磁性薄膜・多層膜は,垂直磁気異方性や巨大磁気抵抗効果など,バルク磁性体にはない特長を示
すことから,いわゆるスピントロニクス材料としてはもちろん,基礎科学としての観点からも盛
んに研究されています。例えば強磁性体/絶縁体/強磁性体からなるトンネル磁気抵抗素子は,磁
気記録媒体の読み取りヘッドとしてその高密度化に大きく寄与するとともに,不揮発性磁気メモ
リとしても実用化段階にあります。また,わずかな外場で多様な物性を示す強相関電子系物質
や,半導体であるがゆえにデバイスへとの相性の良い希薄磁性半導体にも注目が集まっていま
す。一方,単純な金属を積層しただけの薄膜でさえも,異種金属間の界面における構造や磁気状
態はほとんど明らかになっておらず,垂直磁気異方性の起源についても未解明の部分が多く残さ
れています。
本研究会は,表面敏感性や元素選択性などから,磁性薄膜の研究に適している軟X線 XMCDをはじ
め,放射光はもちろん中性子などの多様なプローブを用いた薄膜・多層膜研究をご紹介いただく
とともに,材料開発の立場からもご講演をいただき,最新の手法を用いたキャラクタリゼーショ
ンの結果を新奇材料の創製へとつなげていく道筋を模索することを目的としています。
2011/3/11小林ホールにて