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更新日: 2010-12-15

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放射光セミナー
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(10-09) のお知らせ

題 目
角度分解光電子分光で探る酸化物表面の金属化現象
Probing the metallization mechanism of the ZnO surfaces by angle-resolved photoelectron spectroscopy
講 師
小澤健一氏(東工大)
日 時
2010年10月15日(金)16:00〜
場 所
4号館2階輪講室1
要 旨

ワイドバンドギャップ半導体の酸化亜鉛(ZnO)は,多くの酸化物と同様,原子ドープにより電気伝導度や磁性などの物性を制御できる。水素原子はZnOに対して強い電荷ドナーとして振舞うことが2000年の理論研究により示されたが,水素ドープあるいは水素吸着によるZnOの電気伝導度の向上は,1950 年代には既に知られていた。従来は,ドープ領域での電荷蓄積層の形成により電気伝導度が向上するという説明していた。しかし,水素吸着ZnO表面をDFT 計算とSTM測定で検証した研究結果から,ギャップレスバンド構造の実現により表面が金属に転移するという機構が2005年に提案され,従来のモデルに対 して一石を投げかけることとなった。
本セミナーでは,どのような機構で水素吸着により電荷密度が向上し金属化がもたらされるのか,その時の価電子バンド構造はどうなっているのか,ZnO表面 の原子組成・原子構造の違いは金属化にどのように影響するのか,水素以外で金属化は誘起できるのか,といったいくつかの疑問を明らかにした研究結果を紹介する。    

 

(10-07) のお知らせ

題 目
超高分解能化をめざす軟X線発光分光
-soft x-ray emission spectroscopy; past, present and future -
講 師
原田慈久(東京大学放射光連携研究機構・特任准教授)
日 時
2010年7月28日(水)14:00〜15:00
場 所
4号館2階輪講室1
要 旨

SPring-8 BL07LSU東大アウトステーションにおいて、今年度より開始した軟X線発光分光装置の調整と初期コミッショニングの結果について報告し、将来の利用について議論する。

 

(10-04) のお知らせ

題 目
MCDとEXAFSによる分子吸着Fe/Cu(001)磁性薄膜の磁気構造と薄膜結晶構造の観察
講 師
阿部 仁氏(PF)
日 時
2010年7月23日(金)16:00〜
場 所
PF研究棟2階会議室
要 旨

磁性薄膜に分子等を吸着させることにより、その磁性が変化することが知られている。しかし、その変化の理由はよくわかっていない。そこで磁性薄膜へ の分子吸着の影響の理解を深めるため、Fe/Cu(001)磁性薄膜のCO吸着、NO吸着による変化をXMCDとEXAFSを用いて調べた。Fe /Cu(001)は多くの研究が行われてきた典型的な磁性薄膜であり、またCO, NOは最も単純な異核二原子分子と言えるため、磁性薄膜と分子との相互作用を扱いやすいと考えてこのような系を選択した。Fe/Cu(001)は4 MLまで一様な面直磁化を示すが、CO吸着、NO吸着後はいずれも面内磁化となり、見かけの(平均の)磁化は減少した[1-3]。深さ分解XMCD法によ る解析から、例えばCO/Fe(4 ML)/Cu(001)では表面側2 MLの磁化消失、NO/Fe(4 ML)/Cu(001)では表面反強磁性となっていることがわかった。このような磁気構造の変化と薄膜結晶構造の変化に相関があるのではないかと考え EXAFS実験を行ったところ、CO/Fe(4 ML)/Cu(001)では4 MLのうち2 MLの構造が変化している様子が得られ、これが磁化消失層に対応していると考えられる。NO/Fe/Cu(001)のEXAFS実験は始まったばかりであ るが、現状をお話したい。

[1] H. Abe, et al., PRB 77, 054409 (2008).
[2] 阿部 仁, 他, 表面科学 30, 339 (2009).
[3] H. Abe, et al., J. Phys.: Conf. Ser. 109, 012109 (2009).

