PF研究会「放射光利用による構造生物学の将来像」

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No. 発表者 所属 タイトル
1 小山昌子 名古屋大学大学院理学研究科生命理学専攻 An allosteric mechanism to displace nuclear export cargo from CRM1 and RanGTP by RanBP1
核・細胞質間高分子能動輸送は、細胞核機能とその制御を支える重要なプロセスである。代表的な核外輸送受容体CRM1は、Leu-rich nuclear export signal (NES)をもつ輸送基質(cargo)を認識して核から細胞質に運ぶ。私たちはCRM1による核外輸送の方向性制御の鍵を握る、CRM1:RanBP1:RanGTP複合体(細胞質における核外輸送複合体解体反応中間体)の結晶構造を2.0Å分解能で解き、CRM1:NES-cargo:RanGTP複合体の結晶構造との比較から、「細胞質でRanBP1がCRM1の構造変化を引き起こし、Leu-rich NES結合ポケットをopen状態からclosed状態に変化させることにより、NES-cargoのCRM1からの解離を促進する」というアロステリック機構を解明した(Koyama & Matsuura (2010) EMBO J., in press)。
2 鈴木健太郎、小宮大、石田卓也、五十嵐圭日子、鮫島正浩、若木高善、祥雲弘文、小関卓也、○伏信進矢 東大院・農生科、山形大・農・生資 麹菌エステラーゼの構造解析
麹菌由来の2種類のエステラーゼの結晶構造解析を行った。いずれもPichia pastorisにより組み替え酵素を菌体外に発現、精製し、native結晶の作成に成功した。しかし、一方ではSeMet法により位相決定に成功したのに対し、もう片方では、SeMet置換体が発現せず、ヨウ素を用いた手法(HYPER-VIL法)により位相を決定した。
3 イマイ ファビアナ リカ 東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命化学専攻 食品工学研究室 Crystal structure of L-allo-threonine aldolase from Aeromonas jandaei
Threonine aldolase (TA) is a pyridoxal-5’-phosphate (PLP) enzyme that catalyzes the interconversion of threonine and glycine plus acetaldehyde. DK-39 L-allo-threonine aldolase (LATA) from A. jandaei is a TA that cleaves stereospecifically L-allo-threonine. LATA was overproduced in E. coli and purified by Ni-Sepharose column chromatography followed by anion exchange chromatography. The purified LATA was co-crystallized with PLP and glycine by sitting-drop vapor diffusion method using MPD as a precipitant. The crystals diffracted X-rays from a synchrotron-radiation source beyond 2.6 _ resolution at beamline NW12 (Photon Factory Advanced Ring, Tsukuba, Japan). The crystal space group was assigned as primitive monoclinic P21, with unit-cell parameters a= 82.4 _, b= 95.85 _, c = 94.88 _, and β=113.64°. The structure was solved by molecular replacement method and demonstrated that LATA had an aspartate aminotransferase family fold. The structure revealed that Tyr 89 that has a bulky side chain might be important in the stereospecific L-allo-threonine recognition.
