HOMEトピックス一覧2010年のトピックス_2010.03.19

topic_2010.03.19

入射ライナック伝導空洞開発の進捗状況

 ERLの電子源を初段で5-10MeVまで加速する入射ライナック。cERL入射ライナック空洞開発グループは、野口教授を中心に加古永治氏、渡邊謙氏、佐藤昌史氏、宍戸寿郎氏、そして山本康史氏からなるグループである。cERL入射ライナックの開発は、ILC-STFの超伝導空洞グループにより着実に進められている。10 MeV、100 mAのCW加速を最終目標とする入射ライナックは2セル空洞3台からなり、それぞれの空洞には2台の大電力入力カプラー、5台の高調波取出カプラーが装着される。この入射ライナックの難しさは、空洞本体ではなく、入力カプラーと高調波カプラーにある。2007年と2008年に各1台のプロトタイプ空洞を製作した。2009年には2台の入力カプラーを製作し、また3年契約でクライオモジュールの製作に着手した。2011年の秋にはクライオモジュールの組立にかかる予定である。
1.空洞及び高調波取り出しカプラー
空洞の運転電界は15MV/mで目標Q値は1x1010としている。高調波の減衰器としてはSTF 空洞型を改良したループ型のカプラーを採用する。この型の高調波カプラーをCW運転で使用する場合、電力取出アンテナ部での発熱、常伝導転移が問題となるが、改良型カップラーではSTF型の約2倍の20MV/mの空洞電界での運転を目指す。これまで2台の空洞で取出アンテナ無しで2回、アンテナ付きで1回の測定をした。製作した2台の空洞を図1と図2に、また性能測定の結果を図3 と図4に示す。取出アンテナが無い場合は両空洞とも1回目の測定で40MV/m以上の加速電界が得られている。Q値が低いのはビームパイプのステンレス製フランジの影響で、空洞としては1x1010以上となる。取出アンテナが有る場合はプロセスを繰り返し16MV/mまで到達したが、4台の内の1台のカップラーでのプロセスが不十分で空洞電界を制限している。内表面の洗浄の強化で向上を目指す。4月には#2空洞でアンテナ付きでの再測定を予定している。
図1 ERL2cell #1空洞 図2 ERL2cell #2空洞
図3 #1空洞の性能測定の結果
(取り出しアンテナ無し)
図4 #1空洞の性能測定の結果
(取り出しアンテナ有り)
図 5 製作されたcERL入射ライナック超伝導空洞用大電力入力カップラー 図6 cERL入射ライナック用クライオモジュールの概念図
2.入力結合器 10 MeV、100 mAのCW加速を目標とする入射ライナックでは、1空洞あたり、333 kWの高周波電力が必要となる。KEKBでの実績、周波数の違いを考慮し、トリスタンで開発されたものを小型化した入力カプラーを空洞1台について2台使用する。ここでも問題は高周波損失による発熱で冷却に工夫が必要である。熱負荷計算に従い短めの外導体に5 Kと80 Kのアンカーが取付けられている。製作された入力カプラーを図5に示す。テストスタンドでの試験準備はほぼ完了しており、時間が取れしだい大電力試験に取り掛かる。 3.クライオモジュール  クライオモジュールの概念設計(図6)はすでに完了しており、現在は高圧ガス保安法対応の詳細設計を行っている。2010 年度中には部品の製作を終え、2011 年からは組立てを開始する予定である。
 

このページのトップへ