Reuse, Recycle)のための分析技術

・重金属等の環境汚染物質の無害化技術

等において、有害物質や環境汚染物質の起源、循環、蓄積等を、蛍光X線分析、XAFS等を用いて明らかにすることにより、これらの環境評価、環境浄化技術開発にイノベーションをも たらそうとするものです。

 

4)放射光X線を用いたイメージングによるイノベーション

・電子材料中の欠陥の観測

・生体軟部組織等のイメージング技術

等、吸収・屈折・位相イメージングを用いた各種電子材料や生体試料等の可視化や、X線回折顕微鏡を用いた欠陥の評価を行い、新しい電子材料開発や医療へ向けた基礎研究にイノベーションをもたらそうとするものです。

 

5.利用の方法

(1)利用者、利用課題、利用期間

・利用者は産業界(単独の企業、複数企業の共同、もしくは業界コンソーシアム)とします。

共同研究者として大学や独立行政法人等を含むこともできますが、「4.募集研究分野の概要」に記載のように、産業応用を主な目的とするものとします。

利用者単独による利用、および利用者とフォトンファクトリーの共同研究のいずれも可とします。

 

・利用課題は、平和利用を目的とし、「4.募集研究分野の概要」に記した戦略分野、もしくはそれ以外の新規の研究分野に該当するものとします。

研究のフェーズとしては、技術課題に対する放射光利用の有効性を検証するまでとします。

本事業の成果に基づき、さらに定常的な材料評価や製品開発等の事業活動にフォトンファクトリーを利用しようとする場合は、別途有償の施設利用制度や共同研究制度に移行していただきます。

 

・利用有効期間は、戦略分野利用推進では、採択後最長で1年とします。さらに利用を延長する場合は、再度申請していただき、審査・採択後、さらに最長1年間、利用有効期間を延長することができます。新規利用拡大では、放射光の新規利用の有効性を確認するために行う一連の実験を1回とし、利用回数2回までとします。

 

(2)利用可能な時期

放射光源の稼動期間は、年度に依って多少の前後はありますが、概ね以下の通りです。

4月初旬から下旬、5月中旬から6月末

9月下旬ないし10月初旬から12月中下旬

1月中旬から3月上旬

上記期間中、1日24時間、週7日体制で連続運転されます。通常、月曜日は加速器の調整等に充てられ、火曜日朝から月曜日朝までが放射光利用実験に充てられます。

運転スケジュールはhttp://pfwww.kek.jp/unten/titlej.htmlの他、Photon Factory News(Webページは、http://pfwww.kek.jp/publications/pfnews/index.html)に掲載されます。

 

(3)支援内容

利用者は、提案課題の研究実施に適した既存の実験ステーションを利用でき、そのためのビームタイムが配分されます。

本事業遂行のため、専任の共用促進リエゾン、および共用技術指導研究員を配置します。共用促進リエゾンは、産業界への相談窓口として、企業等のニーズを把握し、フォトンファクトリーの技術シーズとのマッチングを図るとともに、共用技術指導研究員やフォトンファクトリー研究者とも相談の上、提案課題の実施方法を調整します。

共用技術指導研究員は、利用者の必要に応じて、実験計画の策定、試料準備、試料環境準備、実験装置操作、測定、データ解析・解釈等の支援を行います。

 

(4)利用料金

前項記載の支援、および施設利用に関する費用は本事業が負担しますので、利用者の負担はありません。ただし、フォトンファクトリーでの実験実施者は、放射線業務従事者となっていただく必要があり、そのために必要な特別健康診断等の費用は利用者にご負担いただきます。

 

(5)知的財産権の取り扱い

利用者が本事業により単独でなした特許等の知的財産権は、原則として利用者帰属とします。

フォトンファクトリー研究者との共同による知的財産権については、大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構知的財産取扱規程(平成16年4月1日 規程第16号)に基づき対応します。

利用成果が特許出願、特許取得、製品化、論文、外部での発表等につながった場合は、速やかにその概要を報告していただきます。

 

(6)利用成果の報告

利用課題終了後、利用報告書(A4用紙 2頁程度、和文ないし英文)を提出いただきます。

報告書に記載する内容については、添付の「利用報告書作成要領」をご参照ください。

この報告書は原則公開とします。ただし、利用者が外部発表や特許取得等の理由により公開の延期を希望する場合には、理由の妥当性の審査を経て、最長2年間の公開延期が認められます。

