PF研究会
「内殻励起分光学の発展と展望」
この20〜30年間に、内殻励起分光学は飛躍的に発展した。放射光専用光源と実験手法の発展が原動力のひとつであることは明白である。もうひとつの原動力は、新しい実験結果に刺激された、又は新しい実験を予言した理論の発展である。後者に関して、70年代初頭に発表されたKotani-Toyozawa理論が、内殻励起分光の本質を捉えた新しい概念を提出したばかりでなく、当時は実験が不可能に近かった発光スペクトルまでも計算していたことは特筆すべきである。内殻励起の発光分光は後年のKotani
理論の中心テーマとなった。80年台以降の第2、3世代放射光源の登場により、内殻励起分光学は初期の内殻吸収に加えて、共鳴光電子分光、スピン・角度分解光電子分光、硬/軟X線共鳴(磁気)散乱、硬/軟X線発光分光などの新手法が開拓された。さらに、この10年余には放射光の偏光特性(円/直線偏光)も組み合わせた内殻吸収、内殻光電子放出、硬/軟X線共鳴磁気散乱、硬/軟X線発光における磁気円/線二色性の実験・理論も発展した。
内殻励起分光は、元素・軌道選択性、共鳴増大効果、多体効果の露な出現等の特色を共有する。Kotani理論はこれらの新分野でも常に世界をリードした。
他方この〜15年間に物性科学において、高温超伝導、超巨大磁気抵抗、カーボンフラーレン/ナノチューブなどの大発見が相次いだことは、内殻励起分光に強い刺激を与えた。内殻励起分光は現在も日進月歩である。さらに世界では、第3.5世代の新放射光源リングも稼働し始め(SLS)、もしくは計画が走り始めている(DIAMOND等)。国内の新光源計画も検討されている。
内殻励起分光学は今後どう発展するのか、我々は今何を準備しどう行動 すべきか?期待と不安が交錯する。
本年はPFの放射光発生20周年にあたる。また、内殻励起分光学の理論的研究において長年世界をリードしてこられた小谷章雄教授が、来年3月に東大物性研を御退官の予定と伺っている。本PF研究会は、これを機会に、内殻励起分光学の分野で日頃仕事をしている理論・実験研究者が一同に会し、内殻励起分光学の発展と展望を議論する場を提供するものである。
研究会の開催日、場所などは下記のとおりです。参加を希望される方は、下記「参加申込みフォーム」よりお申し込み下さい。
参加申込みは随時受け付けますが、懇親会に参加を希望される場合には準備の都合上12/13(金)までにお申し込みください。
旅費のサポートはできる限り行ないます。
多くの皆様のご参加をお待ち申し上げます。
会期:平成14年12月20日(金)午後〜21日(土)
会場:高エネルギー加速器研究機構
3号館セミナーホール
交通:[車] 常磐自動車道「桜土浦」インターより東大通りを筑波山方面へ20分
[電車] JR常磐線「ひたち野うしく駅」よりバスで「つくばセンター」へ25分、
「つくばセンター」より「高エネルギー加速器研究機構」へバスで20分
[バス] 東京駅より「ニューつくばね号」で「高エネルギー加速器研究機構」下車(約1時間30分)
東京駅より「つくば号」で「つくばセンター」下車(約1時間)、
「つくばセンター」より「高エネルギー加速器研究機構」へバスで20分
詳しくは http://ccwww.kek.jp/info/userguide/transportation.html
を参照して下さい。
宿泊施設:KEK内共同利用者宿泊施設
(研究会としての宿泊申し込み締め切りは 12月6日(金)です。それ以降もお申込いただけますが、宿泊の保証はできません。)
KEK周辺宿泊施設
提案代表者: 那須奎一郎 (KEK-PF)
宮原恒あき (都立大学)
藤森 淳 (東京大学)
小出常晴 (KEK-PF)
岩住俊明 (KEK-PF)
世話人及びその連絡先:
小出常晴(物質構造科学研究所・放射光研究施設)
E-mail : tsuneharu.koide@kek.jp
岩住俊明 (物質構造科学研究所・放射光研究施設)
E-mail : toshiaki.iwazumi@kek.jp
FAX :0298-64-2801(二人に共通)
プログラム
12月20日(金)13:00〜
13:00〜13:05 「趣旨説明」
13:05〜14:35 「内殻励起分光学の理論の進展」
小谷章雄 (東大物性研)
14:35〜14:50 休憩
14:50〜15:15 「軟X線発光分光による固体の実験的研究」
辛 埴 (東大物性研)
15:15〜15:40 「低次元銅酸化物の酸素内殻の共鳴XESの理論」
岡田耕三 (岡山大)
15:40〜16:05 「硬X線発光の偏光依存性」
岩住俊明 (物構研PF)
16:05〜16:30 「ヘリウムイオン−表面衝突と内殻励起」
馬越健次 (姫工大)
16:30〜16:45 休憩
16:45〜17:10 「遷移金属化合物および希土類化合物における共鳴X線散乱」
五十嵐潤一 (SPring-8)
17:10〜17:35 「共鳴X線散乱法による軌道秩序の研究−K端共鳴散乱のメカニズム−」
村上洋一 (東北大)
17:35〜18:00 「バンド計算とX線散乱分光 」
浜田典昭 (東京理科大)
18:00〜18:25 「PLD法作製LaSrMnO3薄膜のin-situ光電子分光」
尾嶋正治、組頭広志 (東大)
18:30〜 懇親会 レストラン「くらんべりぃ」
12月21日(土)9:00〜
9:00〜9:25 「軟X線光電子分光によるバルクバンドマッピングとFermiology」
菅 滋正 (阪大)
9:25〜9:50 「モット転移の多段階性と光電子スペクトルの経路積分理論」
那須奎一郎(物構研PF)
9:50〜10:15 「内殻分光による化学ポテンシャル・シフトの研究」
藤森 淳 (東大)
10:15〜10:40 「内殻電子励起と電子スピン遍極 」
柿崎明人(東大物性研)
10:40〜10:55 休憩
10:55〜11:20 「光電子顕微鏡による微小領域磁性の研究」
木下豊彦(東大物性研)
11:20〜11:45 「希土類L吸収端における磁気円二色性−CeFe2を中心に−
」
原田 勲 (岡山大)
11:45〜12:10 「XMCDによる磁性研究−Ptを含む磁性体とPt L-吸収端XMCD−」
圓山 裕 (岡山大)
12:10〜13:00 昼食
13:00〜13:25 「ペロブスカイト酸化物の電子状態と内殻吸収線二色性 」
城 健男 (広島大)
13:25〜13:50 「MCDでみた局所帯磁率の温度依存性とバルク帯磁率との比較」
宮原恒あき (都立大)
13:50〜14:15 「角度分解XMCDによる異方的磁気モーメントの研究」
小出常晴 (物構研PF)
14:15〜14:30 休憩
14:30〜14:55 「相対論的XAFS, XMCD, XPD理論」
藤川高志 (千葉大)
14:55〜15:20 「内殻分光と表面化学」
太田俊明 (東大)
15:20〜15:45 「X線偏光顕微鏡の開発と応用」
雨宮慶幸 (東大)
15:45〜15:55 「まとめ」
Last modified
2003-02-26
by pfw3-admin@pfiqst.kek.jp
|