2013S2-003
走査型透過X線顕微鏡(STXM)を用いたサステナブル科学の推進

Last modified 2019-10-30 by s-proposalpfiqst.kek.jp


→関連サイト:PF研究会「顕微分光研究の新展開」(2012/9/13,14)

●基本情報

 ●実験責任者:高橋 嘉夫(広島大院理→東大院理)
 ●課題有効期間:2013/4〜2016/3
 ●実験ステーション:13A、15A、16A

●課題の概要
 STXMは、50 nm以下の高い空間分解能で、炭素をはじめとする軽元素の官能基マッピングなどを大気圧化で測定できるという特徴を持つ、非常にユニークで汎用性やスループットが極めて高い装置である。本研究では、このSTXMを利用することが不可欠とみなせる以下の3つの研究を推進する。
(i) サステナブル物質科学: STXMの特徴を活かし、構成元素ごとの磁区構造を可視化することで、希土類磁石におけるDy添加量の抑制技術について開発の指針を与える。さらにその先には、薄膜の集積化や冶金学的プロセスによりバルクの高性能磁石への発展も期待できる。
(ii) サステナブル環境科学: エアロゾル中の炭素や硫黄、土壌中の炭素などをSTXMで分析することにより、地球温暖化の精密予測が可能になる。特に多元素混合系での炭素の化学種(官能基)解析は、元素選択性の高いSTXMでのみ有効である。また、有害元素・放射性核種の移行解析などにおいても、STXM(特に今回の装置は2-5 keVも対象にできる)が対象とするエネルギー領域に吸収端がある元素では、STXMの高空間分解能を活かした新規な研究が推進できる。
(iii) サステナブル資源科学: 海底の有用資源の探査やバイオリーチングなどによる資源リサイクルは、サステナブル社会実現に直結する課題である。また有機物分析による生物多様性の研究は、生体機能科学の根幹をなすものであり、本研究課題の重要な構成要素である。
 これらの研究は個々に、磁区構造の観察、天然試料中の軽元素の化学種解析、微生物1個体の観察、エアロゾル粒子の個別粒子観察、など、STXMでしか成し得ない分析項目を含んでいる。こうした技術を、応用研究者が装置開発者およびビームライン担当者と共同で発展させながら、ここに示されたサステナブル社会確立における課題に関する研究テーマを推進する。またこの研究を通じて、極めて強力な顕微分光法として日本にSTXMが定着し、新たなサイエンス発展の契機となることが期待される。

●成果発表
 ●論文


 ●PF Activity Report

 ●PFシンポジウム

 ●その他