自然科学研究機構分子科学研究所の彦坂泰正(ひこさか・やすまさ)氏が、第2回(2008年)日本物理学会若手奨励賞を受賞されました。今回の受賞は、同氏がフォトンファクトリーで行った「多重同時計測による原子分子の光多重電離過程の研究」が対象になっています。
彦坂氏は、放出電子間の運動エネルギー相関を高効率かつ精度良く測定出来る実験手法として、磁気ボトル型電子エネルギー分析を原子や分子の光多重電離の研究に導入することにより、次々と特筆すべき研究成果を報告しています。原子や分子の内殻電子を光電離すると外殻電子がshake-offされて同時に飛び出てくることが知られていますが、彦坂氏はNe原子においてこの過程を直接的に観測することに初めて成功しました。ここでは、このshake-off過程で生成する二価イオン状態の分岐比が、従来の理論では説明できないことを指摘しました。また、通常では生成断面積が小さい内殻軌道からの二重電離をXe原子において観測し、その生成過程に関する30年前の理論的予測が正しかったことを実験的に初めて証明しました。
以上のように、従来の光電子分光では観測できなかった原子分子の多重電離過程について、多電子同時計測を用いることにより飛躍的にその理解を発展させたことが高く評価され、今回の受賞となりました。
授賞式および受賞講演は2008年3月23日-26日に近畿大学で行われた日本物理学会第63回年次大会で行われました。
【受賞となった研究に関する記事】
多電子同時計測手法を用いて内殻外殻光二重イオン化過程の直接観察に成功
http://pfwww.kek.jp/topics/060825.html
多重同時計測による希ガス原子の多重イオン化過程に関する研究
http://pfwww.kek.jp/publications/pfnews/24_1/p22_25.pdf
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