PF研究会「X線位相利用計測の将来展望」開催のお知らせ
- 2008年1月17日(木)〜18日(金)-



趣旨:
 X線の位相利用,あるいは,コヒーレンス利用は,放射光源の発展に伴って,さらなる広がりが期待される主要な研究対象であり,様々な分野でのサイエンス・テクノロジーへの寄与は計り知れません。PF懇談会の位相計測グループが中心となり,平成14年秋および平成17年春にはこの分野に焦点を絞った研究会を開催し,それまでには無かった角度からの有意義な議論を行いました(KEK-Proceedings 2002-22, 2005-6)。その後も多くの成果が報告され,次世代光源計画の動きも相俟って,研究の裾野は今後も確実に広がってゆくものと期待されます。同時に当該分野の計測技術を活用した応用研究も実施される段階に入っています。本研究会では,最新の情報交換と,将来に向けた活発な議論の場を提供します。

開催日:平成20年1月17日(木)10時〜18日(金)午後3時半

場 所:
高エネルギー加速器研究機構,4号館セミナーホール(施設案内・マップはこちらをご覧ください。)

連絡先:百生 敦(東大,新領域)
      E-mail:momose@exp.t.u-tokyo.ac.jp
      平野馨一(物構研)
      E-mail: keiichi.hirano@kek.jp

交通:
 車  常磐自動車道「桜土浦」インターより東大通りを筑波山方面へ20分
 電車 ○JR常磐線「ひたち野うしく駅」よりバスで「つくばセンター」へ25分、
     「つくばセンター」より「高エネルギー加速器研究機構」へバスで20分
     ○つくばエクスプレス「つくば駅」下車、隣接の「つくばセンター」より「高エネルギー加速器研究機構」へバスで20分。
       つくばエクスプレス時刻表
       つくば駅・KEK間のバス時刻表
       つくばエクスプレスのホームページ
 バス  東京駅より「つくば号」で「つくばセンター」下車(約1時間)、
     「つくばセンター」より「高エネルギー加速器研究機構」へバスで20分
 詳しくは「KEKまでの交通」をご覧下さい。

参加申込み:下記の参加申込みフォームよりお申込みください。
         旅費、宿舎の伴わない参加については当日まで受け付けますが、旅費のサポート、共同利用者宿泊施設(ドミトリー)の受け付けは締切ました。
         宿舎をご希望の方は「共同利用者支援システム」よりお申込下さい。           