4 田中秀明 大阪大学蛋白質研究所 分子量約1000万の巨大粒子vaultのX線結晶構造解析
1986年に米国UCLAで発見されたvaultは、3種類のタンパク質と1種類のRNAで構成され、総分子量は約1000万で細胞質内に存在する核酸-タンパク質複合体としては最も大きい。本会では、vaultの全体構造決定においてブレイクスルーとなった、高分解能回折強度データ収集と粒子回転対称の決定を中心に議論したい。
5 宮園健一(1)、支月華(1)、高村百合子(1)、永田宏次(1)、
西郷薫(2)、小嶋徹也(3)、田之倉優(1)
1.東京大学大学院農学生命科学研究科 応用生命化学専攻、2.東京大学大学院理学系研究科 生物化学専攻、3.東京大学大学院新領域創成科学研究科 先端生命科学専攻 ホメオドメインタンパク質AristalessとClawlessによる共同的な
DNA認識機構の構造機能解析
ショウジョウバエの肢の分化にかかわる二つのホメオドメインタ ンパク質Aristaless(Al)とClawless(Cll)はDNAに対し共同的に結合する。これらの転写調節因子の共同的なDNA結合機構の構造基盤を解明するため、X線結晶構造解析法によりAl-Cll-DNA三者複合体の立体構造解析を行った。構造解析の結果、共同的なDNA結合には、Cllホメオドメイン上流に存在する保存領域の存在と、Alの結合にともなうDNAの構造変化が必須であることが示された。
6 堀田彰一朗 東大院・応生科 キラル化合物合成に有用な2種類の旧黄色酵素の結晶構造解析基質特異性に関する構造基盤
不斉水素化触媒能を有し、基質特異性、触媒効率の異な医薬品開発に有用な2種類の旧黄色酵素のX線結晶構造解析を行うことにより、その構造基盤を構築し、産業応用へ向けた酵素改変を目指す。
7 窪田恵子、永田宏次、岡井公彦、宮園健一、Wichai Soemphol(2)、大塚淳、山村昭裕、外山博英l(1)、 松下一信l(2)、田之倉優 東大院農生科・応生化、1.琉球大農・生物資源、2. 山口大農・生物機能 酢酸菌/Gluconobacter frateurii/由来L-sorbose reductaseのX線結晶構造解析
酢酸菌/Gluconobacter frateurii/由来L-sorbose reductase(SR)は、菌体内でL-sorboseをD-sorbitolに変換する酵素であり、高い基質特異性を有する。今回我々は基質存在下でSRの結晶化を行い、X線結晶構造解析法によりその立体構造を決定した。構造解析の結果、SRの基質特異性に関わる部分構造を明らかにした。
8 佐藤優花里(1)、夏目亮(1)、津田雅孝(2)、永田裕二(2)、千田俊哉 1.JBIC、2.東北大学大学院生命科学研究科、3.(独)産業技術総合研究所 ハロアルカン脱ハロゲン酵素DbjAの結晶化におけるSerial microseedingの効果
ダイズ根粒菌由来のハロアルカン脱ハロゲン酵素DbjAは、光学活性有機ハロゲン化合物を高光学純度の第二級アルコールへ変換する。ヘテロエピタキシー法を利用したDbjAの結晶化方法について紹介する。
9 栗栖源嗣 大阪大学蛋白質研究所 小型結晶化ロボットを用いた嫌気条件下での結晶化実験効率化
嫌気チャンバーを用いた結晶化は,実験当事者にとって非常にストレスの多い実験であった。今回,小型結晶化ロボットを用いて,嫌気チャンバーでの結晶化実験を効率化した例を報告する。
10 岡田晃季 東京大学大学院理学系研究科食品工学研究室 ゼブラフィッシュ孵化酵素の構造・機能解析
