BL-11A 軟X線斜入射回折格子分光ステーション

ビームライン担当者: 北島 義典
5645(PHS:4279)
yoshinori.kitajima@kek.jp

BL-11Aでは、2014/02/21から光学系の大幅な更新作業が行われています。下記は2013年度までの光学系に関する記述ですが、基本的な性格には変更はありません。2014年度の早期に利用可能となるよう立ち上げ・調整を行う予定です。

[English]

1.概 要

 BL-11Aは、偏向電磁石を光源とし、集光鏡と不等間隔平面回折格子を用いた斜入射分光器により、70-1900eVの単色軟X線を利用することができます。カバーするエネルギー領域が重なるステーションも多い(例えばアンジュレータ光源では BL-16A BL-13A、偏向電磁石光源では BL-7Aなどがあります)ので、特に幅広いエネルギー領域にわたって利用できることを特徴に光学系が設計されており、C,N,O,F, Na, Mg, Alなど軽元素のEXAFSスペクトル測定が可能となっています。

Layout of BL-11A
図1. BL−11Aの光学系(2013年度まで)。

 円筒鏡M0およびM0’で反射された放射光(水平方向の取り込みは最大5mrad)は、入口スリットS1と出口スリットS2の間に置かれた球面鏡M1もしくはM2と不等間隔平面回折格子Gで構成される斜入射分光器で分光・収束され、後置トロイダル集光鏡Mfによって試料位置に再集光されます。垂直方向の取り込みを制限することができるスリットS0を用いてビームの中心/非中心を取り込むことにより、直線偏光/楕円偏光を利用することが可能です。なお図中には示していませんが、S2とMfの間に高次光除去用の2枚組平面ミラーを挿入することができるようになっています。

 本分光器では、利用するエネルギー領域によって2種類の球面鏡M1/M2および3種類の回折格子(300 l/mm、800 l/mm、1200 l/mm)を真空中で切り替え・調整する機構を備えていて、70-1900eVの利用が可能です。また、本分光光学系の特徴として、比較的長い領域にわたって安定に軟X線を供給するため、サインバーを用いた回折格子の回転のみによってエネルギー走査を行えるようになっています。このように機構が単純であるため、制御系も簡単なものとなっています。


2.性  能

光学系前置集光系+不等間隔平面回折格子斜入射分光器+後置集光鏡
エネルギー領域70 eV - 1900 eV
分解能E/ΔE = 500 ~ 4000
ビームサイズ~ 2 mm (H) ×0.5 mm (V)
ビーム強度最大~1012 photons/s

 2000年4月末までに、300 l/mm、800 l/mm、1200 l/mm(全てホログラフィック露光)の回折格子が利用可能となっています(機械切り800 l/mmも控えています)。
Ar 2p Spectrum
図2. 機械切り800 l/mmと球面鏡M2の組み合わせで測定されたAr 2p吸収スペクトル。

図2は機械切り800 l/mm回折格子と球面鏡M2の組み合わせで測定されたAr 2p励起領域における全イオン収量法による吸収スペクトルです。7dへの励起が明瞭に観測されていることから、光学素子と光学調整の精度が良好であることが確認できます。ただし、このスペクトルだけ見るとアンジュレータ光源のビームラインと遜色ないように感じられますが、高分解能を実現するために相当にスリットを絞らねばならず、光強度の点では約2桁小さいことに注意が必要です。
N-K Spectrum
図3. 機械切り800 l/mmと球面鏡M2の組み合わせで測定されたN 1s吸収スペクトル。

図3は、N分子の1s→π励起領域のスペクトルを様々なスリット幅(左上の数値)で測定した例です。各スペクトルの右上に記した数値は、光強度と分解能です。光強度は最高分解能では毎秒7×108個ですが、分解能を落としていけば最大1011が得られていることになります。ホログラフィック回折格子を用いた場合には、到達最高分解能は機械切りに比べてやや低いようですが、得られる光強度は大きくなっています。


Spectrum from BL-11A
図4. ホログラフィック回折格子分光スペクトル。

図4に、ホログラフィック回折格子によって得られた分光特性を示しました。ホログラフィック回折格子は散乱光の混入が少なく、特に800 l/mmホログラフィック回折格子とM1(偏角176.2度)の組み合わせを用いれば、1900eV程度まで散乱光なく利用できることが明らかになりました。Na, Mg, Alなど従来PFでは不可能であった元素のXAFSスペクトル測定が可能になっています(測定データ例を別ページに用意しました)。


3.付属品等


4.その他


5.参考文献

  1. “BL11再構築デザインレポート” KEK Report 95-4 (1995)。
  2. K.Amemiya, Y.Kitajima, T.Ohta and K.Ito, J. Synchrotron Rad., 3, 282 (1996).
  3. K.Amemiya, Y.Kitajima, Y.Yonamoto, T.Ohta, K.Ito, K.Sano, T.Nagano, M.Koeda, H.Sasai and Y.Harada, Proc. SPIE, 3150, 171 (1997).
  4. Y.Kitajima, K.Amemiya, Y.Yonamoto, T.Ohta, T.Kikuchi, T.Kosuge, A.Toyoshima and K.Ito, J. Synchrotron Rad., 5, 729 (1998).
  5. Y.Kitajima, Y.Yonamoto, K.Amemiya, H.Tsukabayashi, T.Ohta and K.Ito, J. Elec. Spectrosc. Relat. Phenom., 101-103, 927 (1999).

6.発表論文

 発表論文(PF関連出版データベースに登録されているもの)のリストを用意しましたので、ご覧下さい。


Last modified: February 23, 2014.