 

(10-08) のお知らせ

題 目
等温滴定型熱量測定:蛋白質相互作用解析の原理と実例
Isothermal Titration Calorimetry: Principle and its Application to Protein Interaction Analyses
講 師
津本浩平(東京大学医科学研究所疾患プロテオミクスラボラトリー 教授
             東京大学大学院新領域創成科学研究科兼任 )
日 時
2010年7月20日(火)16:00〜17:00
場 所
構造生物実験準備棟 会議室
要 旨

等温滴定型熱量測定(ITC)は、感度と測定に必要となる試料量の大幅な改善により、蛋白質相互作用解析を中心に広範な領域に適用され、その重要性が再認識されている。また、最近ではリガンドスクリーニングにおいても利用され、その有用性が認識されつつある。ここでは、ITCが蛋白質相互作用解析においてどのように有効に使うことができるか、また、結晶構造解析から得られた結果とあわせてどのような議論ができるかについて我々の研究例を中心に紹介したい。

 

(10-06) のお知らせ

題 目
Search for better conductivity in ZnO thin films
講 師
Se-Jung Oh 先生(ソウル大教授)(Director of Center for Strongly Correlated Materials Research & Professor of Department of Physics and Astronomy, Seoul National University, Korea)
日 時
2010年6月30日(水)11:00〜
場 所
PF研究棟2階会議室
要 旨
Zinc oxide (ZnO) has been attracting a lot of attention lately as one of the most promising materials for developing transparent couductive oxides (TCO). However, there are some technical problems to overcome if it is to be used widely in industry, replacing the now commonly-used Indium-Tin-Oxide (ITO). One of the obstacles is the not-so-high electrical conductivity of ZnO thin films as desired in many industrial applications. In this talk, I will describe our research to understand the origin of low conductivity in ZnO thin films by employing spectroscopic tools such as x-ray photoelectron spectroscopy (XPS), uv photoelectron spectroscopy (UPS), x-ray absorption spectroscopy (XAS) including near-edge structure (XANES) and extended fine structure (EXAFS).

 

(10-05) のお知らせ

題 目
希土類化合物の共鳴非弾性X線散乱における 低エネルギー励起の理論
Theory of Low Energy Excitations in Resonant Inelastic X-ray Scattering of Rare Earth Compounds
講 師
小谷章雄氏(PF共同研究員、SPring-8客員研究員)
日 時
2010年6月25日(金)13:30〜15:00
場 所
PF研究棟2階会議室
要 旨

 最近の高分解能化により 、共鳴非弾性X線散乱( RIXS )の実験は飛躍的な進歩を遂げ、従来は弾性散乱線からの分離が不可能であった低エネル ギー励起を、非弾性散乱成分として観測できるようになった。結晶場励起、電荷移動励起、スピン励起などがその例である。しかし、これまでにおこなわれた高 分解能実験の殆どは遷移金属化合物を対象としていて、希土類化合物に対する実験は極めて少ない。本講演では、希土類化合物に対する高分解能 RIXS の重要性を理論面から予言し、また、極限環境下での物性研究において高分解能 RIXSが今後果たすべき重要な役割を強調する。
希土類化合物の結晶場励起エネルギーのスケールは遷 移金属化合物よりも1ないし2桁小さい。しかし、最近の分解能の向上(従来より1桁以上向上している)から考えて、その実測は時間の問題と思われる。それ にさきがけて、本講演ではYb化合物の 3d内殻共鳴を例にして、結晶場励起 RIXSの理論計算をおこなう。
  さらに興味深いのは、混合原子価希土類化合物の低エネルギー電子励起として、近藤共鳴励 起をRIXS により観測することである。系の基底状態は一重項束縛状態(近藤束縛状態)で、そこから 磁気的励起状態への励起エネルギーは近藤束縛エネルギーkB TKある。したがって、高分解能 RIXSは近藤温度TK を最も直接的に検出する手段となる筈である。こ こでは、YbInCu4やYb 1-xLuxAl3のYb 3d内殻共鳴RIXS における近藤共鳴励起を不純物アンダーソン模型 により理論計算する。
高圧・高磁場などの極限環境下で有効な電子状態 の実験手段はかなり限定されるが、RI XS は間違いなく最も有効な手段の一つである。従来は低エネルギー励起の測定が殆ど不可能で あったため、RIXS の威力が十分発揮されていたとは言い難い。本講演では、今後の展望の一例として、低温の YbInCu4が 30T以上の高磁場下で示す磁場誘起価数転移におい て、RIXS の近藤共鳴励起が磁場変化する様子を理論計算する。それによって、磁場誘起価数転移は外 部磁場によって近藤束縛状態が不安定化する過程であることを明確にすることができる。