魚類の孵化において孵化酵素と呼ばれる亜鉛プロテアーゼが卵膜の分解に必須である。孵化酵素の活性制御や産業利用が有害魚や養殖魚の生育制御につなが ると期待される。本研究ではゼブラフィッシュの孵化において卵膜を分解する孵化酵素ZHE1の結晶構造解析を行い,その基質認識機構を解明することを目的 とした。【方法,結果】PF BL-5Aおよび、AR-NW12Aで取得した回折データを基にZHE1の結晶構造を1.10Å分解能で決定した。ZHE1の中央部には基質認識に関与す る長いクレフトが存在していた。このクレフトをアミノ酸配列類似の亜鉛プロテアーゼであるastacinやBMP1の基質認識クレフトと比較したところク レフト表面の形状と静電ポテンシャルが異なっていた。これらの差異がZHE1と類似酵素間に基質特異性の違いをもたらす要因であると示唆された。ZHE1 の基質結合様式を明らかにするため,astacinと遷移状態アナログ阻害剤との複合体の立体構造に基づいて,ZHE1と基質ペプチドとの複合体モデルを 構築し基質認識に関与する残基を推定した。
11 千田美紀 (社)バイオ産業情報化コンソーシアム Effect of leucine-to-methionine substitutions on the diffraction quality of histone chaperone SET/TAF-Ibeta/INHAT crystals
ヒストンシャペロンTAF-Ibetaの結晶の質を5.5オングストローム分解能か2.1オングストローム分解能に改善し、X線結晶構造解析に成功するまで行った方法(mutation, post-crystallization treatment等)について発表する。
12 硯 智史 大阪市立大学理学研究科 構造生物化学研究室 光合成光化学系・と電子伝達阻害剤DCMUの複合体の結晶構造解析
光合成光化学系・(PS・)は、太陽光エネルギーを利用し、水を酸化することで酸素を発生させる。そこで生じた電子はプラストキノン(Qa、Qb)を介してシクロムb6f複合体へと伝達される。DCMU(3-(3,4-dichrorophenyl)-1,1-dimethylurea)は、Qbサイトに競争的に結合してこの電子伝達を阻害する。今回我々は、PSIIの結晶にDCMUをソーキングして複合体結晶を調製し,その2.5Å分解能データから、QbサイトにおけるDCMUの結合様式を明らかにした。
13 玉田 太郎、岡崎伸生 日本原子力研究開発機構 量子ビーム応用研究部門 放射光X線と中性子を相補的に用いた蛋白質構造解析
日本原子力研究開発機構の研究用原子炉JRR-3に設置された中性子回折実験装置(BIX-3,4)を用いて収集した中性子回折データと放射光施設(PFおよびSPring-8)を用いて収集したX線回折データを組み合わせることにより、我々は創薬標的タンパク質(酵素)と医薬品候補分子複合体構造を複数明らかにしてきた。X線回折が原子核を取り巻く電子からの現象であるのに対し、中性子回折は原子核そのものから生じる回折現象である。したがって、同じ原子を観測してもその位置や見え方に特徴的な差が生じる。我々は中性子と放射光X線の特徴的な違いを利用して、これらを相補的に組み合わせた立体構造解析をN-X構造解析と呼び、タンパク質が関与するさまざまな生命反応をより深く理解することを目指している。本発表では、我々のN-X構造解析の取り組み、およびそれから明らかになった知見を紹介する。
14 赤井祐介 (社)バイオ産業情報化コンソーシアム ヒストンシャペロンCIA_ブロモドメイン複合体の構造と機能
真核生物における転写・複製などの核内反応の遂行には、ヌクレオソームの構造変換が必要不可欠である。本発表では、ヒストンシャペロンCIA-ブロモドメイン複合体のツイン結晶の解消法、構造解析及び立体構に基づいた機能解析について述べ、我々の提案する部位特異的なヌクレオソーム構造変換の分子機構モデルについて紹介する。
15 岡井公彦(1) 大塚淳(1) 山村昭裕(1) 今井ファビアナリカ(1) 永田裕二(2) 永田宏次(1) 田之倉優(1 ) 1.東大院・農生科 2.東北大院・生命科 Sphingobium sp. MI1205 由来ハロアルカンデハロゲナーゼLinBの結晶構造解析
HCHは有機塩素系殺虫剤の一種であり、塩素の位置により異性体が存在する。β-HCHは6つの塩素がエクアトリアルの位置にあるため異性体の中で最も安定に存在している。本研究ではβ-HCHを分解するLinBの構造解析を行い、いくつかのアミノ酸が基質トンネルの形成に影響を与えていることが示唆された。
