2015S2-008
先端軟X線分光の融合による活性触媒の電子状態と反応活性に関する研究

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●基本情報
 ●実験責任者:近藤 寛(慶應大理工)
 ●課題有効期間:2015/10〜2018/9
 ●実験ステーション:13A/B
 ●関連課題:2012S2-006(エネルギー変換材料の表面界面物性:VUV/SX放射光分光による研究)
       2009S2-007(有機分子−電極系の構造・電子状態と電荷移動ダイナミクス)

●課題の概要
 これまで我々は、BL-13で進めてきた先行S2課題において、軟X線を使った光電子分光(PES)、高分解能X線光電子分光(HR-XPS)および吸収端近傍X線吸収微細構造(NEXAFS)などの放射光分光を触媒表面の観測に適用することによって、触媒表面や吸着分子の構造や電子状態を解明する上で極めて有用な情報が得られることを明らかにしてきた。最近では、これらの手法に準大気圧X線光電子分光(NAP-XPS)が加わり、触媒反応が進行する表面を実作動条件に近い条件で直接観測することも可能になった。これによって、反応活性が高いときに触媒表面がどのような化学状態になっているかについても情報が得られるようになってきた。その一方で、新たな課題も浮上している。一つは、これまで主に単一成分のシンプルな単結晶をモデル触媒としてきたので、実際の触媒との間に大きな隔たりがある点であり、もう一つは、触媒の電子状態と反応活性との間の相関がほとんどの場合に不明なままになっている点である。そこで本研究では、実用触媒を意識したモデル触媒を導入または作製し、これまで我々が立ち上げてきたBL-13Bの三つのエンドステーション(PES、HR-XPS、NAP-XPS)を一つの触媒系に対して多面的・相補的に用いることによって、実在系により近い触媒の電子状態と反応活性の相関を明らかにすることができる新しい方法論を開拓することを目的とする。上記の三つのエンドステーションを融合して一つの解析ステーションとして有機的に用いるとともに、BL-13のアンジュレーター更新に伴って可能になった可変偏光性を活かし、準大気圧下で偏光NEXAFSを測定できるシステムを立ち上げることによって活性表面の解析能力を強化する。このように高度化された軟X線分光法を用い、具体的な触媒系として、代表的な不均一触媒であるCO2活性化触媒、光触媒、排ガス浄化触媒の電子状態、吸着特性、反応活性を調べる。その際に、実在触媒の反応活性に影響を与えるものとしてこれまで長く指摘されてきた微粒子効果、合金化効果、担体効果、構造敏感性が触媒の電子状態とどのように関係しているかについて特に注意を払い、それが反応活性とどのように相関するかを明らかにする。このような研究を通して、触媒能発現の起源を明らかにするのに有用な軟X線分光によるアプローチを提案することを目指す。

●成果発表
 ●論文


 ●PF Activity Report

 ●PFシンポジウム