挿入光源ビームライン増強に関するユーザーズミーティング開催案内

2005年6月29日



 PFでは3月から9月中旬までの停止期間を確保して、直線部増強改造作業を進めています。現時点では古いマグネットの撤去が完了し、新しい四極マグネットの組立が進んでいます。これは2001年度から準備を開始し、PF、KEK合わせて約9億円の予算を投入した大きな改造作業です。この結果として、今秋には既存の直線部長が長くなり、2本の最長9.2mの長直線部の他8本の5m級の中直線部(含入射部、RFキャビティ)、4本の1.4mの短直線部が生まれます。最近の状況についてはhttp://pfwww.kek.jp/outline/ pfring/index.htmlを参照して下さい。

 いよいよこの直線部を生かして、挿入光源を光源とするビームラインの整備を行い、第三世代光源に準じた中エネルギーリングという光源特性を生かした研究を展開できる状況になってきました。一昨年夏のユーザーズミーティングで、中長直線部の内5本はVUV・SX域のアンジュレーター光利用研究に、短直線部4本は真空封止型ショートギャップ・アンジュレーター(SGU)を光源とする軟X線〜X線利用のために整備する案を示しています。この内、既に下記の様な整備・検討を進めています。

  • 先端計測予算による構造生物学研究用のBL-17(SGU)建設、
  • BL-28ビームライン光学系を更新し、高分解能角度分解光電子分光研究環境の整備、
  • 科研費等に依るBL-28Bのブランチの建設、
  • BL-16をアンジュレーター利用専用化するために、BL-3にSGUを光源とする構造物性研究用ビームラインを整備、
  • 高速可変偏光アンジュレーターを光源とするビームラインとしてBL-16の検討。

ここで示すビームライン整備の基本的な考え方は以下の通りです。

  1. 中長直線部の内5本(BL-2、13、16、19、28)はアンジュレーター利用専用化する。
  2. 上記の内、空間的制約の厳しいBL-19以外は2ブランチ化してタイムシェアし、機器入替、ベーキング等に依るロスタイムを最短にする。
  3. 少なくとも1ブランチには専用実験装置を配置することで装置のセットアップに要する時間を削減し、物質研究者にも使い易くする。他方のブランチでは持ち込み実験装置等を用いた実験も可能とすることで研究の多様性を確保する。
  4. 短直線部(BL-1、3、15、17)にはSGUを設置して軟X線〜X線領域の実験に供する。

 PFでは2002〜2004年度は「構造生物学研究設備増強」として、2005年度以降は「挿入光源ビームライン増強」として予算要求を行っていますが、文科省側の厳しい予算状況もあり、今日までに予算化に至っていません。

 厳しい制約条件の中でも、挿入光源ビームラインを整備してPF後継光源が稼働するまでの間国際的に競争力のある放射光利用研究を行なえる機会を作っていくことは、大学共同利用機関であるPFが放射光コミュニティに対して果たすべき責務と考えています。つきましては、限られた資源を活用してPF後継光源の実現につながるインパクトのある研究成果を数多く生み出すために整備すべき挿入光源、ビームライン、研究環境について議論を行うため、ユーザーズミーティングを開催します。各研究グループからの研究提案は3月のPFシンポジウムのおりに配布した「PF挿入光源ビームライン増強提案(暫定版)」に大略まとめられていると考えられますので、該当するユーザーグループを中心として、新しい研究提案、挿入光源・ビームラインに求められる性能について報告を頂き、その上で議論をして頂きたいと考えます。

 厳しい予算状況にありますが、上記の様に各種の外部資金を核としてビームラインの整備も進めており、またこれら外部資金を核として機構からの財政的支援も得ています。放射光コミュニティとしてまとまった外部資金を獲得して、挿入光源ビームライン整備の推進力としていく可能性もあり、既にいくつかのユーザーグループを中心とした動きも起きています。

 このユーザーズミーティングでは、挿入光源ビームライン増強に関して

  1. 新しい研究提案、挿入光源・ビームラインに求められる性能、予定される利用実験者についての提案
  2. 「PF挿入光源ビームライン増強提案」に記されてない提案
  3. 各提案の配置に関する討論
  4. その実現に向けた資金獲得に関する討論

に重点を置きます。

 つきましては、実験責任者(または代理の方)にご出席頂き、ご義論頂きたく存じます。また、「PF挿入光源ビームライン増強提案(暫定版)」に記された以外の提案をされる場合は、「PF挿入光源ビームライン増強提案(暫定版)」中の執筆依頼(p.32)を参考に、提案書を7月末日までにWordファイルでお送り下さい。当日、報告、討論の時間を作ります。

日時: 8月10日 水曜日 10:00〜17:00程度(講演数に応じて変わります)
場所: 4号館セミナーホール

 夏の国際会議の時期かと思いますが、ご出席頂き、活発な議論を頂きたいと思います。



高エネルギー加速器研究機構
物質構造科学研究所
放射光科学研究施設
世話人: 野村 昌治
masaharu.nomura@kek.jp


プログラム
10:00〜 はじめに
10:10〜 直線部増強作業の状況 本田  融
10:30〜 PF挿入光源ビームライン増強の概要
10:50〜 短長直線部利用提案(1)
 構造生物   若槻 壮市(PF)
 軟X線分光  北島 義典(PF)
11:30〜 中長直線部利用提案(1)
 原子分子ユーザーグループ   河内 宜之(東工大院化学)
 固体分光Tユーザーグループ 藤森  淳(東京大理)

12:10〜13:30 昼休み

13:30〜 中長直線部利用提案(2)
 量子ナノユーザーグループ   組頭 広志(東大工)
 表面化学ユーザーグループ   奥平 幸司(千葉大工)
 軟X線発光ユーザーグループ  手塚 泰久(弘前大学理工学部)
 放射線生物ユーザーグループ 小林 克己(PF)

coffee break

15:10〜 短直線部利用提案(2)
 X線反射率   桜井 健次(物材機構)
 X線小角散乱  若林 克三(大阪大基礎工)
 X線位相光学  百生   敦(東大工)

16:10〜 その他の提案、総合討論

17:00〜 PF次期光源計画

やや忙しいですが、一提案20分程度(簡単な質疑込み)を予定しています。

お帰り: 17:40 高速バス東京駅行き、
      17:40、17:59 つくばセンター行き

19:00〜「境界領域の新しい研究領域は?[フリー・トーキング]
     場所:職員会館二階・和室