小角散乱による溶液、筋肉、高分子などの構造解析
担当者:五十嵐教之
2010年8月30日更新
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keyword: SAXS, WAXS , non-crystalline structure, dynamics
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ビームライン、ステーションの選択
- X線小角散乱実験が行えるビームライン、ステーション
- X線小角散乱装置(BL-15A)
- 点集光の光学系が採用されているので縦横の空間分解能が高く、2次元回折実験に適しています。
- BL-10C、9Cに比べてX線ビームの輝度が高いのでスリットによるビームの切り出しが有利となっています。 光学系設定の自由度は高いですが、独自の設定には経験が必要になります。
- 汎用の検出器として、1次元PSPCのほか、IPとII+CCDの2次元検出器を備えています。 II+CCDを使うことで10ミリ秒オーダーの分解能で2次元SAXS時分割測定ができる唯一のステーションです。
- 線波長は1.5Åの固定モードで用いられています。
- 溶液用小角散乱実験装置(BL-10C)
- 擬似点集光型の光学系を持つため1次元PSPCによる1次元(縦)方向のデータ収集に適しています。
- R-AXIS
7あるいはoff-line IPによる2次元データの取得も可能ですが、この場合、横スリットでビーム断面の縦横比が同じ程度になるまでビームを切り込む必要があります。
- 合成高分子の熱的相転移やタンパク質集合体の解離・会合など遅い反応に対しては最小100ミリ秒程度の時分割測定が可能です。
- X線の波長は、通常、1.5Åに設定されています。
- 小中角散乱装置(BL-9C)
- 最大の特徴は、2台の1次元PSPCを同時使用できるようカメラが設計されている点で、小中角測定に加えて高角の回折像測定(WAXS)が行えます。
- 疑似トロイダルミラー光学系を使用しているため、擬似点収束で1次元(縦)方向のデータ収集が標準ですが、非対称なスリット配置になっておりX線ビームの収束精度は比較的高い。
- そのため、横スリットでビームの横幅を切り込んだ場合、その分だけ強度は減少しますが、配向構造解析を含めた二次元測定(IP、II-CCD)が可能となります。
- X線の波長は、通常、1.5Åに設定されていますが、10.54~2.4Åの範囲で波長は容易に変更が可能です。
- 試料周りの環境は、かなり自由にユーザーが変更することが可能です。
どんな小角散乱実験がどのステーションの装置に適しているかを判断するとき、主な要件として以下が挙げられます。
- 試料の形状:{溶液、ウェット、固体}、あるいは{配向、無配向}
- 測定領域:小角優先、小中角、広角(小~高角)
- 2次元像記録の要・不要(検出器のタイプ)
- 時分割測定の要・不要(時間分解能)
- 必要なビーム強度とサイズ
いずれのステーションも偏向電磁石を光源とするビームラインに建設されていますので入射X線ビームの最大強度には大きな違いはありませんが、採用されている光学系の違いによるビーム断面のサイズや形状、利用できるカメラ距離や検出器の種類で、それぞれの小角散乱装置としての長所が異なっています。ステーションを選択する際の大まかな指針は次表のようになります。
測定条件から見たステーションの特性
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試料の種類・形状
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可能測定領域
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2次元像記録
(使用検出器)
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時分割測定
(実用分解能)
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焦点サイズ
(横×縦)
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BL-15A
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制約なし
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小、中角(カメラ組換え)
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IP、II+CCD(事前打合要)
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最小~20ミリ秒
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0.3mm×0.3mm
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BL-10C
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横配向不適
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小、中角(カメラ組換え)
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IP(回折は不向き)
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最小~100ミリ秒
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1.5mm×0.5mm
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BL-9C
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横配向不適
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広角(小~高同時測定)
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IP、II+CCD
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最小~1秒
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1.1mm×0.5mm
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