PF-AR放射光高度化計画の概要

 物質構造科学研究所・放射光研究施設では1982年以来、2.5GeVのPFリングを利用して 多くの研究成果をあげてきました。一方、6.5GeVのトリスタン入射蓄積リング(AR) でも、1987年以来、高エネルギー物理学実験(トリスタン)と共生して放射光を 利用する研究が行われてきました。ARではリング中の電子のエネルギーが高く、 PFよりも短波長のX線が得られることを利用して、コンプトン散乱、核共鳴散乱、 磁気円二色性、超高圧下の構造、医学応用など数多くの先駆的研究が行われ、 そのニーズは増大の一途にあります。
 本計画はARをX線用の放射光専用リング(PF−AR)に転用して、性能の飛躍的な 向上を図り、ますます高度化するX線領域の放射光利用研究のニーズに応えるための ものです。
 PF−AR放射光高度化計画では、従来の単バンチ・大電流という特徴をさらに 発展させ、約10倍の輝度を得るとともに、放射光専用リングとして必須の、寿命が 長く安定なビームを実現します。その結果、約1.3マイクロ秒の周期で0.1ナノ秒の パルス幅の放射光が得られ、1mm2の断面積を持つ試料に 1パルス当たり108個の 光子(60keV、エネルギー分解能10000分の1、挿入光源)が入射します。 このようなパルス状の大強度X線は世界的にも類を見ないユニークなもので、 未知の新しい研究分野を世界に先駆けて拓くことができます。

AR,PF光源における単バンチ運転での輝度特性

  bend:偏向電磁石光源
  undulator(アンジュレーター) MPW(マルチポールウイグラー):挿入光源


PF-AR高度化計画の特徴

 PF−AR放射光では常時単バンチ運転を行い、 1パルス当たり108個の光子 (60keV,エネルギー分解能10000分の1、挿入光源)という大強度を持ちます。 これによって、反応中間体の構造を反応前・反応後と分離して調べることができます。 また、PFーAR放射光はPFに比べ高エネルギー側をカバーします。