 

(10-02) のお知らせ

題 目
X線屈折レンズ設計と製造の最前線
The frontier of design and fabrication of x-ray compound refractive lens
講 師
Dr.Markus Simon
(Institute for Microstructure Technology(IMT), Karlsruhe Institute of Technology (KIT))
日 時
2010年6月9日(水)13:30〜14:30
場 所
4号館2階輪講室1
要 旨

IMT研究所の前身は1980年代にLIGA技術を開発した研究所であり,現在、LIGA技術を用いてX線屈折レンズを製造しています。Simon氏はX 線屈折レンズの設計と製造を担当している部署の方で,ざまざまなX線屈折レンズの製作に携わっています。X線集光方法,X線結像方法および微細加工につい てドイツの現状を紹介していただきます。

 

(10-03) のお知らせ

題 目
圧力を用いたYb系凖結晶における価数揺動状態の実現
Valence fluctuation state in Yb-based quasicrystals realized by applying pressure
講 師
川名大地氏(PF)
日 時
2010年6月3日(木)13:30〜15:00
場 所
4号館2階輪講室1
要 旨

凖結晶は結晶では許されない回転対称性で特徴づけられるが、2価または 3価をとりうる Ybを含んだCd-Yb系凖結晶について、その価数の圧力下でのふるまいについて調べてきた。 その結果、結晶でみられるような中間価数状態が凖結晶でも実現することが明らかになった。 本セミナーでは、凖結晶での価数揺動の可能性、圧力下での電子状態の変化について紹介する。

 

(10-01) のお知らせ

題 目
Crystal structure of Thermococcus onnurineus NA1 Lon, the founding member of ATP-dependent proteases
ATP依存プロテアーゼであるThermococcus onnurineus NA1由来Lonプロテアーゼの結晶構造解析
講 師
Dr.Sun-Shin Cha
(Marine Biotechnology Research Center, Marine & Extreme Genome Research Center, Korea Ocean Research & Development Institute)
日 時
2010年5月21日(金)13:00〜
場 所
構造生物実験準備棟
要 旨
The ATP-dependent Lon protease, which has orthologs distributed in all kingdoms of life, is essential in bacteria and other microorganisms under stress conditions and is needed for survival of mammalian cells subjected to oxidative damage. Lon consists of a molecular chaperone belonging to the AAA+ family and a protease with a serine-lysine catalytic dyad encoded in tandem in a single polypeptide. Here, we report the 2.0 Å resolution crystal structure of Lon from Thermococcus onnurineus NA1 (TonLon). Six subunits of TonLon assemble into a cylindrical structure with a sequestered internal chamber harboring the proteolytic active sites accessible only through restricted axial channels. Alternating subunits exist in two different nucleotide states displaying different domain orientations and intersubunit contacts indicative of the ATP hydrolysis-coupled motions driving protein unfolding and translocation.

 

 

 

 


物構研セミナー

(10-05) 中性子電気双極子能率測定実験のための物質表面の開発研究
日時:11/1(月)15:00〜16:00
場所:4号館セミナーホール/東海1号館324号室

(10-04) のお知らせ

題 目
Pixel Array Detectors: Advanced Detectors for Synchrotron Science
講 師
Dr. Christopher Nielsen (Vice President, Area Detector Systems Corp.)
日 時

2010年10月29日(金)15:00〜

場 所
4号館セミナーホール/東海1号館324号室
要 旨

        Pixel Array Detectors (PADs) are finding wide application in synchrotron science.  Pixel Array Detectors consist of a silicon detector (diode) layer and a CMOS logic layer, where each pixel in the silicon detector is connected by bump bond to a corresponding pixel in the CMOS, or "ASIC".  The custom integrated circuit logic in each pixel in the ASIC processes the signal from an X-ray striking the detector.  The pixel logic might integrate incoming signal, count photons, or do a combination of the two.  The basic unit of the detector, a PAD module, might be 2cm by 2cm or 2cm x 8cm in area; larger area detectors are made up by tiling modules.  Pixel sizes are approximately 150 microns.  It is the active processing of detector signals with custom logic that differentiates a Pixel Array Detector from other detectors such as CCD detectors.  Pixel Array Detectors generally have very fast read out (1-2 milliseconds) and very low point spread.  Depending on the pixel design used, PADs also can have other attributes such as very high dynamic range, individual photon counting, recording of extremely high count rates, or recording extremly short bursts of x-rays. 
        In this talk, an overview of Pixel Array Detectors will be presented.  Pixel design will be described and their strengths and weaknesses considered for
some chosen applications.