16 中村 彰良 北大院・先端生命(田中勲研究室) DINGタンパク質との出会い
あるターゲットタンパク質の結晶化を行い、幸い結晶を得て、PFBL17Aにて1.4_のデータ収集にも成功した。しかし、それはターゲットの結晶ではなく、謎のタンパク質の結晶だった。本研究会では、謎タンパク質の同定から、巻き戻しによるサンプル調製、そして構造解析までを紹介します。
17 片岡 未有 関西学院大学大学院 理工学研究科 時間分割X線結晶構造解析による銅・トパキノン含有アミン酸化酵素触媒反応機構の解析
酵素反応を解明するうえで、反応中間体の構造から多くの有用な情報を得ることができる。アミン酸化酵素は活性部位にチロシン残基由来のトパキノン補酵素を有している。本研究では、このトパキノンを介して進む触媒反応の詳細な機構を解明するため、反応中間体の構造変化を時間分割X線結晶構造解析により追跡した。
18 深野 和紘 東京農業大学大学院農学研究科バイオサイエンス専攻機能性分子解析学研究室 Hygromycin B phosphotransferase 変異体における基質結合様式の推定
Hygromycin B phosphotransferaseは、アミノグリコシド系抗生物質である。Hygromycin Bの水酸基に、ATPのリン酸基を転移させる反応を触媒する。本酵素の活性部位にある、キナーゼの保存残基の1つであるヒスチジンを変異させると結晶構造における基質の占有率低下がみられる。しかしこのヒスチジンはATPと直接相互作用する位置にはないことから、構造活性相関を明らかにするため、高濃度の基質やADPおよびフッ化アルミニウムとの共結晶構造の解析を行った。
19 山下恵太郎 北海道大学大学院生命科学院 核酸構造自動精密化ソフトウェアの適用 - 実験的位相決定による構造解析
私達は構造精密化の自動化を進めており,当研究室ではすでにタンパク質の自動構造精密化ソフトウェアLAFIREが開発されている.本研究では,核酸の構造精密化を自動化するソフトウェアの開発を進めている.本発表では,SPring-8 BL41XUおよびPFNW-12Aでデータ収集を行った二つの核酸複合体および単体の構造解析において,開発中のソフトウェアを適用した例を示す
20 間瀬朋子 東京大学農学生命科学研究科応用生命化学専攻 超好熱古細菌Desulfurococcus amylolyticus由来Flap endonuclease 1のX線結晶構造解析
Flap endonuclease 1(以下FEN1)はDNAの複製や塩基除去修復の過程において重要な役割を持つ酵素である。そのDNA認識・切断機構の全様は未だ不明な点が多く、特にFEN1のDNA認識の構造基盤は未だ明らかにされていない。そこで我々は構造に基づく機能解明を目指すためDesulfurococcus amylolyticus由来FEN1 (DaFEN1) のX線結晶構造解析を行った。大型放射光施設Photon Factory BL5AでX線回折データの収集を行い、2.00 _の分解能のデータセットを取得し構造解析に成功した。構造によると、種間で多様性の見られる部分は、高温条件下でもDNAを強固に保持するのに適した構造をとっており、宿主の生育環境を受けて構造が変化していることが示唆された。
21 沼本修孝 京都大学原子炉実験所 サツマハオリムシ巨大ヘモグロビンの結晶構造解析
サツマハオリムシ巨大ヘモグロビン(分子量約40万)の結晶構造を,oxy型とdeoxy型について決定した.得られた結晶はnon-merohedral twinであることが多く,データ測定にあたっては,多くの結晶を用いての試行錯誤を必要とした.得られた結晶構造の比較から,巨大ヘモグロビン特有の作用機構を考察した
22 喜田昭子 京都大学原子炉実験所 水産生物由来レクチンの結晶構造解析