プログラム

08/1/17(木)
10:00 受付開始
10:30-10:35 開会の挨拶
10:35-11:00 河田洋 KEK・PF PFの次期光源計画について
近年、Photon FactoryではERL(エネルギー回収型直線加速器)を次期光源とする方針を定め、昨年度より高エネルギー加速器研究機構(KEK)内にERL計画推進室を設置している。この推進室では、KEKの加速器研究施設、原子力研究開発機構、東京大学物性研究所、UVSOR、SPring-8 等の加速器研究者との協力体制を築き共同でERL実現に向けた計画の検討を進めているが、講演では最近の進捗状況について報告する。
11:00-11:25 矢橋牧名 理研・XFEL計画推進本部 XFELと位相計測
SPring-8において, X線自由電子レーザーの建設が2006年度から5年間の計画で開始された. コヒーレント散乱, コリレーション分光, 回折限界集光など, 完全な空間コヒーレンス特性を活かした研究の進展が期待されている. また, 時間コヒーレンスとしては, SASEに起因した多モード光となっているが, フーリエ限界光やパルス圧縮等を目指した研究も開始された.
11:25-11:50 並河一道 東京学芸大学 X線スペックルで見たBaTiO3の常誘電相強誘電相相転移
相転移の前駆現象として強誘電体BaTiO3の常誘電相に現れる分極クラスターのX線レーザースッペックルによる観察手法を紹介する。スッペックル強度の角度分布から分極クラスターの空間相関を求めることができ、スッペックル強度の時間相関から分極クラスターの緩和時間を求めることができる。これらの測定法の原理とX線レーザーのコヒーレンスの役割についてを議論する。
11:50-12:15 篠原佑也 東京大学 X線光子相関法のソフトマターへの応用
高分子やコロイド分散系などのソフトマターにおけるダイナミクス測定では、可視光レーザーを用いた動的光散乱法が主に使われてきたが、その多くは光が多重散乱を起こさない希薄な系に限られていた。それに対して、コヒーレントX線を光源とするX線光子相関法を用いることで、「濃密な」系のダイナミクスを測定することができる。講演ではナノ粒子充填ゴムへの応用例を通して、X線光子相関法で得られる情報とソフトマターに展開する際の課題について紹介する。
12:15-13:15 昼食
13:15-13:40 山崎裕史 JASRI 非干渉計測法によるX線コヒーレンスの定量的解析
X線位相利用計測の可能性を決定する要素であるコヒーレンスの定量的な評価方法を提案する。この方法は、完全結晶によって測定されたロッキングカーブから数値計算によってコヒーレンス関数を抽出するものであり、一般的なX線干渉計測法に基づく解析に比べて実験的に非常に簡便で、かつ解析の精度が高い。また、この方法ではコヒーレンスの縦(時間)成分と横(空間)成分が同時に解析される。
13:40-14:05 辻卓也 兵庫県立大学 硬X線Young干渉計を用いた放射光の空間コヒーレンス評価
Young干渉計を構築するためには、通常ダブルスリットなどを使用するが、これを硬X線領域に適用する場合、開口幅が1μm以下程度かつ透過を防ぐために数十μmの厚さが必要となり、製作が困難である。そこで、ガラス基板上に金を細線状に2本蒸着し、X線を金の全反射条件下で入射させることにより金のみの反射を取り出すことができる、全反射型のダブルスリットを開発した。またこれを利用したYoung干渉計を用いて、放射光の空間コヒーレンス評価を行った。
14:05-14:30 木下博雄 兵庫県立大学 コヒーレントEUVスキャタリング顕微鏡によるCD評価
顕微光学方式によるパタン観察では、高分解能化に限界があり、今後の22 ohp、さらなる15 nmhpでのパタン観察には、顕微光学系によらない新たな検査法の開発が必要となる。近年コヒーレント光を利用した生体試料のX線顕微法の研究が盛んに進められている。我々は、繰り返しパタンの多いLSIの配線パタンにコヒーレントEUV光を照射し、反射回折像をCCDカメラにて検出、回折パタンからパタンの線幅CDを読み取るシステムの開発を進めている。
14:30-14:45 休憩
14:45-15:10 高橋幸生 大阪大学 コヒーレントX線回折顕微法の材料科学応用に関する取り組み
