2015S2-003
高分解能角度分解光電子分光による 高機能物質における新たな量子物質相の探索

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●基本情報
 ●実験責任者:高橋 隆(東北大理)
 ●課題有効期間:2015/4〜2018/3
 ●実験ステーション:28A
 ●関連課題:2012S2-001(高分解能角度分解光電子分光によるディラック電子系の量子現象の解明)
       2009S2-005(新規高温超伝導体および関連化合物の高分解能角度分光電子分光)
       2006S2-001(強相関遷移金属酸化物の高分解能角度分解光電子分光による研究)

●課題の概要
 トポロジカル絶縁体、グラフェン、鉄系高温超伝導体、ラシュバ系物質などの高機能物質が最近次々に発見され、物性解明やデバイス応用に向けた研究が急ピッチで進んでいる。これらの物質における特異物性には様々な「対称性」が密接に関係しており、対称性を積極的に活用・制御することで、新たな量子相の実現が期待されている。本研究では、BL28の偏光可変高輝度光を利用した高分解能角度分解光電子分光エンドステーションを新たに建設し、上記の系を中心とする高機能物質における電子状態を直接決定することによって、電子構造と対称性との関連を明らかにし、特異物性発現機構を解明することを目的とする。
 エンドステーションの建設においては、広角度2次元取込型電子レンズを備えた電子分析器を組み込んだARPES測定槽を設計・製作し、多軸回転試料マニピュレータと測定系を同期させる機構を開発することで、BL28の偏光可変性をフルに生かせる測定システムを開発する。また、高機能物質のARPES実験には、バルク試料のみならず薄膜の測定が重要である。そこで、ARPES装置には、低速電子線回折装置や試料加熱・蒸着機構などの設置が可能な試料準備槽をドッキングし、より広範な高機能物質群においてARPES実験が行える環境を整備する。
 建設した装置を用いて、種々の高機能物質のARPES実験を行う。トポロジカル絶縁体においては、新しい結晶対称性によって保護された表面状態を有する新型物質の発見や、薄膜ハイブリッドにおける新奇量子現象の観測を目指す。グラフェンにおいては、円偏光特性を利用する事で波動関数に現れるベリー位相と電子構造との関連を明らかにする。ラシュバ系においては、巨大なラシュバ分裂を示す物質を極性半導体を中心に開拓し、薄膜や量子細線におけるエッジ・表面状態におけるラシュバ効果と空間反転対称性との関連を明らかにする。鉄系および銅酸化物高温超伝導体においては、ネマティック相・擬ギャップ相における電子状態を、ディラック電子の振舞い、スピン軌道相互作用の影響を中心に精密に決定する事で、回転対称性の破れが超伝導に与える影響などを解明する。
 以上の「高分解能角度分解光電子分光による高機能物質における新たな量子物質相の探索」は、高機能物質における新しい量子現象の探求への指針を与えると同時に、次世代電子デバイスの開発にも大きく貢献することが期待される。

●成果発表
 ●論文


 ●PF Activity Report

 ●PFシンポジウム

●その他