高分解能光電子分光装置 (Scienta SES-200)

担当者:小野 寛太
5659(PHS:4205)
kanta.ono@kek.jp


1. 概要

 本装置は主として低温・高分解能で固体及び固体表面の光電子スペクトルを測定するための装置として建設されました。光電子エネルギー分析器としてGammadata Scienta社のSES-200(通称Scienta SES-200)、冷却機構としてヘリウムフロー型クライオスタットを用いています。エネルギー分解能は以前の24 meV(FWHM, Pass Energy 2eV)から19.6 meV (Pass Energy 10 eV) まで向上しました。本装置はBL-11Dに常駐しているので、典型的な利用者は試料を持ちこめばベーキング無しに翌日から測定が開始できます。共同利用は2000年5月より開始し、これまでの利用実績として、固体試料で3d(Mn, Fe等)、4f(La, Ce, Pr, Eu, Yb等)遷移金属化合物があります。これらの典型的な試料では、いずれもやすりがけか劈開による表面 処理を行っていますが、試料準備槽には多くのICF70ポートが用意されているのでガス導入なども可能であり、上記以外の試料でも対応できます。


2. 性能


主な装備:

また、装置の概略を図1に示します。図より解る通り、試料槽と測定槽をゲートバルブ切り離すことができるため、やすりの交換、ガス源装着などは試料槽のみ大気にすることで行えます。また、上記装備以外に、表面処理用のイオン銃、金属試料蒸着用のE-beam 蒸着源、表面構造観察用のLEEDも準備されており、必要に応じて取りつけ可能です。現在のマニピュレータは低温用のクライオスタットですが、高温用のマニピュレータを用意することで、蒸着/加熱/スパッタリングによる試料表面準備も可能です。



図1. Scienta SES-200の概略図。排気系はメインのイオンポンプを除いて省略。

3. その他

  1. 本装置は、(1) 超高真空装置であり、測定槽及び試料槽の真空度及び質を常に高く維持する必要があること、(2) 試料導入の際にはターボ分子ポンプ、ロータリーポンプ、ゲートバルブなどの真空装置を扱う必要があること、等から、利用者が超高真空実験における基本的操作に習熟しているか、あるいは習熟できることが必要となります。従って、試料、付加装置を含む実験計画立案の際には、まず担当者にご相談ください。(但し、典型的な試料の場合はいくつかの基本的な点に注意すれば、初心者でも簡単に測定に入れるようになっています。)
  2. 本装置は、BL-11Dでの使用を想定しています。ビームラインについては当該記事を参照してください。
  3. スピン分析器の設置を計画中です。また、加熱可能なマニピュレータの準備も検討しています。

4. 参考文献

N. Martensson, P. Baltzer, P. A. Bruhwiler, J.-O. Forsell, A. Nilsson, A. Stenborg, and B. Wannberg, J. Electron Spectrosc. Relat. Phenom., 70 (1994) 117-128.


Last modified : 2001-08-08