軟サンゴと褐虫藻の共生に関与するレクチンSLL-2の,糖鎖存在下・非存在下での結晶化と構造解析を行った.SLL-2は6量体を形成するが,6箇所存在する糖鎖結合部位が6量体分子内で非等価な状態であってもSLL-2は安定して存在できることが結晶構造より明らかになった
23 五十嵐教之 高エネルギー加速器研究機構放射光科学研究施設 PF小角散乱ビームラインの再整備
構造生物学研究において、X線小角散乱による溶液構造解析や生体膜構造解析 が注目を集めている。放射光科学研究施設でも、小角散乱用ビームラインを再 整備して、構造生物研究でも使い易いビームラインを実現しようとしている。 本報告では、再整備計画及び現在の状況について報告したい。
24 池水信二(1)、池鯉鮒麻美(1)、林千陽(1)、中村照也(1)、藤間祥子(2)、首藤剛(1)、甲斐広文(1)、山縣ゆり子(1) & Simon J. Davis(3) 1. 熊本大学大学院生命科学研究部、2. 東京大学大学院薬学系研究科、3. Oxford University, IMM IL-15/IL-15Rα複合体の構造生物学的研究
IL-15は分子量14-15kDaの糖蛋白質で114アミノ酸残基からなる。IL-15受容体(R)は、α, β及びγの3種類のサブユニットから構成される。IL-15は、IL-2とβ及びγ鎖を受容体として共有するため、T細胞増殖活性などの機能をIL-2と共有する。更にIL-15は特異的なIL-15Rαを受容体としてもつ。ノックアウトマウスを用いた研究により、IL-15が、CD8+ T細胞の維持・活性化,及びNK細胞の分化などに関与することが明らかにされた。またIL-15は関節リウマチ患者の炎症部位で異常発現しており、可溶化型IL-15Rαを投与しIL-15とIL-15Rαの結合を阻害することにより、炎症が鎮静化することが明らかにされた。我々は、IL-15とIL-15Rαの認識機構の解明を行うため、IL-15/IL-15Rα複合体の結晶構造解析を行った。IL-15及びIL-15Rαの細胞外領域を大腸菌を用いて発現させ、精製を行った。精製したIL-15とIL-15Rα混ぜた後、ゲルろ過により複合体として精製し、結晶化を行った。つくば市の放射光実験施設に於いて結晶のデータ収集を行い、構造解析を行った。解析の結果、2種類の結晶が存在し、各々2つ又は8つのIL-15/IL-15α複合体が非対称単位に存在することが分かった。本発表では、結晶構造を基にしたIL-15とIL-15Rαの認識機構について論じる。
25 岡崎誠司 高エネルギー加速器研究機構放射光科学研究施設 PBL-17Aにおける、低エネルギーSAD法の評価実験
BL-17Aによる低エネルギー領域においての高輝度のX線を利用した、低エネルギーSAD法を用いての、比較的小さな結晶の構造解析について議論する。
26 佐々木 大輔 京都大学大学院理学研究科 ヘテロダイマー型ヘキサプレニル二リン酸合成酵素の結晶構造解析
Micrococcus luteus B-P 26由来ヘキサプレニル二リン酸合成酵素(Ml-HexPPs)およびその基質類似体との複合体構造を決定した. この酵素は, 様々な鎖長のtrans型直鎖プレニル二リン酸の合成を担うtrans-プレニル鎖伸長酵素群に属しており, ヘテロダイマー型構造をとっている. これまでに多数構造解析が成されているホモオリゴマー型trans-プレニル鎖伸長酵素と比較すると, Ml-HexPPsのようなヘテロオリゴマー型酵素の構造解析は遅れており, その反応制御機構は未だ完全には理解されていない. 特に, ヘテロオリゴマー型酵素のSmallサブユニットには, ホモオリゴマー型酵素のサブユニットに存在する活性モチーフがなく, また, 両サブユニット間の一次構造上の相同性も非常に低いことから, Smallサブユニットの役割については良く分かっていない. 本発表では, 構造解析から示唆されたMl-HexPPsのSmallサブユニットHexAの機能について紹介する.
