HOMEトピックス一覧2010年のトピックス_2010.04.16

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励起レーザー開発状況 

ERL(エネルギー回収型ライナック)の電子源のフォトカソードから大電流をドライブする励起レーザー開発は、cERL電子銃用レーザー開発グループ(本田 洋介 助教を中心に、東大物性研の中村 典雄 准教授、伊藤 功 技術職員、産総研の鳥塚 健二グループリーダー、吉富 大 研究員からなる研究開発グループ)により進められている。cERL入射部の開発グループでは、2009年度よりAR南実験棟に拠点を置き、高輝度光陰極電子銃およびその駆動用レーザーシステム、電子銃から超伝導空洞へ接続するビーム入射路とビーム性能を評価する診断部、の開発を進めている(図1)。
 ERL光源としてはビーム電流100mAを最終目標としており、この電流を電子銃から連続的に供給する必要がある。将来的にはビーム電流の増強と同時に低エミッタンス化を進めていく必要がある。励起レーザーの波長を半導体光陰極のエネルギー準位に合わせ込むことで、より低エミッタンスのビームを生成出来るが、複雑な波長変換技術が必要になり、さらに高出力のレーザーシステムを要求することになる。産総研と東大物性研との共同研究で、200W級のレーザー増幅システムを目標に開発を進めている。
図1 AR南棟の電子銃開発拠点
AR南実験棟の開発拠点用のレーザーシステム
 電子銃の立ち上げを最優先とし、レーザーシステムにはなるべく開発要素を持ち込まず、まず市販品ベースで最小限のシステムを構成して電子銃を運転しながら改良していく、という方針で進めている。外部同期1.3GHzファイバーレーザー発振器と10Wファイバー増幅器により生成した1μm帯のレーザー光を、ビーム運転に必要なパルス構造に切り出した後、2倍波変換する構成である(図2)。現在のところ、波長530nmで80mWの出力が得られているが、これは当初の目標の1/4の出力である。市販のファイバー増幅器内での非線形効果によるスペクトルの悪化により2倍波変換の効率が低下していることが原因である。当面のビーム運転は進めていくには問題無いが、同時に30W級の大モード径ファイバー増幅システムを自前で開発する必要があると認識し、既に着手している。
図2 AR南運転用レーザーシステム
産総研での高出力レーザーシステム開発
将来的に必要となるレーザーシステムでは、1μm帯の基本波の出力として200Wを要求する。これを変換して100Wの2倍波を得て、そこから光陰極に整合した波長800nmの光を得る。というシナリオに従い開発を行っている(図3)。2009年度は、200W,1.3GHzの基本波とパルスエネルギーで同等である10W,85MHzの基本波から2倍波を生成する試験を行って来た。10W出力のフォトニック結晶ファイバー増幅器の製作から始め、43%の2倍波変換効率を達成し、ここまでの原理的な実証がなされている。
来年度の予定 
AR南棟の拠点では2009年度に名古屋大から移設された200kV電子銃が立ち上がり、これを用いてビーム入射路とビーム診断装置のコミッショニングを開始する。レーザーシステムはこの運転を進めながら改良を進めていく。出力の増強と同時に、様々な運転モードに対応したパルス構造、ビーム性能を向上する為のプロファイル整形と時間整形、長時間の安定化、を行う。 産総研での開発は、本格的に200W, 1.3GHzのシステムの開発を開始する。2倍波で100Wの出力を得ることが目標である。
図3 将来に向けて開発を進めているレーザーシステム
            

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