 

 

(10-03) のお知らせ

題 目
X-ray Microscopy
講 師
Professor David Attwood (University of California, Berkeley)
日 時

2010年10月21日(木)13:30〜

場 所
4号館セミナーホール/東海1号館324号室
要 旨

We discuss world-wide progress towards nanoscale x-ray imaging in a wide range of applications, including materials science, biology, environmental science, cultural heritage, and industrial applications. Experiments involve both soft and hard x-rays Techniques include diffractive zone plate imaging, glancing angle reflective optics, multilayer coatings, novel optics and nanoscale 3D tomographic reconstructions.

This IMSS seminar forms a part of the Cheiron School 2010 which will be held at the Spring-8 on October 9-18 as a one of important activities of the Asia-Oceania Forum for Synchrotron Radiation Research.

 

(10-02) のお知らせ

題 目
低次元化によりバンド幅制御したSrVO3薄膜のin situ放射光光電子分光
In situ photoemission study on low-dimenaional SrVO3 ultra thin films
講 師
吉松公平 氏 東京大学工学系研究科(日本学術振興会特別研究員)
日 時
2010年9月3日(金)15:00〜
場 所
4号館2階輪講室1
要 旨
強相関電子系においてバンド幅は物質の特性を決定する重要なパラメータの一 つである。このバンド幅制御として、「超薄膜を用いた次元性制御」という新た な手法を提案する。我々は典型的な強相関物質であるSrVO3を用いて分子層制御 した超薄膜を作製し、低次元化によるバンド幅制御を実現した。本講演では、こ のSrVO3超薄膜の電子状態をin situ放射光光電子分光の結果から紹介する。

 

(10-01) のお知らせ

題 目
イオン照射によるポリマー表面の改質
−低速陽電子ビームおよびSAICAS法による解析−
Improvement of Polymer Surfaces by Ion Beam Irradiation
    -- Analysis with the Slow Positron Beam and SAICAS --
講 師
兵頭俊夫氏(物構研PF 低速陽電子)
日 時
2010年7月1日(木)16:00〜
場 所
4号館2階輪講室1
要 旨

 ある種のポリマーにイオン照射を行うと表面への細胞接着性が向上することが 知られている。しかし、そのメカニズムについては、まだ分かっていないことが 多い。イオン照射によるポリマーの改質効果は、これまでFTIRやラマン分光によ り精力的に行われ、照射によって形成された化学結合について知見が得られてい る。しかし、密度の変化に注目する研究はほとんど行われていない。
   本研究では、ポリ乳酸のヘリウムイオン照射による照射部分の密度変化を、 AFM, 低速陽電子ビームと、ナノ切削・分析装置であるSAICASを用いて明らかに した。
   低速陽電子ビームは、物質の空孔型欠陥の深さ方向の分布の情報を情報を与え る高感度プローブである。通常、密度が既知の物質に対して、陽電子の入射エネ ルギーを変えて、経験式から平均侵入深さを求めて、Sパラメタ等のデータを解 析する。本研究では、イオン照射によって密度が変化する様子をとらえようとす るので、経験式を侵入深さから未知の密度を求める式として利用する。一方、ナ ノ切削・解析装置であるSAICASを用いて、照射したポリマーの機械的強度を深さ の関数として測定し、イオン照射の飛程を直接求める。その結果、イオン照射部 分では密度が照射前の半分以下になることがわかった。また、AFM測定では、イ オン照射により、照射面が未照射面より後退して段差ができること、照射部分側面の未照射部分との界面にはギャップが観測された。 
   これらの結果から、イオン照射によって化学結合の切断と構成原子・分子の逸 失が起こり、被照射部分がナノスケールのポーラス状となり、自由に通り抜ける ようになった分子やイオンが細胞に取り込まれやすくなり、細胞が増殖しやすく なって細胞接着性が向上するのではないかと考えることができる。(以上)