27 鈴木喜大(1)、平木雅彦(1)、山田悠介(1)、松垣直宏(1)、五十嵐教之(1)、加藤龍一(1)、David Drew(2)、岩田想(2)、若槻壮市(1)、川崎政人(1) 1. 高エネ研、PF、構造生物、2. インペリアルカレッジロンドン GFPタグを利用した蛋白質の結晶化
蛋白質の結晶化を促進するためのタグとしてGFPの有効性を検討した。単独では結晶化の不可能であった複数の低分子量蛋白質について、GFPと融合させることによって結晶化することができた。
28 牧尾尚能(1)、武井朋美(2)、川崎政人(1)、加藤龍一(1)、申惠媛(2,3)、中山和久(2)、若槻壮市(1) 1.高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所 構造生物学研究センター、2.京都大学大学院薬学研究科、3.京都大学生命科学系キャリアパス形成ユニット SeMet 変異体を用いたMR-SAD 法による構造解析について
今回、SeMet変異体を用いて、ARF6-MKLP1 複合体を発現させた後、BL5Aビームラインにおいて、2.6Åのデータを収集した。ARF6をサーチモデルとした分子置換法による解から、Phaser を用いて、MR-SAD法を適用した。その初期位相から、DMなどを適用することにより、MKLP1の部分についても、初期モデルを置く事ができた。結果、ARF6-MKLP1 複合体の構造を得たので、その過程について報告する。
29 西谷 優一 京都大学大学院理学研究科 超好熱菌由来Rubiscoの結晶構造解析
Rubiscoはカルビン回路における炭酸固定酵素であり, 超好熱始原菌由来Rubiscoは, 高温領域で高い活性を示す. また, 基質結合部位にホウレンソウ由来の残基を導入した変異体について, 常温領域で優れた活性を示すことが分かった. 本研究では, 野生型と変異型の基質結合型構造を明らかにし, 構造と酵素活性との関連性について考察を行った.
30 枝真広(1),石丸恵(2),多田俊治(1) 1.大阪府立大院理学系,2.近畿大学院生物理工学 Crystallization and preliminary X-ray diffraction analysis of tomato β-galactosidase 4
トマト果実軟化の鍵酵素の 1 つである tomato β-galactosidase (TBG) 4 は glycoside hydrolase family (GH) 35 に属し、β-galactosidase および exo-β-(1→4)-galactanase 活性を示す酵素である。GH35 に属する酵素の構造はこれまでに2 種が決定されているが、TBG4 はこれらの酵素とは全く異なる構造を有していると考えられる。TBG4 組換えタンパク質はPichia Pastoris により調製した。得られた組換え TBG4 は不均一な糖鎖修飾を受けていたことから、修飾糖鎖を酵素処理し、結晶化を試みた。その結果、良質な結晶が得られ、Photon Factory にて 2.2 Å分解能の回折 X 線データを得ることに成功した。現在、重原子置換結晶の調製を検討している。
31 ○平野優,樋口誠,浅井智宏,大岡宏造,三木邦夫,大友征宇 京大院理,茨城大理,阪大院理 緑色光合成細菌の反応中心を構成するcytochrome czサブユニットヘム結合ドメインのX線結晶構造
緑色光合成細菌はホモダイマー型の反応中心複合体を持つ.Cytochrome czサブユニットは,三回膜貫通ドメインと水溶性ヘム結合ドメインからなり,menaquinol/cytochrome c oxidoreductaseと反応中心スペシャルペア間の電子伝達を担うと考えられている.
本研究では,cytochrome czによる電子伝達機構を解明するため,緑色光合成細菌Chlrobium tepidum由来cytochrome czの水溶性ヘム結合ドメインのX線結晶構造解析を行った.