コヒーレントX線回折顕微法(CXDM)が、マイクロメーターサイズ試料のナノ組織解析法として注目されている。現在、我々はCXDMによる金属材料のナノ組織解析技術の開発を進めている。本講演では、CXDMを実用アルミニウム合金の析出物解析に適用した結果に加えて、現在我々が取り組んでいる、元素識別CXDM、CXDMのための試料作製技術、銅細線試料のCXDM測定について報告する。
15:10-15:35 香村芳樹 理研播磨 開口より大きい試料の複素透過率を求めるコヒーレントX線回折顕微法
二種類の新しいコヒーレントX線回折顕微鏡法を用いて、開口より大きい試料の複素透過率を求めた。「Ptychography法」では、試料を開口に近接して置き、重なりを持つ複数視野で照射し、全回折像と試料の複素透過率との間でイテレーションを行った。再生された振幅や透過率分布に0.1ミクロン強の構造が明瞭に確認された。「位相シフトスペックル干渉法」では、コヒーレントX線回折像に位相付けし、イテレーション無しで複素透過率再生が出来た。
15:35-16:00 竹内晃久 JASRI 均一視野ゼルニケ型位相コントラストX線顕微鏡の開発
SPring-8 BL47XUでは、ケーラー照明によるゼルニケ型位相コントラストX線結像顕微鏡の開発を行っている。照明系、対物素子(FZP)、位相板は互いにマッチングを合わせて設計されており、200nmを切る空間分解能が安定して得られるようになった。これまで照明系には円形回折格子型のコンデンサプレートを使用していたが、視野の中心のみ強度が極端に高くなり、均一な視野が得られないのが問題であった。これを解決するために、多角形のコンデンサを開発し、これにより、約100μmの均一な視野が得られるようになった。
16:00-16:25 星野真人 筑波大学 マルチkeV X線位相差顕微鏡への展開
硬X線領域におけるX線位相差顕微鏡は、微小生体試料などの位相物体を可視化することができる有力な方法である。講演では、開発を行っているゼルニケ型のX線位相差顕微鏡の生体試料などへの適用例や位相差3次元イメージングについて紹介する。また、X線エネルギーをマルチkeV領域(1~5keV程度)に拡張したとき、得られる像コントラストの最適化について、シミュレーションなどを用いて議論する。
16:25-16:40 休憩
16:40-17:05 武田佳彦 東京大学 タルボ効果を利用した高分解能X線位相イメージング
X線顕微法は厚みのあるサンプルの内部組織を高分解能で観察できるという特徴ある。しかし、軽元素で構成されるサンプルを従来の吸収コントラストX線顕微法で測定する場合、X線吸収量の差が小さく、組織を描出することが困難となる。近年、2枚の格子と検出器からなる単純な光学系でX線波面の傾きを測定するX線タルボ干渉計が考案された。本研究ではX線タルボ干渉計とX線結像顕微鏡と組み合わせ、高感度、高分解能の位相イメージングを試みた。
17:05-17:30 松尾光一 慶応義塾大学 X線微分位相顕微鏡による骨微細構造の解析
骨細胞は、骨基質内で細胞間に直径250 nm程度の骨細管のネットワークを構築しており、微小骨折やメカニカルストレスを感知している。骨細管ネットワークの3次元構造を明らかにするために、マウス中耳より調製したツチ骨の短突起を、デフォーカス状態での吸収CTやタルボ顕微鏡を用いたCTにより撮影し、骨細胞・血管及びその周囲の微細構造を描出した。骨リモデリングの基盤構造を理解できれば、骨粗鬆症などの疾患に対する新たな治療法の開発に寄与すると期待される。
17:30-17:55 島雄大介 茨城県立医療大 X線暗視野法による屈折型トモシンセシスの現状
被写体で屈折したX線のみをラウエ型アナライザー結晶によって取り出し画像化するX線暗視野法の臨床利用に向けた研究を行っている。これまでX線暗視野法は投影像の利用に限られていたが、トモシンセシスの中でも最も単純なシフト加算法の原理を応用することで撮影線量を増やすことなくその断層像を取得することに成功した。これまでに得られたX線暗視野法による指関節の投影像と断層像を供覧し、本手法の現状を今後の課題も含め報告する。
18:10-20:00 懇親会 懇親会費は学生2000円、
一般4000円
 
