担当者:北島義典
2010年9月9日更新
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実験概要
X線を物質に照射したとき、X線は内殻の電子を励起して吸収されます。軽元素の内殻電子の束縛エネルギーは数百〜数千電子ボルト(eV)の軟X線領域にありますから、そのエネルギー(吸収端)を含むエネルギーのX線の吸収係数を測定すると、物質中の軽元素による吸収スペクトルが測定できます。この吸収スペクトルから、物質中の特定の元素の化学状態や電子構造と原子構造を調べることができます。
吸収端から数十eVの領域はX線吸収端近傍構造(X-ray Absorption Near Edge Structure, XANES)もしくはNEXAFS(Near-Edge X-ray Absorption Fine Structure)、さらに高エネルギー側数百eVにわたって観測される波打ち構造は広域X線吸収微細構造(Extended X-ray Absorption Fine Structure, EXAFS)と呼ばれ、両者を併せてXAFS(X-ray Absorption Fine Structure)と言います。
PFには様々なエネルギー範囲をカバーするビームライン(1.9 keV以下の回折格子分光ステーション、1.7 - 5 keVの真空結晶分光ステーション、2.1 keV以上のX線分光ステーション)が設置されており、多少の制約はあるものの、全ての元素について吸収スペクトルの測定を行うことが可能です(各元素の吸収端エネルギーをご確認下さい)。
ここでは、軽元素(B,C,N,O,F,Ne,Na,Mg,Al,Si,P,S,Cl,Ar,K,Ca)のK吸収端をカバーする軟X線領域の測定について記します。硬X線領域については別ページを御参照下さい。
軟X線領域では、全ての物質で吸収が大きく、透過法による直接的な測定は困難な場合が多くなりますが、透過法に替わる測定法(電子収量法や蛍光X線収量法)に対応しています(詳しくは「軟X線領域のXAFS測定」のページをご覧下さい)。
XANESでは、標準物質のスペクトルとの比較から、化学状態分析を高感度で行うことが可能です。EXAFSからは、特定元素周辺の局所構造(原子間距離や配位数)を解析することができます。
軟X線領域では、空気による吸収も大きくなるため、真空チェンバー内で測定を行います。昇華性のない固体(板状、粉末等)であれば問題ありませんが、液体や気体の場合は、適当な試料セルなどを用いる必要があります(詳しくは「軟X線領域のXAFS測定」のページもご参照の上、お問い合わせ下さい)。
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問い合わせ:フォトンファクトリー利用相談窓口