2009S2-007
有機分子−電極系の構造・電子状態と電荷移動ダイナミクス

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●基本情報
 ●実験責任者:吉信 淳(東大)
 ●課題有効期間:2009/10〜2012/9
 ●実験ステーション:13A
 ●関連課題:2006S2-002(コインシデンス分光による内殻励起、オージェ緩和、イオン脱離の研究)
       2012S2-006(エネルギー変換材料の表面界面物性:VUV/SX放射光分光による研究)

●課題の概要
 近年,有機分子を用いたデバイスの研究開発が活発に行われその特性は飛躍的に向上したが,一方,有機分子-電極界面の物性がデバイス動作に大きな影響を及ぼすことがわかってきた.有機分子-電極系の電子状態は,各物質固有のエネルギー準位はもとより,電極材料と有機分子間の電荷移動,分子配向など様々な要素により決まる.従って界面の電子状態を制御しデバイス特性を改善するためには,原子レベルでの有機分子-電極間相互作用の理解が必須である.しかし現状では,有機分子-電極界面の物理的理解は十分に進んでおらず、デバイスを用いた特性評価が先行しているといえる.
 本申請では,高度化されたBL13アンジュレーター放射光を活かして先端的光電子分光測定を行い,有機分子-電極界面の構造,電子状態さらに電荷移動ダイナミクスを解明することを目的とする.ここで先端的光電子分光とは
1. 高分解能内殻光電子分光(エネルギー分解能ΔE<50meV)
2. 高分解能角度分解光電子分光(ΔE<10meV)
3. Core-hole clock分光(時間分解能:内殻空孔寿命程度(数fs))
4. 放射光励起STM(位置分解能<20nm)
であり,ここ数年PFのいくつかのビームラインを用いて,申請メンバーらがそれぞれ独立して実施・開拓・発展させてきた手法である.本S2プロジェクトにより高度化されたVUV-SXアンジュレータービームライン(新BL13)にこれらの先端的光電子分光を結集させ,有機分子-電極系に対して複合的に適用することにより,この分野での飛躍的な発展をめざす.
 具体的には,有機半導体デバイスや有機太陽電池のモデル系を,良く規定された基板に作製する.有機単結晶薄膜の電荷移動度と密接に結びついているバンド分散や電子格子相互作用を高分解能角度分解光電子分光で調べる.有機分子と電極間の電荷移動については,高分解能内殻光電子分光により知見を得る.電荷移動ダイナミクスについては,Core-hole clock分光により定量的知見を得る.基板に構築された有機分子-電極モデル系や低次元ナノ構造の実空間評価には放射光STMが不可欠のツールとなる.有機分子低次元ナノ構造はバルクの有機電荷移動錯体とも関連が深く,物性物理学の観点からも興味深い系と考えられる.

●成果発表
 ●論文


 ●PF Activity Report

 ●PFシンポジウム

 ●その他