核共鳴散乱(メスバウアー分光)
2005年 5月17日更新
[English](準備中)
放射性同位元素(RI)からのガンマ線によって、ある原子核のエネルギー準位を共鳴励起して、励起された原子核から放出されるガンマ線や内部転換電子線、それに伴う特性X線などの放射線を検出、精密なエネルギー分光をすることで、物質の電子状態を調べることができます。これを核共鳴散乱法、あるいはメスバウアー分光法と呼びます。鉄57の14.4-keV準位を利用する研究などが盛んに行われてきました。近年、放射光X線を使う手法による研究が進められています。この場合、原子核励起準位の固有の寿命にしたがって放射線が時間遅れで放出されることを利用する時間分光法が用いられます。放射光による核共鳴散乱法は、励起するエネルギーが自由に選択できること、細く絞ったビームによって微小な試料の分析や超高圧、極低温などの特殊環境下での実験に有利であるなどの特徴があります。また入射X線ビームのエネルギーをmeV単位で変えながらフォノン・スペクトルを測定する核共鳴非弾性散乱法による研究も世界に先駆けてPFで行われてきました。
PFには、核共鳴散乱のための専用ビームラインとして、PF-ARリングのAR-NE3Aがあります。日本における核共鳴散乱研究をリードしてきました。いまもPF-ARリングの年間とおしての単バンチ運転を生かした研究が続けられています。
ステーションの詳しい紹介は、見出しのビームライン名のところからリンクされています。
AR-NE3A
X線アンジュレータを光源とし、二結晶分光器だけでなく、核共鳴散乱のための高分解能モノクロメータが利用できる。
ハッチ内には定盤が設置され、定盤の上に高分解能モノクロメータ、入射ビームモニター、スリットなどが設置されている。
低温実験のためのクライオスタット、Si-APD時間検出器なども利用できる。
実験にあたっては、共鳴エネルギーの調整など、担当者と相談が必要。
ここでは紹介していませんが、その他のステーション(AR-NW2Aなど)でも、核励起に関連した研究(軌道電子遷移による核励起など)が行われています。
また核共鳴散乱法のための検出器開発はBL-14Aでも行われています。
問い合わせ:岸本俊二 syunji.kishimoto@kek.jp