08/1/18(金)
09:00-09:25 篭島靖 兵庫県立大学 X線顕微干渉計による高感度・高空間分解能位相イメージング
直径、焦点距離の異なる2枚のZPを同軸上に配置して、一方のZPで試料の拡大像(物体波)を形成し、もう一方のZPで参照波を形成して物体波と重ね合わせることにより、フリンジレスな干渉像を得ることができる新奇の顕微干渉計を考案し、SPring-8の兵庫県ID-BLに構築した。位相検出感度がλ/40であること、60 nmの空間分解能が達成されていることを確認した。さらに、CTへ適用することにより、断面像で200 nmの空間分解能と0.2 g/cm3の密度分解能を得た。
09:25-09:50 小野寛太 KEK・PF 軟X線フーリエ変換ホログラフィ
軟X線フーリエ変換ホログラフィは、試料からの物体波と参照波とを重ね合わせることによりホログラムを得て、ホログラムをフーリエ変換することにより実空間像を再構成する技術である。軟X線フーリエ変換ホログラフィの磁気イメージングへの応用と今後の展開について報告する。
09:50-10:15 林好一 東北大学 X線ホログラフィーで判る半導体材料における特異な局所構造
蛍光X線ホログラフィーは、直接、特定元素周辺の3次元原子像を求めることができる構造解析技術の一つである。ここ、2-3年は半導体試料を中心として、本手法でなければ得られないいくつかの発見があった。まず、N型半導体であるSi:AsにおけるAs周辺の原子像は、従来常識とされてきた4配位構造とは大きく異なるものであった。また、希薄磁性半導体であるZnMnTeにおいては、その局所歪みを反映した特異な原子像が観測された。講演では、これら二つのトピックスを中心に発表する予定である。
10:15-10:40 鈴木芳生 JASRI 硬X線結像ホログラフィー顕微鏡
X線結像顕微鏡と波面分割干渉計の組み合わせで、高空間分解能での波面再生を可能にする光学系を実現できる。我々はこの手法をX線結像ホログラフィー顕微鏡と呼んでいる。SPring-8では現状の対物ゾーンプレートの開口(数百μm)より広い空間干渉領域を実現しているため、プリズムや全反射鏡による波面分割干渉計との結合が可能になった。空間分解能はゾーンプレート対物レンズの解像度になり、現状200nm以上が実現されている。縞走査法やフーリェ変換法により定量的な位相コントラスト像が得られ、位相CT等への応用も可能である。
10:40-10:55 休憩
10:55-11:20 渡辺紀生 筑波大学 ゾーンプレート硬X線干渉顕微鏡による3次元位相トモグラフィー
SPring-8 BL20XUにおいて、2枚のゾーンプレート(直径330 mm、最外輪帯幅50 nm)をタンデムに用いてそれぞれの+1次光と−1次光を干渉させることにより、ゾーンプレート硬X線干渉顕微鏡を作成した。エネルギー8 keVのX線で、フリンジスキャンによる位相像において、100〜200 nm線幅のパターンまで分解結像できた。また、花粉等の試料の3次元位相CT再構成にも成功した。
11:20-11:45 西野吉則 理研播磨 コヒーレントX線回折顕微法の生物応用
コヒーレントX線回折顕微法の生物応用について報告する。細胞内小器官の高次構造の三次元観察では、クライオ電顕が現在最も有力な手法であるが、厚い試料に対しては、より透過能の優れたX線顕微鏡が潜在的優位性を持っている。我々は、コヒーレントX線回折顕微法による世界初の生物試料の三次元観察として、無染色ヒト染色体の三次元像再生に成功した。これにより、細胞内小器官に対する硬X線CT撮影が現実のものとなった。
11:45-12:10 山内和人 大阪大学 硬]線Sub-10nmビーム形成のための集光波位相計測
我々は,Kirkpatrick-Baez(KB)ミラー光学系により,これまでに,15keVの硬X線においSub-30nm集光を実現した.さらなる微小集光(Sub-10nm集光)を達成するために,集光ビームの強度プロファイルを用いた位相回復法による「At-wavelength波面計測法」と集光ミラーの上流での「波面補正法」を新たに提案し,これらの手法の研究と開発を進めている.その現状について報告する.
12:10-13:10 昼食
13:10-13:35 米山明男 日立製作所 位相コントラストX線イメージング法を用いた南極氷コア中のエアハイドレートの可視化と定量解析の試み
位相コントラストX線イメージング法を用いて、南極氷コアに含まれるエアハイドレートの三次元観察を試みた。観察には、結晶分離型X線干渉計を採用したイメージングシステムと、新たに開発した低温サンプルチャンバー(温度範囲-60~0℃、持続時間1時間)を使用した。ドームふじで採掘された深さ1776 m(13万年前)の氷コアを観察した結果、エアハイドレートと考えられる多数の小さな粒状の領域を可視化することに成功した。
13:35-14:00 篠原正和 神戸大学 位相差X線CTを用いた動脈硬化プラークの評価?不安定プラーク検出の試み
冠動脈動脈硬化プラークには、脂質が主体となる不安定プラーク、平滑筋・繊維成分が主体となる安定プラークがある。前者が破れると、急激に血管閉塞を生じ、急性冠症候群を発症する。その発症を予知・予防するため不安定プラークの存在を評価する研究が進められている。我々は、ex vivoではあるが動脈硬化モデルマウスの動脈硬化プラークを位相差CTイメージングで評価し、不安定プラーク・安定プラークにそれぞれ特徴的な内部組成をとらえ、組織密度という新しいパラメータで評価しえたので報告する。
14:00-14:25 百生敦 東京大学 Talbot干渉計の実用化に向けて
X線Talbot干渉計は、簡便なX線位相イメージングに使えるとして、近年特に実用面から注目されている。さらに、インコヒーレントX線の使用をも可能とするX線Talbot-Lau干渉計へと開発が続いており、シンクロトロン放射光源に限らず任意のX線源で位相イメージングが実施できるようになりつつある。JSTにおいて推進している自身の開発プロジェクトを中心に現状と今後の方向性を紹介する。
14:25-14:40 休憩
14:40-15:05 水野薫 島根大学 X線屈折コントラスト法によるチタン中の水素の拡散係数の決定
X線屈折イメージング法を用いて,チタン表面に電解チャージ法で生成させた水素化物の深さ方向の分布の様子を観察した。水素の拡散係数を仮定したうえで拡散方程式の解を用いてモデル計算した分布の様子と実験結果を比較した。その結果,拡散係数を決定できた。さらに異なる温度で生成させた水素化物の観察結果の解析から,拡散の活性化エネルギーとして0.55eVを得た。これは従来報告されている値と良い一致を示している。
15:05-15:30 平野馨一 KEK・PF X線HARP検出器の位相型イメージングへの応用
可視光領域ではHARP膜を利用することにより高感度カメラが実用化されているが、PFではNHK技研などと協力してX線用のHARPカメラの開発に取り組んでいる。開発の主目的はタンパク質構造解析への応用であるが、位相イメージングへの応用も行ったのでその結果について報告する。
15:30 閉会

 

2008-01-15 by pfw3-admin@pfiqst.kek.jp