32 平木雅彦、Chavas Leonard M.G.、山田悠介、松垣直宏、五十嵐教之、若槻壮市 KEK-PF タンパク質結晶交換ロボットPAM
ビームタイムの効率的な利用、全自動測定、リモート測定の実現のために、PFタンパク質結晶構造解析ビームラインにはタンパク質結晶交換ロボットPAMが設置されている。
本発表では、PAMの現状について2006年秋からの運用実績と共に報告する。
33 山田悠介、平木雅彦、松垣直宏、Chavas Leonard M.G.、五十嵐教之、若槻壮市 KEK-PF PFにおける全自動回折データ収集・処理システム
PFタンパク質結晶構造解析ビームラインでは、大規模な創薬研究を想定した全自動回折データ収集・処理システムを開発し、運用している。本発表ではそのシステムの概要と、2009年の運用実績、今後の開発項目について紹介する。
34 Chavas Leonard M.G., 山田悠介、平木雅彦、五十嵐教之、松垣直宏、若槻壮市 KEK-PF UV LED for crystal centering
In the present study, we investigated the effectiveness of a softer UV-light for crystal centering, by taking advantage of low power LED sources. Finally, it will be shown how the use of UV LED can represent a low-cost solution for non-damaging crystal centering with high specificity.
35 ○松垣直宏、五十嵐教之、山田悠介、Leonard Chavas、平木雅彦、加藤龍一、川崎政人、小山篤、山本樹、土屋公央、塩屋達郎、前澤秀樹、浅岡聖二、宮内洋司、田原俊央、谷本育律、若槻壮市 KEK-PF 低エネルギーマイクロビームビームラインBL-1Aの現状
PF構造生物グループでは、ターゲットタンパク研究プログラムの課題として、重原子の導入なしでの構造解析を可能とする低エネルギーマイクロビームビームライン(BL-1A)の開発を進めている。BL-1Aでは、4keV(波長3Å)程度の低エネルギーX線を用い、天然タンパク質に含まれる軽元素(イオウやリンなど)からの異常散乱シグナルを利用した位相決定(低エネルギーSAD法)を積極的に推進
する予定である。本年度5月にユーザーオープンとなったビームラインの現状と、いくつかの低エネルギーSAD実験の結果を報告したい。
36 稲里みゆき(1),古賀由香里(1),橋川智恵(1),○中村照也(1),池水信二(1),中別府雄作(2),山縣ゆり子(1) 1.熊本大学大学院生命科学研究部,2.九州大学生体防御医学研究所 酸化ヌクレオチド加水分解酵素ヒトMTH1の幅広い基質特異性発現機構の解明
ヒトMTH1は,様々な酸化ヌクレオシド三リン酸を一リン酸へと加水分解してヌクレオチドプールの浄化を行い,DNAを酸化損傷から防御している.我々は,これまでに,MTH1と複数の酸化ヌクレオチド複合体の結晶構造を決定し,MTH1は隣り合った二つのAsp残基のプロトン化の状態を変えることにより,異なる基質を認識するという,全く新しい幅広い基質特異性の発現機構を提唱した.本発表では,活性を保持したN末端変異体を用いることで,野生型の結晶化条件である酸性領域ではなく,中性領域のpHにおける結晶構造をより高分解能で決定し,我々が提唱する機構を支持する結果を得たので報告する.
37 中村健介 総合研究大学院大学・物質構造科学専攻 低分子量GTPase Arl1とArfaptin BARドメインの複合体のX線結晶
構造解析
Arl1-Arfaptin1の結晶を台湾のNSRRC BL13B1にて、Arl1-Arfaptin2の結晶をSPring8 BL41XUにおいてデータを収集した。PF BL17Aにおいてデータ測定を行い構造が明らかになったArfaptin1単体構造および既に報告のあるArl1の構造をモデルとして、分子置換法を用いて二つの複合体の構造を解析した。
38 松垣直宏 KEK-PF PF研究会アンケート集計結果
PF研究会に先立ち、ユーザーの皆様にアンケートを取らせていただきました。
多数のコメントも頂いたので、集計結果とともに全数紹介します。