報告書に記載された内容は、啓蒙・宣伝活動等に利用させていただくことがあります。

適宜、利用報告会を開催させていただきます。

 

(7)終了後の評価

利用を終了した課題について、フォトンファクトリー内に設ける評価委員会において評価を実施します。

評価基準は別途規定しますが、研究が順調に進捗して所期の目標を達成し、イノベーション創出に寄与する可能性のある成果が得られたかどうか、ということが評価の主点となります。

 

6.募集の概要、採否の決定

(1)募集時期

定期募集: 応募のための相談は常時受け付けますが、募集は年3回に分けて締め切り(1月末、6月末、10月末の予定)、審査をして採否を決定します。

今回の募集は、平成20年1月31日に締め切り、4月中旬から利用可能となります。

次回の募集は、平成20年6月末に締め切り、同9月下旬ないし10月上旬から利用可能、次々回は、10月末に締め切り、21年1月中旬から利用可能となる予定です。

 

随時募集: ビームラインによっては、緊急の利用に充てるべく予め留保ビームタイムを確保しておきますので、随時受け付けし、実施までの時間短縮を図ることが可能です。緊急利用のご希望がある場合は、ご相談下さい。

 

(2)応募方法

添付の「フォトンファクトリーの戦略的産業利用」課題申請書に記入し、下記連絡先の共用促進リエゾン宛てに電子メール添付ファイルにより提出して下さい。

課題申請書様式は下記Webページからダウンロードすることもできます。

http://pfwww.kek.jp/innovationPF/index.html

応募に先立ち、共用促進リエゾンにご相談いただくことをお勧めします。

 

共用促進リエゾン連絡先

氏名: 阿刀田伸史

E-mailmailto:natoda@post.kek.jp     電話:029-864-5298

 

課題申請書の作成に当たっては、添付書類3「課題申請書作成ガイドライン」をご参照ください。

このガイドラインは、放射光利用による研究手法や、フォトンファクトリー実験施設(ビームライン)の機能・性能等について十分な知識がある場合を想定しています。

これらに関する知識や経験が乏しい場合は、先ず共用促進リエゾンにご相談ください。解決しようとする技術課題に対する有効な研究手法や実験の進め方等の検討、およびそれに基づく課題申請書記載内容の具体化について、フォトンファクトリーのスタッフがお手伝いします。

 

(3)応募課題の審査

ォトンファクトリー内に設ける課題審査委員会にて応募課題の選定を行います。

審査委員会は、中立的立場の外部有識者委員とフォトンファクトリー側委員より構成されます。

審査委員は、審査を通じて知り得た情報に関し、守秘義務を負います。

申請者には、審査に必要な追加情報の提供をお願いすることがあります。

審査に当たっては、課題申請書について以下の点から評価します。

1) 技術開発上の価値、産業育成上の価値、社会的なニーズ

2) フォトンファクトリー利用の必要性、技術的な実行の可能性

3) 合目的性(平和目的、戦略分野との整合性、イノベーションに資する点等)

4) 実験内容の安全性

そのほか、実験組織の能力や意欲も、採択の要件として考慮されます。また、採択件数は、フォトンファクトリー全体としてのビームタイムの需給関係や、本事業の予算規模等も勘案して決定されます。

 

(4)守秘義務

フォトンファクトリーの本事業関係者は、応募課題や審査に関わる情報に関し、守秘義務を負います。また、提出いただいた課題申請書および関連資料は、審査の目的のみに使用し、公表することはありません。

ただし、採択された利用課題名および利用者名は、文部科学省に報告するほか、機構(KEK)やフォトンファクトリーのホームページに掲載する等により、公表させていただくことがあります

 

7.その他

 

フォトンファクトリーにて実験を実施される方は、機構およびフォトンファクトリー所定の管理規程等に従っていただきます。

実験実施者への旅費・宿泊費等の補助はありませんが、構内にある共同利用研究者宿泊施設を利用することができます。

本事業への応募により提供された個人情報は、審査その他の本事業実施のためにのみ使用し、それ以外の目的に使用することはありません。

 

★申請・報告書関係

1: 利用報告書作成要領

2: 課題申請書書式

3: 課題申請書作成ガイドライン

 

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