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●基本情報
●実験責任者:小林 寿夫(兵庫県立大学大学院物質理学研究科)
●課題有効期間:2019/4〜2022/3
●実験ステーション:AR-NE1A
●課題の概要
高温超伝導体や重い電子化合物で観測される多彩でエキゾチックな現象の発現に、磁気モーメント(双極子)よりも高次のモーメント(多極子)が関与する相互作用の重要性が指摘されている。局在電子系では原子に束縛された電子の持つ全角運動量を出発点にした多極子の描像が確立してきている。一方、遍歴電子系では、その結晶対称性に合ったエネルギーバンドを形成するが、電子間の相互作用が強い場合はフェルミ・エネルギー近傍のエネルギーバンドを変形し安定な状態へと変化する。その変化した電子分布は、その結晶対称性とは一致しないため、その分布は波数空間の多極子に対応していると考えることが出来る。実際の物質中での電子の空間分布は、結晶中の局在電子・遍歴電子描像での多極子のイメージの間にある。すなわち、観測されている多彩なエキゾチックな現象と直接関係している多極子(軌道)秩序とその揺らぎを、相互作用を制御しながら微視的手法により実験的に観測して、その対称などを議論することが必要である。
しかし、相互作用をクリーンに制御する圧力を基軸とした多重極限環境下では、そのような微視的測定手法は存在しない。そこで、本申請課題ではまず、遷移金属3d電子の多極子(軌道)秩序とその揺らぎを直接観測する手法として、偏光特性を活用した57Fe核共鳴前方散乱法を提案し確立する。そして、その有用性を鉄系超伝導体AFe2As2 (A:Sr,Ba,Eu)を試料として示す。
次に、この多重極限環境下偏光特性を活用した57Fe核共鳴前方散乱法を用いることで、圧力下鉄系超伝導体が示す鉄3d電子のスピン及び軌道秩序(揺らぎ)と超伝導発現機構との関係を原子核と電子間の超微細相互作用を通して解明することを目的とする。具体的には、比較的単純な結晶構造をもち代表的鉄系超伝導体であるAFe2As2を研究対象とする。それらの純良単結晶試料を用いて圧力誘起超伝導相及びその近傍で発現するエキゾチックな現象の起源を、多極子秩序(揺らぎ)を直接観測することによる解明を目指す。
●成果発表
●論文
Shugo Ikeda, Yuu Tsuchiya, Takumi Kikegawa & Hisao Kobayashi
Hyperfine Interactions 241 (2020) 28.
●PF Activity Report
●PFシンポジウム