空間コヒーレンス特性を活かしたサイエンス
X線ホログラフィー
ホログラフィーは、光の干渉像に波面の揃ったコヒーレント光(参照光)を照射して、物体の3次元像を再生する技術です。身近な例では、クレジットカードや紙幣に印刷されている金属光沢のある部分に、ホログラフィーの技術が使われています。これはレインボーホログラムと呼ばれ、印刷されたパターンに光を当てると、像が虹のように浮かび上がって見えます。
レインボーホログラムは可視光を使ったホログラフィーの例ですが、波長を短くして、X線の波長領域になっても、波面の揃った光(空間コヒーレントX線)を使えば、原理的にはホログラフィーを実現できるはずです。例えば、参考論文1は、軟X線を使って、白金とコバルトからなる磁性体の磁区構造をホログラフィーで観察した例です(*1)。軟X線の干渉パターンに参照光を照射することで、実際の磁区構造の画像が再生されました。(実際には磁気円二色性を測定していますので、左右円偏光の吸収の差分信号を記録しています。)
この技術をさらに推し進めれば、より波長の短いX線を使って、物質の原子レベルの3次元像をホログラフィーで再生することも可能となるはずです。
(1) S. Eisebitt, J. Lüning, W. F. Schlotter, M. Lörgen, O. Hellwig, W. Eberhardt & J. Stöhr "Lensless imaging of magnetic nanostructures by X-ray spectro-holography" Nature 432, 885–888 (2004)