大電流を利用した研究例


医学診断応用

 放射光単色X線を用いることで、心筋梗塞や狭心症などの心臓病に対する 早期診断システム、肺ガンの早期診断システムなどの実用化、脳代謝や血管系などの 詳細な生理学的・医学的評価など、新しい医学応用技術が実現できると期待されます。 図はARで開発してきたシステムで撮影された犬の心臓の造影結果の一例で、 冠状動脈系を明瞭に識別できています。最近、筑波大学と共同で、 心臓病の患者への臨床応用にも成功し、今後の発展が大いに期待されています。

超高圧下の構造物性

 物質に圧力や温度を加えていくと相転移を起こし、地球表面上では見られない 構造や物性を示します。現在では実験室の極微小な体積に限って、 地球の中心(400万気圧、5000℃)に近い環境を実現することが可能になりました。 例えば層状構造のグラファイトは地下200kmの条件(10万気圧、2000℃)では3次元の ネットワーク構造を持つダイヤモンドになります。しかしダイヤモンドの 生成メカニズムは未だに謎でありPFーAR放射光の高度化を待って 解明されるであろうと期待されています。

X線磁気散乱

 鉄に代表されるような磁性体は、ミクロな磁石(磁気モーメント)の集まりです。 電磁波であるX線は、物質中の電荷だけでなく、磁気モーメントによっても散乱を 受けます。その散乱強度は電荷によるものに比べ、極めて小さいために、観測には 大強度X線が不可欠となります。PFーAR大強度X線を磁性研究に利用することに よって、従来の実験手法では知ることのできなかった、様々な新しい情報を 得ることができます。このような磁性研究は、基礎研究においてのみならず、 近年では記憶素子やセンサーなどとしての広い応用領域の基盤研究として重要性を 増しつつあります。

表面・界面の動的構造

 先端技術を支える様々な物性は、表面・界面を舞台とすることが多く、 その構造を知ることは重要課題ですが、表面、界面の数原子層からの信号を 捉えるためには大強度X線が不可欠です。
 例えば、溶液中の電気化学反応によって電極表面に吸着した分子鎖の構造を 調べることが考えられます。単バンチ放射光の利用により静的な構造だけでなく、 基板に瞬間的に電位を与えた時の構造の時間変化を観測することが可能になります。 このような基礎研究は、環境問題から要求されている電気自動車の電池の 開発などへ貢献します。

生体分子分解反応の解析

 放射線障害の原因は、ミクロにはDNAの光化学反応による分子変化であると 考えられていますが、その生成機構の詳細は未だ謎に包まれています。
 PFーAR大強度パルス光を用いると、光化学反応による分解生成物及び その反応過程を追跡することが可能となります。これにより、DNAのような 複雑な分子においてもその反応過程の詳細を明らかにすることができます。